第三章 「天姿国色」
「本当に上羽をあの人間の所へ返す...というのか?ゲブリュル」
「あぁ、私は強き戦士こそ尊敬する者だ。そのために堕天使になったようなものだ。そこは神に感謝している。」
「俺は反対意見を出すぜ?そんなことをしたらアトラス様から何されるか分からねぇからな」
「私はただ公平な勝負がしたいだけなんだ。弱い奴を倒しても何も残らないからな。」
「あーはいはいどうぞ好きにやってくれ俺は知らねぇぞ。そんな恐ろしいことをやるなんで」
「私には強き者と戦う使命があるんだ。アトラス様からの命令は確かに絶対だ。しかし私の意志は変わらない。あの雲が西から東に移動したときに上羽を人間に返しに行く。」
「おいおい...本当にやるのかよ。やっぱお前とは分かり合えねーわ。」
「それが私の運命だから...運命は一直線に絶対的な力で進んでいく。その力は例え私たち堕天使であっても逆らえない。そう、絶対に...」
霧月は多分だけどどうにかして暴走を止めれないのかを考えていると感じていた。それはもしかしたら私たちを傷つけてしまうかもしれないと思ったからだ。しかし解決策なんで全然思い浮かばずに歩き続けているように見えた。
「ねー暴れているときのあたしってどんな感じなの?恐ろしいの?あたし意識が別の所にあるからよくわからない...」
「うーん、例えるならエミュレータ上の操作で行うスピードランみたいな人間にはできないような動きをしていたよ。どっちかっていうとRTAよりもTASに近いと思う。それとちょっと心配なのが、見えている所 暴走しているとき意志はどこにあるの?」
「意志...というより感覚?だけどあたしとしては別の人格がキノコみたいににょきっと生えている感じだしそれに炎を操る大男の姿が目の前に写っているような...」
と語ってもらった。私は何を言っているのかすぐに理解が出来ずに不思議な顔をししばらく悩んでいた。だが私はある事と同時にだんだん理解してきた。
「つまり私もそれになったら暴走して大変なことになるのかなぁ...」
ということを考えながら歩き出した。...私は何かふわふわするような感覚に誘われてだんだん眠気が出て深い海よりも深く眠ってしまった。
「ほ...本当に連れて行くんですか?姉貴。僕こんな重いの持てるかなぁ...麻薬無しで」
「あぁ!持てるさ!だから早く行こう!待ちきれないよ強い人と戦うことはな。私はこの黒髪の女性を持つからあんたはその緑髪の女性を持ってよ。」
「分かったよ姉貴。姉貴の頼みは断れないよ。でも本当にだいじょうぶですか?アトラス様に見つかればどんなことが起こるのか...」
「大丈夫だよその時は私が守ってあげるから。」
「え?僕が狙われる前提?」
「いいから早く持ってよ。手伝えば私の腹筋触り放題券あげるから」
「しょうがないなぁ...」
◇
...私たちが目を覚ますと目の前に広がっていた景色は幻想的な風景で水面に映し出される水鏡がとてもきれいに感じ、天国に来たみたいなそんな気がした...と思っていたがふと顔を傾けると蝶がびっしりと詰まっていて赤く光っている地獄みたいな風景も写りそこはまるでレンチキュラーみたいだ。周りを見渡すとドアが付いていて試しにドアノブを回してみると開かない。どうやら鍵がかかっているみたいだ。もう少し周りを慎重にみるとエレベーターらしきものがあった。試しに近付いてみると一応全員乗れるみたいだ。ただ一階とか二階とかが書かれていなく、開と閉しかなかったのでとりあえず私たちはそのエレベーターに乗ることにした。というよりこれに乗るという選択しかないというか...そんなことなのでその怪しげなエレベーターに乗り私は目をつぶって深呼吸し、閉じるボタンを押した。機械は正常に作動し、登り始めた。しばらくすると上から突然何者かが降ってきた。その見た目は普通の人で肌も生きている人と同じだ。だが匂いがまるで死者の香りがし、衣類がボロボロで不快な呻き声がエレベーター内に響き渡る。私たちは武器を構えようとしたが、エレベーター内であるためとても狭くむっつーたちにも当たりそうだったので構えるのを一旦やめて光風霽月のように呼吸を整えながら一点だけを集中させた。その際、アメリアちゃんはうずくまっていてむっつーはなるべく変身せずに敵を倒さなければ危険と判断したのか普通の状態で戦っているがむっつーの武器はヒメシロから授けた武器だから素手で戦っている。
「うわ!ゼリーみたいに柔らかいと思ったらダイヤモンドみたいな硬さがあるよ!あたし今ちょっとびっくりして腰が抜いちゃった...」
と言いながらへなへなに腰が落ちていくむっつーの姿を見てヒメシロが心強いころを言う。
