第12話 冬の日の挑戦
12月の初め、私たちは久しぶりに外で集まることにした。寒空の下、近くの公園で小さなクリスマスイベントが開かれているという話を美香さんが聞きつけ、「行ってみようよ!」と提案したのだ。
咲子さんは少し迷っている様子だった。「人が多い場所は緊張しちゃうかも……」とつぶやいていたが、美香さんが「無理そうだったら帰ればいいし、みんなで何か温かい飲み物だけでも楽しめればそれでいいんだから!」と笑顔で言うと、少し安心したように小さくうなずいた。
私たちは暖かい格好をして、公園に向かった。到着すると、そこにはクリスマスの装飾が施された木々や屋台が並び、どこか心が弾むような雰囲気が漂っていた。寒いはずなのに、明るいイルミネーションが体をほんのり温めてくれるように感じた。
「わあ、きれいだね」と美香さんが声を上げた。咲子さんも静かに景色を眺めている。言葉は少なかったが、彼女が目を輝かせているのが分かった。
屋台を見て回っていると、美香さんが突然「これ、やってみようよ!」と指差したのは、小さな輪投げのブースだった。景品には手作りのクリスマスオーナメントやお菓子が並んでいた。
「咲子さん、一緒にやってみない?」と美香さんが誘うと、咲子さんは一瞬戸惑ったようだったが、やがて勇気を出して「うん」と答えた。その一言に、私たちは思わず微笑み合った。
順番に輪投げをする中で、咲子さんが輪を投げると、なんと彼女の投げた輪が大きなぬいぐるみの景品に見事に命中した。咲子さんは驚いた顔でぬいぐるみを受け取り、照れくさそうに笑った。
「すごいじゃん!ラッキーだね!」と美香さんが大声で褒めると、咲子さんも「ありがとう……楽しかった」と小さな声で答えた。その瞬間、彼女の表情が少し柔らかくなり、私たちはその光景に心が温かくなった。
帰り道、咲子さんがぽつりとつぶやいた。「今日は、来てよかったかも。最初は怖かったけど……皆と一緒だと、なんだか安心できた。」
その言葉に、私は咲子さんがまた一歩成長したことを感じた。彼女は自分の殻を少しずつ破り、私たちと一緒に新しい経験を積み重ねている。美香さんも満足げに「これからもっといろんなところに行こうね!」と明るく言った。
冷たい冬の風が吹いていたが、私たちの間には確かな温かさがあった。それぞれのペースで少しずつ前に進む私たち。小さな挑戦が、またひとつ絆を深めてくれた。
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