第8話 練習の日々

咲子さんのプレゼンの練習が始まってから、私たちは少しずつカフェでの集まりを増やしていった。彼女が少しでも自信を持って本番を迎えられるように、私と美香さんは精一杯サポートすることを決めた。毎回の練習で、咲子さんの声がほんの少しずつでも確かなものになっていくのがわかり、私たちも喜びを感じていた。


最初のころは、咲子さんが緊張で言葉に詰まることが多かった。しかし、美香さんが励ましの言葉をかけ、「大丈夫だよ、焦らなくていいからね」と声をかけるたび、咲子さんの表情は少しずつ柔らかくなっていった。私もできるだけ彼女の話を真剣に聞き、少しでも彼女が話しやすくなるようにと心がけた。


ある日の練習後、咲子さんがふと小さな声で言った。「……なんだか、自分が少しずつ変わっている気がする。前は、こんなふうに誰かの前で話すのも怖かったのに、今は少しだけ楽になってきて……」


その言葉を聞いて、私は胸が温かくなるのを感じた。咲子さんの中で、私たちとの練習が確かな成長につながっているのだと実感できたからだ。私たちが一緒に過ごす時間が、彼女にとって安心できる支えになっているのだと思うと、私自身も勇気をもらっている気がした。


美香さんも、にこやかに「咲子さんが頑張ってるから、私も元気もらってるよ。自分のペースでやればいいんだから、焦らなくていいんだよ」と励ました。その言葉に、咲子さんは少し照れくさそうに微笑んだ。


それから数日後、ついにプレゼンの本番の日が訪れた。咲子さんは、緊張しながらも、しっかりとした表情で私たちに「行ってきます」と言ってくれた。その瞬間、私と美香さんは彼女の頑張りを心から応援したいという気持ちで胸がいっぱいになった。


その日の夜、咲子さんからメッセージが届いた。「無事に終わりました。とても緊張したけれど、皆のおかげで最後まで話すことができました。本当にありがとう。」


そのメッセージを読んだ瞬間、私は大きな達成感と安堵の気持ちでいっぱいになった。咲子さんが一歩を踏み出し、自分の力で乗り越えたその姿が、私たちにとっても大きな喜びだった。


私たちはそれぞれ違う困難を抱えているけれど、こうしてお互いを支え、励まし合いながら前に進んでいけることが、私たちにとってかけがえのない財産になっていた。そして、それはこれからも変わらない、私たちの強い絆であると信じていた。

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