「しょうがないのじゃ、ならばわらわがこやつらの敵を捌くのじゃ!」
蝶の姿になりその羽を使い、屍達を切り刻み、その体を真っ二つにした。ただ敵がたくさんいる中で一人しか倒せていないのは少し苦しいと言わざるを得ないかもしれない。しかし私たちは身動きが出来ないのでこういう小型な蝶が凄い役に立っていて助かっている。
「ありがとう...それしかいう言葉が思いつかないよヒメシロ...」
ヒメシロに向って感謝の言葉を言い放ち、私はひたすらアメリアちゃんを守りながら刀で敵を切り刻む。ただ数は多いが敵は知能がまるでないおかげで倒すのには時間が掛からなかった。『殴る』事には強いが、『切る』ことには何故か弱い。まるでダイヤモンドみたいな硬さを持って居るというのに。と考えていたらエレベーターの上にあるカメラから声が聞こえた。
「今回は自信作だったんだけどなぁ...どうしていつも切断だけは弱いんだ?まぁいい。このデータを実験に使えばいいか。まだまだ改良が必要だな。ならこの死葬兵はどうだ?」
とまるで独り言のように語りさらに私たちの元にそのゾンビみたいなものを放ってくる。
「げぇっ!今度は武器を持って居るのか...結構厄介だなぁ」
と少し小さめな声でアメリアちゃんたちに言った。その武器は鉈で持つところにジェイソンに似たお面がある。さっきの大人数と違って今度は一人だけだが、こっちは大男の筋肉質でかなり狭い。その大男が武器を振りかざしてきたが、動き自体はゆっくりだが本能でこれに当たったらまずいと肌で感じむっつーたちを蹴飛ばし、私の刀で鉈を防ぎながらその後のことをひたすら考えたが、この死葬兵の力がとても強くてだんだん腕がつらくなってきた。そこにヒメシロが準備していたらしく、少し時間が掛かったと言っている。
「ならわらわの攻撃はどうじゃ!?」
と言いながら羽を使って相手を斬った。だが死葬兵は傷が出るも致命傷にならず全く血が出ない。その死葬兵は少しだけ傷を見てまるで紙で指から血が出るみたいに軽い表情をしながらさらに鉈に力を入れ、もう私一人で守るのも限界が近づいてきてしまった。アメリアちゃんはあの化け物を見たせいかさっきよりも怯えている。それを見たヒメシロが
「なんじゃあの化け物は...わらわの力だけでは倒せるビジョンがまるでないのじゃ...」
と流石に一人の力で倒すことが出来ずに絶望した表情をしながらむっつーの所に行きむっつーの耳元で何か囁いている。私の耳にも少し聞こえたが、その内容は
「あの化け物を倒すには変身しかないのじゃ。もしかしたら倒せれるかもしれぬから少しの時間で奴を倒すのじゃ!」
そしてむっつーは決断した顔でヒメシロを手に取り変身をし、くノ一の姿となりあの大男に立ちむかった。
「これなら倒せれるかも?なるべく被害の少ないように立ち回らないと...」
突然カメラから声が聞こえた。その声は喜びと好奇心が入り混じった声だ。
「素晴らしい!それが君の能力なのか!さっきからずっと待っていたよ君の姿を変わるのを もう待ちわびたけど嬉しい...これが人間と同じ感情なのか?」
しかしそんなことを聞く暇もなく大男が勢いよく襲い掛かってくる。最初に出してきた攻撃は一回ジャンプしてからその拳を使い何発も繰り出すというものだ。この攻撃は電気と炎の二つの属性を使い、隙とか全く無くむっつーが必死に避けているという表情をしていた。その表情から今まで見たことのない、私が生まれて初めて見た顔をしている。その如意棒で大男の攻撃を捌き切るのはかなり無茶をしていると思い私も何か手伝うことはあるのかとむっつーに聞いてみたら
「平気。この大男はあたしだけで倒すから。とりあえずスピードだけはあたしのほうが上だと思うから多分大丈夫だよ...ね?」
と不安の声が入り混じっているが力強い声を聞きわずかに安心出来た。...もちろん暴走する奴を使わなければの話だけど。
「う...腕がだんだんきつくなってきた...やっぱりスピードで勝ってもその剛腕にはダメなのか?でもここでやらなきゃあたしたち全滅する...」
するとむっつーの体から突然光を出し、私たちを含む全員の目をくらませた。あまりに突然のことだったので何のことがわからなかったが、むっつーのほうはちゃんと目が見えていたのか刀を使い大男の頭を切断することに成功した。
「あれ?なんかあたしの体から突然光った?しかもかなり強い光のようだなぁ...」
そしてカメラからの声が聞こえた。
「まずいな...もうすぐで私の部屋にたどり着いてしまう。それまでに間に合うのか?」
