第20話 雪の日の贈り物
1月も半ばを過ぎた頃、街に今年初めての雪が降った。その日は約束通りカフェで集まる日だったが、思いのほか雪が積もり、街の景色がいつもと違う静けさを纏っていた。
「寒いね」と美香さんが元気な声でカフェに入ってくると、咲子さんは少し震えながら「うん……でも、雪景色がきれい」と小さな声で答えた。その様子を見て、私は「今日は温かい飲み物がいつも以上に美味しく感じそうだね」と笑った。
席に着くと、美香さんがカバンから小さな包みを取り出し、「実は、二人にちょっとした贈り物を持ってきたんだ」と言った。彼女らしいサプライズに、私と咲子さんは目を見合わせた。
「これ、手作りなんだ。大したものじゃないけど、受け取ってほしいな」と美香さんが包みを差し出す。中には、それぞれのイニシャルが刺繍された小さな巾着が入っていた。細やかに刺繍されたデザインに、彼女の気持ちが込められているのが伝わってきた。
「ありがとう……すごく素敵」と咲子さんがそっと巾着を手に取り、微笑んだ。私も「本当にすごいね。こんなに丁寧に作れるなんて、尊敬するよ」と感謝の気持ちを伝えた。
美香さんは少し照れくさそうに「実は、刺繍なんてやったことなかったんだけど、二人のことを思いながら作るのが楽しくてさ」と笑った。
その後、話題は自然と「雪」に移った。咲子さんが、「子どもの頃、雪が積もるとよく雪だるまを作ってた。でも、大きな雪だるまは一人では作れなくて、途中で諦めてた」と小さく言った。
「じゃあ、今日一緒に作ろうよ!」と美香さんが声を上げた。突然の提案に、咲子さんは少し驚いた顔をしたが、やがて小さくうなずいた。
カフェを出て、近くの公園に向かった。雪がしんしんと降り積もる中、私たちは三人で協力して雪だるまを作り始めた。咲子さんは最初は遠慮がちだったが、美香さんが「もっと丸くしよう!こうやるといいよ」と声をかけると、少しずつ手を動かし始めた。
「意外と難しいね」と私が笑うと、美香さんは「そう?楽しいけどね!」と元気に答えた。咲子さんも、その様子に安心したのか、「……なんだか、いいね。久しぶりにこういうことするの」と小さく笑った。
完成した雪だるまは、少し不格好だったけれど、三人で作り上げたという達成感に満ちていた。咲子さんが、落ちていた木の枝で雪だるまに腕を付けると、美香さんが「いい感じじゃん!」と褒めた。
「名前をつける?」と私が提案すると、咲子さんが少し考えてから「……ユキの友達だから、『モコ』とか」と言った。その可愛らしい提案に、私たちは思わず笑い、「じゃあ、モコに決定だね!」と名前を付けた。
帰り際、咲子さんがふとつぶやいた。「今日は……すごく楽しかった。寒いけど、心が暖かくなった気がする。」
その言葉に、私たちはまた少し心が温かくなった。寒い雪の日、私たちは新しい思い出を作り、また一歩前に進むことができた。
公園を後にしながら、私は心の中で思った。こうした小さな出来事が、私たちの絆を深めてくれる。そして、これからも少しずつ積み重ねていくことで、私たちの「居場所」がますます特別なものになっていくのだと。
雪はまだ降り続いていたが、私たちの心には確かな温もりが広がっていた。
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