10日目
ついに、狩りが成功した。
この小さな体でも、慎重に行動すれば獲物を仕留めることができるのだと分かった。茂みに身を潜め、風の向きを確認し、獲物の動きを読む。時には数時間かけて、最適な機会を待つ。その努力が、今日ようやく実を結んだ。
若い草食獣の首筋に爪を立てた瞬間の感触。温かな血が滴る感覚。初めての成功に、心が高鳴っていた。
その時、空気が凍てついた。
大地を震わせる重圧が迫る。振り向くと、そこには巨大な何かがいた。月光に輝く鱗、胸元で静かに光を放つ結晶、そして冷たい怒りの宿る瞳。私の何十倍もある体格からは、圧倒的な存在感が放たれている。
「他者の領域で狩りを? 傲慢な子よ」
低く響く声と共に、目に見えない力が私を捉えた。体が宙に浮かび上がる。巨大な存在の力に太刀打ちできない。
次の瞬間、私は大気の中を弾丸のように飛ばされていた。風が耳を切り裂く。地面と空が目まぐるしく入れ替わる。呼吸もままならない速度で、体が遠くへ投げ飛ばされていく。
岩肌に激突する瞬間、理解した。
狩りの喜びに我を忘れ、周囲への警戒を怠ってはいけないのだと。
この世界では、勝利の瞬間こそが、最も危険な時なのだと。
骨が砕け散る音。
内臓が潰れる感触。
血が喉に満ちる。
全てが蒼い炎に包まれ、暗闇へと溶けていった。
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生存記 rm @DraconisArtificium
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