どうやらもうすぐでたどり着くみたいだ。このエレベーター内の時間がとてつもなく長く感じた。でももうすぐで着く。早くしないと上羽がどうなるのか不安の気持ちでいっぱいだった。しばらくするとエレベーターが止まり少し時間を掛けて扉が開いた。扉の先にあったものは、手術台が複数並んでいた部屋だ。その部屋の中のにおいを嗅ぐと今までにない独特なにおいだった。周りを見渡すと薬品の入っている瓶とかがあり、私はこれが原因なのか?と思いながら前へ進んでいた。すると突然二人の堕天使が現れた。一人は見たことがある。名は確か「クレープス・ラディースヒェン」だったような気がする。もう一人は初めて見る顔だ。見た目は中性的で茶髪のセミロングのようだ。私は
「一体誰なの?堕天使たちの仲間?」
と聞くと
「僕...私の名前はヴァールハイト・ヒパティカです。でも名前を覚える時間なんであなたたちにはないのです。」
そんなことを言いながら堕天使の後ろから現れた人影はもう少しで骨が見えそうなぐらいの細身の姿をした男性とも言えないけど女性とも言えないその中間という印象を持ち、そして武器はチェーンソーを持っている。
「僕がたくさん実験した中で一番の成功作だ。今までいろんな失敗作を見ながらこの世から消していたけどこのクレープスと一緒に造ったらすぐに終わってやっぱり一人の力では成し遂げなかった。感謝しているよクレープス。さぁ、最高傑作、あいつを倒してくれ。」
そしてそのよくわからない存在の人が私たちに向って攻撃を仕掛けてきた。私は攻撃をかわしながら堕天使たちにこう質問をする。
「そのよくわからない存在の名前は何だ?そしてあなたたちの罪って一体どんなことをしたの?」
という質問に対し、堕天使たちは
「それは私たちを殺せばわかるかも、しれません。答えるとすればそいつの名は『イケニエ』とでも呼ぶか」
とよくわからない存在の名前を聞き出したがその罪のことだけはただひたすら口を閉じていた。そしてそのイケニエというものからチェーンソーを取り出し、私たちに向って振りかぶってきた。最初の動作は遅めだが、振りかかる時だけ速さが加速し、私たちは逃げるのに苦労した。
「最初の動きは遅いのに攻撃する瞬間に速くなるなんて私聞いて...」
と言い切る前にそのイケニエが突然後ろを向き、なんと自分の腹にチェーンソーを突き刺した!その姿はまるで切腹みたいだ。すると青い液が私たちの目に飛んできて身を瞑ってしまった。目つぶしされた中で聴こえるチェーンソーの音が恐怖をあおりじたばたするしかなかった。そこでむっつーが
「あたしに任せて!」
一体何をするんだろうと考えていたら暗闇の中から急に光があふれてきた。さっきやったあの光だ。私はなるほどと思った。相手も目を潰せばもしかしたら...と。声だけしか聴けないけど効いているような声が一瞬だけ聞こえた。何やら嫌な予感が私の心の中で充満している。
「僕の作った遺伝子操作とクレープスの作った人体実験のおかげだよ。」
という声が聞こえた。そしてもう一人の堕天使が
「おいさらっと罪を言うんじゃないですよ!?」
「あ~言っちゃったかなぁ?でも君たちはもうすぐで終わるからいいんだよクレープス」
というように堕天使の罪を勝手に言ったのはいいが、それでも勝利に代わりがないのかものすごい挑発している。私たちは暗闇の中でチェーンソーの聞こえる音がさっきよりも恐怖感をあおり、私の鼓動の振動が激しくなってしまう。どうするべきか考えたときにふと思いついたことが一つあった。それは...
「危険な賭けだけど私はこのまま敵に向って突っ込む!」
そう...私はこの暗闇の中で覚悟を決めたからだ。このまま何もせずにじっとしていても全員殺されてしまう。それなら例え私の命を引き換えにむっむーたちを守れたら私はいいと思っていた。そして私は暗闇の中、チェーンソーの音を頼りにして敵に突っ込みながら刀を抜刀した。そして一心不乱に刀を振り回し部屋にある薬品などを運よくぶちまけた。そしてその液体から出るガスにより部屋に充満し私はあることをしようとしていた。
「この刃で周りを炎で焼き尽くす!」
地面に刀を擦り付け、その摩擦で辺りを炎で燃やし尽くしその勢いで野生の勘を使い見事に敵を斬ることに成功した。謎の液体が激しく飛び出しているが敵は気にしない素振りをしながら堕天使たちの元へ戻ってきた。
「うーん...今薬品があまりないししかも炎に包まれているから僕何もできないなぁ...」
「もうここにいるのは難しいのでいったん別の場所に移動しましょう。」
という会話が聞こえ、堕天使たちはこの場を後にした。そして私たちはその先にある扉を開き先に進んだ。
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