第22話 心の中の雪解け

モコとの再会から数日後、いつものカフェで咲子さんが少し落ち着かない様子で席に着いた。彼女は手に小さなメモ帳を握りしめていて、それをしきりに気にしているようだった。


「どうしたの?」と美香さんが尋ねると、咲子さんは少し戸惑いながら答えた。「……今日、二人にちょっと話したいことがあって。でも、ちゃんと話せるか分からないから、メモに書いてきたの。」


その言葉に、私と美香さんは驚きながらも、咲子さんが伝えたい気持ちを言葉にしようとしているその勇気を感じて、そっと彼女の言葉を待った。


咲子さんは深呼吸をしてから、メモ帳を開いた。「……これ、私がずっと思ってたこと。ちゃんと二人に伝えたいと思って……書いてみたの。」


彼女は少し震える声で、メモの内容を読み始めた。


「最初に二人と会った時、私は人と話すのがすごく怖くて、どうしていいか分からなかった。でも、二人が私のことを否定しないで、ゆっくりと見守ってくれたことで、少しずつ話せるようになった。」


彼女の声は時折詰まりながらも、静かに続いた。


「私がこうして少しずつ変われたのは、二人のおかげです。本当にありがとう。これからも、もっと自分を変えていきたいから、支えてくれると嬉しいです。」


咲子さんが最後まで読み終わると、カフェの空気は静かになった。その静けさは、私たち三人がその言葉の重みを噛み締めている証だった。


「咲子さん……すごく嬉しいよ」と美香さんが優しく言った。「そんな風に思ってくれてたなんて。もちろん、これからもずっと一緒にいるよ。」


私も「咲子さんがこうやって気持ちを伝えてくれることが、本当に嬉しい」と答えた。「一緒に少しずつ前に進んでいこう。これからも、支え合いながらね。」


咲子さんは安心したように小さく微笑み、「……ありがとう」とだけつぶやいた。その表情は、どこかすっきりしていて、これまで彼女が抱えていた重荷の一部が解けたように見えた。


その後、話題は自然といつものたわいない話に戻り、私たちは笑い合いながら時間を過ごした。しかし、咲子さんが自分の言葉で気持ちを伝えたその瞬間は、私たち三人の間で特別なものになっていた。


帰り道、私はふと思った。咲子さんが「雪だるまのモコは特別だ」と言ったように、私たち三人が過ごすこの時間もまた、特別なものだと。


冬はまだ続いているけれど、咲子さんの心の中では少しずつ雪解けが始まっているのだろう。その一歩一歩が、これからの未来をもっと温かなものにしてくれると信じていた。


冷たい風が頬を撫でる中、私はこれからも彼女たちと一緒に、少しずつ歩んでいこうと静かに決意をした。

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