5日目
返り討ちにされた。
肉が喰いたかった。
朝もやの中、私は茂みに身を潜めて獲物を待った。
遠くで小さな獣の群れが見える。その中でも、群れから少し離れて歩く獣は他より小さく、足取りも不安定だ。完璧な獲物に思えた。
少しずつ、慎重に近づいていく。獲物との距離が縮まる。まだ私の存在には気付いていない。群れとの距離も十分に開いている。あと少し。もう少しだけ。
私は全身の力を振り絞って跳躍した。しかし、その瞬間、獲物だと思っていた獣が不自然な速さで身をかわした。バランスを崩して転がる私の目の前で、その小さな獣は鋭い牙をむき出しにする。そして、茂みの中から次々と仲間たちが現れた。
罠だったのだ。彼らは獲物を誘い出すために、わざと群れから離れ、弱った獣のふりをしていたのだ。黒く光る瞳、鋭い牙、引き締まった筋肉。十匹以上の獣たちが、私を取り囲んでいる。
最初の一撃が襲いかかる。牙が首筋に食い込む痛み。次々と他の獣たちも襲いかかってきて、私の体を引き裂いていく。
意識が遠のいていく中で悟った。獲物に見えたものは、実は熟練の狩人だったのだと。私はその罠に、完全にはまってしまったのだと。
失意の中、すべてが闇に溶けていった。
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