受けた恩は倍返しで!〜異世界転移で助けてくれた人は呪い持ちでした?!~

くろまめ

第1話

ここは剣と魔法の異世界【ネリアン】。そんな世界に少女は迷い込んだ。少女の名は羽裏 真弓(はねうら まゆ)今年で十七歳の高校生だ。そんなことこの世界で生きるのには全く必要のないことだ。

「お、おぉ。落ちるぅぅ!!」

涙目になりながら真弓は生き残れそうな場所を空から探した。

こんな状況になったのは五分前の話。


いつものように通学路を歩いていると空に夜でもないのに、流れ星が飛んでいくのがみえた。

(流れ星?!こんな朝に?!)

流れ星に気を取られすぎて真弓は工事中のマンホールの中に落ちてしまったのだ。

「あーーぁー!!」

あまりのことに思わず目をつぶる。次の衝撃を身構えながら落ちていると、いつまでたっても地面につかない。更には、狭いマンホールではありえない全身に強い風が吹き付け始めた。

真弓はゆっくり目を開ける。

「えっ!?」

驚きすぎて声が出ない真弓は、下に目をやる。

(…どこ?)

明らかに日本ではない。それに地球ではない。真弓は目の前に広がった光景に圧倒され、今置かれている状況を忘れていた。

それが、五分前の話である。

「ど、どうしようぅ」

地面がどんどん近づく。怖くなり目をつぶる。

(終わりだぁ!)

今度こそ死を覚悟した真弓はギュッと手を握った。するとその時、体がフワッと持ち上がる感覚があった。

「……あ、あれ?」

「ふぅ…危なかったぁ…大丈夫?」

ゆっくり目を開けると目の前には背中に大きな翼が生えた少年が真弓の体を抱っこしていた。少年は急いできたのか息が上がっていた。

「…た、助かったぁ…」

目の前の不思議より先に真弓は命が助かったことにほっと息を吐く。

「無視か?」

少年は不機嫌そうに呟いた。

「あ、ごめんなさい。無視したわけじゃないの。死ぬかもしれない恐怖で、混乱してたの。気を悪くしたらごめんなさい?」

真弓がそう言うと、少年はホッとしたような表情で笑った。

「ううん…それよりも、なんでお前は空からいきなり降ってきたんだ?お陰で僕は急いで飛んでくることになったじゃないか」

「うーん。なんでって言われても…」

真弓は説明に困る。きっとここは地球ではないのだからマンホールに落ちたといってもこの少年は首をかしげるだろう。真弓は、説明することを諦めた。

「…わかんない!」

少年は諦めたのか私を抱えたまま地面に降りてゆく。

「いい?もうあんな危険なことするなよ!?」

念を押され真弓は深くうなずいた。どちらかと言うと、危険なことはあまり好きなわけでわないのだ。

「助けてくれてありがとう。私、真弓って言うの。良かったら、ここはどこか教えてくれない?」

真弓が少年にそう言うと、少年は真弓を怪しむようにみながら名前を教えてくれた。

「カスラ…」

「カスラ…よろしくね…そうだ。さっきは色々ありすぎて聞けなかったけど、背中に生えてるのって翼?」

真弓がそう尋ねるとカスラは目を逸らしながら頷いた。

「へぇ!初めて見た!凄い!」

真弓はカスラの背中の方に周り翼の付け根などキラキラした目で見ていた。

(なんだこいつ?異形を見ても軽蔑しないなんて…?)

カスラは真弓の初めての反応に困惑していた。

「真弓…だったな。なんでそんな目で見るんだ?ヒューマンにとっては呪いなんだろ?」

昔あった人間からの仕打ちを思い出し、カスラは嫌そうな表情を浮かべた。

「呪い?これが?」

真弓は翼を触る。

「こんなに綺麗なのに…」

カスラはびっくりして振り返った。

「どうしたの?」

「…いや…」

カスラはすぐに目を逸らしたが嬉しくて口元が緩んでいた。

カスラはひとつ咳払いをした。

「ま、まずは移動しよう…」

カスラは私に手を差し出した。

「…?」

よく分からなかった真弓は、カスラに視線を向け首を傾げた。

「はぁ?わかんないのかよ!…ほら、連れてくから、抱えるんだよ!」

カスラは真弓を抱き上げサッと空へ飛び立った。

らん僕な物言いだが、意外と丁寧な扱いに真弓はクスッと笑った。

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