第2話

カスラは真弓を抱えて小さな町の近くの森に降りた。

「ここは?」

真弓は皺になったスカートをパタパタと叩いて軽く身なりを整えながら、カスラに聞いた。

「ここは王都から一番西にある街、グロブリンだ。良かったな。野宿はしなくて済むぞ」

嬉しそうに笑いながらカスラは腰に付けていたバッグからカスラのサイズにぴったりなマントを取り出し羽織った。

「どうだ?似合っているだろ?」

カスラは鼻歌を歌いながら羽織ったマントを嬉しそうに真弓に見せた。

「ヘックシ…」

真弓は両腕をさすった。

(寒い…日本は秋ぐらいだったのに…この世界の季節は違うのかな?)

「寒いのか?」

カスラはバッグに手を伸ばす。

「うーん…ないな。街で買うしかないな…ついでに、その目立つ服はどうにかしたほうがいい…変な目でみられるぞ?」

カスラは真弓に手を差し出す。

「さぁ行こう」

「うん!」


カスラと手をつなぎながら町の入り口の門まで来ると、町に入る人の長い列ができていた。

「うわぁ凄いね!てゆうか、カスラだけかと思ってたけど、この世界の人はみんな、髪色がカラフルだね」

真弓はキラキラした表情で列に並ぶ。

「髪の色?…当たり前じゃないのか?」

カスラは不思議そうに首をかしげる。

(そういえば、真弓はどこから来たのか聞いてもはぐらかされたな…)

「おい真弓、町まで来たのはいいが、金は持ってるのか?行くあては?」

「…」

さっきまであんなにはしゃいでいたのに、急にこの先のことを聞かれ、真弓はカスラから目をそらす。

「おい、気まずくなったからって目をそらすな!…ったく…あー、もしよければだけど、俺と一緒にくるか?」

少し恥ずかしそうに頭をかきながら提案するカスラを真弓はびっくりした表情で見つめる。

「いいの?ほんとに?!」

真弓のあまりの勢いに長い黒髪が揺れカスラとの距離が近くなった。

ドキッ

「お、おう」

「っ!やったぁ!」

列の一番後ろで真弓は嬉しそうにぴょこぴょこ跳びはねている。

(…さっきのドキッってなんだ…?)

不思議な感情が沸き上がったが、カスラは途中で考えるのをやめた。

「次の者!」

いつの間にか自分たちの番がきていて二人は早足に門番のほうへ向かった。

「お?子供かぁ。どうした坊主と嬢ちゃん?」

門番のおじさんがにこにこ笑いながら話しかけてきた。

「街に入りたいんですけど…」

真弓がそう言うと、おじさんは豪快に笑った。

「そうかそうか。ほれ、このカードをやろう。普通は料金を取るんだが…嬢ちゃんはかわいいから料金は、まけとくよ!」

大きな手でおじさんは入門証と書かれたカードを二人に渡した。

「俺はいい、冒険者登録してある」

カスラはバッグから銀色のカードを取り出しおじさんに見せる。

「おぉ!こりゃあ、驚いた!坊主はシルバーランクだったのか、ガッハッハッハ!」

またまた、豪快に笑うおじさんが面白くなり真弓はクスッと笑った。

(見た目は怖いけど、とってもフレンドリーで優しそうでよかったなぁ)

「グロブリンへようこそ!初めての入国者はまず、町の中心地へ行ったらいいぞ!」

「はい、ありがとうございます!」

「ありがとうございました」

おじさんに手を振られながら真弓とカスラは門を後にした。


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