第37話 完成の日

絵本『小さな羽ばたき』がついに完成する日がやってきた。私たちはカフェではなく、美香さんの家に集まり、一緒に完成した絵本を確認することにした。テーブルの上には印刷されたページが並べられ、それぞれが手がけたパーツが物語の中に自然に溶け込んでいた。


「これが私たちの作品だね」と美香さんが笑顔で言った。「本当にできたんだって思うと、なんか感動するね。」


私も「本当にそうだね。ここまで来るのにいろいろあったけど、こうして完成したのを見てると、全部報われた気がする」と答えた。


咲子さんはページを一枚一枚そっとめくりながら、「……なんだか不思議な感じ。自分が作ったものが、こうやって一つの形になるなんて、想像してなかった」とつぶやいた。その声には、確かな達成感が込められていた。


絵本の最後のページには、主人公の小鳥が初めて空を飛ぶ瞬間が描かれていた。そのシーンは、咲子さんが選んだ柔らかな背景と、美香さんの刺繍で作られた小さな花々が彩られていて、物語全体を優しく包み込むような仕上がりだった。


「このページ、本当にいいね」と美香さんが言った。「希望に溢れてる感じがするし、なんだか私たちのことを表してるみたい。」


咲子さんも静かにうなずき、「……私、この絵本が、誰かの励ましになったら嬉しいな」と言った。その言葉に、私たちは自然と笑顔になった。


その後、私たちは完成した絵本を手に取り、それぞれの感想を話し合った。美香さんは「次はもっと大きなテーマにも挑戦してみたいな」と意欲的な言葉を口にし、咲子さんも「……私、もっといろんなものを作ってみたい」と前向きな気持ちを見せてくれた。


「僕も、もっと自分の絵や言葉を磨いて、次の作品に活かしたい」と話し、三人でまた新しい目標を立てることを約束した。


帰り道、咲子さんがふと「……この絵本が、自分の羽ばたきの始まりみたい」とつぶやいた。


その言葉に、私は「そうだね。咲子さんだけじゃなくて、僕たち三人の羽ばたきの始まりだよ」と答えた。


美香さんも「私たちはこれからも一緒に、どんどん羽ばたいていけるよね!」と元気に言った。


夜、家に帰った私は完成した絵本をもう一度手に取り、そのページを一つ一つ見返した。それは単なる作品ではなく、私たち三人が支え合いながら成し遂げた大切な結晶だった。


春の夜風が窓からそっと吹き込む中、私は新しい挑戦に向けて静かに決意を固めた。この絵本が誰かに届くことで、また新しい羽ばたきが生まれることを願いながら。

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