第31話 新しい目標

春の風が心地よい日、私たちは久しぶりにカフェではなく近くの公園で集まることにした。冬の寒さがすっかり和らぎ、桜のつぼみが少しずつ開き始めている様子が、私たちの心に新しい季節の訪れを感じさせてくれた。


「やっぱり外は気持ちいいね」と美香さんがベンチに腰掛けながら言った。「こうやってのんびり話すのもたまにはいいね。」


咲子さんは隣で静かに桜の枝を見上げていた。「……春になると、なんだか新しいことを始めたくなるね」と小さくつぶやいた。


その言葉に、私たちは自然と次の話題へと進んでいった。「次は何を目指してみる?」と美香さんがワクワクした声で尋ねた。


私は少し考えてから、「もっと長期的な目標を持ってみるのもいいかもしれない」と言った。「これまでいくつかイベントに参加してきたけど、三人で何か一つ大きなプロジェクトに挑戦するのも面白いかもしれない。」


「例えば?」と美香さんが興味深そうに聞き返してきた。


「三人で作る絵本とか、どうかな?」と思い切って提案してみた。「咲子さんの手作り小物や、美香さんの刺繍、それから僕の絵を合わせて、一つの物語を作るんだ。春のテーマでもいいし、もっと自由なアイデアでもいい。」


その言葉に、二人とも目を輝かせた。


「それ、すごくいいじゃん!」と美香さんが声を上げた。「自分たちの作品を一つの形にするなんて、絶対楽しいと思う。」


咲子さんも、「……私、物語を作るのは難しいけど、二人と一緒なら頑張れそう」と優しく微笑んだ。


「物語はみんなで考えればいいよ。それぞれができる範囲で作り上げていけば、きっと素敵なものになると思う」と私は続けた。


その日の帰り道、私たちは早速絵本のアイデアを出し合った。桜がテーマの物語や、小さな動物たちが登場する優しい世界の話。それぞれのアイデアが合わさって、新しい物語の形が少しずつ見えてきた。


「これ、どんな形になるか楽しみだね」と美香さんが言い、咲子さんも「……完成したら、誰かに見てもらいたい」と小さくつぶやいた。その言葉には、彼女が少しずつ自分を表現することに前向きになっているのが感じられた。


私たち三人はまた新しい挑戦に向かって歩み始めた。それはこれまで以上に大きな目標であり、それぞれが自分の力を少しずつ試す機会でもあった。


春の暖かな風が私たちの背中を押してくれるような気がした。絆を深めながら、一つの形を作り上げるという目標は、これからの私たちにとって大切な希望となった。


桜のつぼみが開き始めた空の下、私たちはそれぞれの胸に新しい夢を描きながら、また一歩進んでいく準備をしていた。

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