第36話 完成間近

絵本『小さな羽ばたき』の制作がいよいよ完成に近づいていた。私たち三人は、それぞれのパートを仕上げるために忙しくも充実した時間を過ごしていた。


ある日、私たちは進捗を確認するためにカフェに集まった。テーブルには、美香さんの刺繍作品、咲子さんの手作り布小物、そして私が描いたイラストが並べられていた。それぞれの作品が物語の中でどのように使われるかを話し合いながら、私たちは完成形をイメージしていった。


「これ、本当に素敵になりそうだね」と美香さんが嬉しそうに言った。「みんなの作品がこんな風に一つになるなんて、最初は想像してなかったけど、すごく感動してる。」


咲子さんも静かにうなずきながら、「……私も、こんな風に何かを一緒に作るのが初めてで、なんだか不思議な気持ち」とつぶやいた。その声には、確かな喜びが込められていた。


私たちは物語の最後の仕上げについて話し合った。主人公の小鳥が友達に支えられながら、小さな羽ばたきを成功させるラストシーン。そのイラストを見せると、美香さんが「この光の感じ、すごくいいね。希望が伝わってくる」と褒めてくれた。


咲子さんも「……この場面に、背景の布を合わせたら、もっと優しい感じになるかも」と提案した。


「それいいね」と私が答え、美香さんも「完璧じゃん!」と笑顔を見せた。


その後、私たちは絵本の順番を確認しながら、ページを並べていった。それぞれのページに散りばめられた思いや工夫が、私たち三人の絆を象徴しているように感じられた。


「なんだか本当に絵本になってきたね」と美香さんが言うと、咲子さんも「……うん。こうして形になると、自分たちがやったんだって実感する」と静かに笑った。


帰り際、咲子さんがふと立ち止まり、「……完成するのが嬉しいけど、少し寂しい気もする」とつぶやいた。


その言葉に、私は「でも、これが終わっても、また新しい挑戦が待ってるよ。これがスタートだと思えばいいんじゃないかな」と答えた。


美香さんも「そうだよ。これをきっかけに、もっといろんなことに挑戦できる。私たちはまだまだこれからだよ!」と元気に言った。


咲子さんはその言葉に、安心したように微笑んで「……そうだね」と答えた。


春の風が優しく吹き抜ける中、私たちは絵本完成の期待を胸に、また一歩進んでいく準備をしていた。それは、私たち三人の物語が新しい章へと向かう合図でもあった。

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