第30話 春の風
イベントが終わり数日が経ったある日、私たちは久しぶりにカフェで集まった。イベントの話題で盛り上がりながらも、どこか心に余裕が生まれているのを感じた。冬を越え、私たち三人がまた少しだけ成長したことを実感していた。
「ねえ、あのイベントさ、本当に楽しかったよね」と美香さんがコーヒーを飲みながら言った。「咲子さん、あんなに頑張ってたんだから、きっともっと自信がついたんじゃない?」
咲子さんは少し照れくさそうに「……まだ緊張はするけど、あの日のことを思い出すと、不思議と怖くなくなる気がする」と答えた。その言葉には、確かな成長が感じられた。
「それが大事なんだよ」と美香さんが笑顔で言い、「少しずつ、だよね」と私も続けた。
その日の話題は自然とこれからのことに移っていった。咲子さんは「もっと自分の気持ちを言えるようになりたい」とつぶやき、美香さんは「じゃあ、次は自分の作品をもっとたくさんの人に見てもらえるようなイベントを目指そうよ!」と目を輝かせた。
私も「次のテーマを考えながら、それぞれの新しい挑戦をしてみるのもいいかもしれないね」と提案した。
咲子さんはしばらく考え込んでから、「……皆と一緒なら、もう少し頑張れそう」と小さく微笑んだ。その笑顔が、私たちにとって一番の力となった。
帰り道、三人でカフェを出ると、少し暖かい風が頬を撫でた。それは春の訪れを告げるような優しい風だった。
「春が近いね」と美香さんがつぶやき、咲子さんも「……うん、なんだかいい季節が来そう」と言った。
私たちは並んで歩きながら、それぞれの胸に希望を抱いていた。この春が、私たちにとって新しいスタートの季節になることを予感していた。
その夜、私は一人部屋でスケッチブックを開き、春をテーマにした新しい絵を描き始めた。咲子さんや美香さんと過ごした時間、イベントで感じた達成感、そしてこれからの希望。それらが自然と筆を進ませていった。
私たち三人の絆は、冬を越えてさらに強くなった。そして、それはこれからも続いていく。小さな一歩を積み重ねながら、私たちは自分たちの「居場所」を広げていくのだろう。
春の風が吹く夜、私はこれからの未来に向けて、また新しいページを描き始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます