第二章 「天涯比隣」
こうして天界へ来た私たちはとりあえずその辺の天使たちに質問をし、この懐中時計の情報を聞き出した。
「この懐中時計ってどうやって使うのかわからないけど知ってる?」
すると天使たちはでかい口を開けながら口が塞がらなかった。
「お前さん、そんな貴重なものをどこで拾ったんだ!?」
「え?そ...それは秋朝から貰ったものだから詳しくは分からないけどそんなに貴重なの?私たちのためにって言っていたから...」
「ふーん 聞いたことはあるけど本物は初めて見たな。ところで秋朝って誰の事だ?」
「あれ?名前秋朝じゃないの?」
「秋朝...?多分『ミスティーズディ』のことか?」
「え?誰...?なの?」
私は秋朝の聞いたことのない名前を始めて知った。だからこの人に詳しく話をさせようと思い質問をした。しかし、私の思ったような答えが返ってこない。
「ここは俺だけの秘密だけど秋朝って偽名を知ってるのおそらく俺だけだぜ?それに他にもたくさんの偽名を使っているって噂があってな...」
と言っている。ただその情報を知れただけでもいいかなと考えてさらに進むとたまたま通りかかった人がさっきの人と同じ表情をして
「こんな貴重なもんを人間に与えるなんでおめぇナニモンだ!?」
と言った。私はこの時計のことを解説した。
「えーと、まず順を追って説明するとアトラスを従っている堕天使を捕まえるためにこの時計をくれたということなんだ。もちろん私たちのためにと思ってくれたものだからしっかりと持って居るよ。」
そんな感じで説明するとあぁそうなんだ頑張れよと言って手を振ってくれた。それからしばらく歩き続けると天使がぽつんと立っていた。何だろうと思い近くまで行ってみるとこんな質問をされた。
「あなたはこのバナナを選ぶのか、それとも石を選ぶのかどっちがいい?」
急な質問だったので迷ったけどとりあえずなんとなくバナナを選ぶことにした。貴重な食糧だからな。補充しておかないとなんで考えていたら突然その天使が襲い掛かってきた。翼の方を見るとだんだん黒と赤の二色の翼に変化している。まさかと思い武器を構えるとそこに居たのは間違えない堕天使の姿だ。服装は上が黄色で下が赤色の服を着ている。まるでカプセルの薬みたいに。ズボンは黒色だ。髪の毛は白色で見た目はまるで麻薬中毒者みたいな雰囲気がある。
「私たちを襲い掛かって一体何者なの!?」
どういう堕天使なのか分かりやすいようでわかりづらい。そんなことを言うと見た目のわりに丁寧に相手の答えが返ってきた。
「ぼ...僕の名はヘレンクヴァール・ハイルクラオトだ...あー駄目だ、薬が切れてきたなぁ。」
自己紹介をしながら唐突に粉薬を飲んでいた。すると相手は人が変わったように狂い始めた。
「ふー...で?俺に向ってなんだぁ?その口の聞き方は?」
「え?急に人が変わった?確かに変な紛薬飲んでいたけどもしかして...」
「そうだ。俺は薬を取ることで二つの人格が現れるんだよ!聞いているのかおい!」
私はその厄介そうな性格がなぜか強そうに思えてきて冷や汗が止まらない。
「な...なんなのじゃ!?こやつ...何かわからぬかとてつもない力を秘めとる...」
「えーじゃあ急いであたしと変身しようよ~」
「私はあの堕天使を足止めしておくから急いでね。」
私は抜刀したと同時に堕天使へ攻撃した。刀の鋭い一撃が相手の腕を斬った...はずが一瞬でその傷がなくなった。
「どうだぁ!?これが俺の薬の力だ!ただそのせいで中毒になったけどなぁ!?」
「なんで回復力なんだ...私の刀だけでは力不足なのか?せめて上羽がいたら変わっていたかもしれないのに...」
すると後ろから変身が完了したむっつーの姿がほぼ不意打ちに近い形で如意棒を使い堕天使の目を突き、その目から血が流れていた。
「何だぁ!?痛ってぇなぁ!?目が見えねぇ!?」
しかし、塞いでいた手を離すと血だらけになっていた目がなぜかすぐに血が流れなくなり一瞬で回復をしていた。
「あれ?なんであたしの攻撃で致命傷を負ったはずなのにもう傷が治っているの?」
「てめぇーに教えるわけねぇよ!勝手に考えてろよ!次は俺の番だぜぇ...」
むっつーが咄嗟に防御姿勢を行っている。すると堕天使がさらに粉薬を瞬時に飲み、動きが変わった。その動きはまるでゾンビのような得体のしれない恐怖感が私の背筋を凍らせた。一体どうなるんだろうと思い私も武器を構え、なるべくむっつーをサポートするようにした。突然堕天使がまるでリラックスしたように落ち着き、私たちに向ってこう言った。
「今飲んだのは痛みを完全に取り除く鎮痛薬の働きをした奴と幻覚を相手にも引き起こす薬をブレンドした奴だぁ!」
「え?つまりそれってあたしたちにも広範囲にその幻覚が影響を及ぼすってことなわけ?」
「その通りだぁ...だんだんお前たちにも効いてくるだろうなぁ...!俺のこの能力は粉薬を飲めばずっーっーっと広がり続けるんだよぉ!まるで病気に感染したみたいになぁ!」
むっつーがなんだって!?と思った表情をして急いで堕天使を倒しに行こうとした。だがだんだん様子がおかしくなり私たちを襲い掛かってくる。まるで何かに取り憑かれている見たな感じだった。
「ちょっと待って!私は敵じゃないよ!あっちにいる堕天使が敵だから!」
しかしそんな呼び声にも空しく私を狙って攻撃をしている。
(く...!私は一体どうすればいい?アメリアちゃんの氷魔法を下手に使うと凍死しちゃうかもしれない。でもほかに方法があるのか...?)
そこで急に勝利宣言のような勢いで私にこんなことを発言した。
「どぉーうだ俺の能力はよぉ!このまま幻覚を見して相手を自滅させれるぜぇ!」
その堕天使が声高らかに叫んでいた。そして続けてこんなことを言い、私は絶句した。
「俺が善意で人間界に麻薬の元を置いたちゅうのに、それが原因で戦争を引き起こすんだぜぇ?笑えるだろ!」
「...」
私は無言になりながら襲い掛かってくるむっつーの攻撃を避けひたすら考えた。すると唐突にむっつーが倒れ、眠るように気絶をしている。
「あ~ぁ オーパードーズを引き起こしちゃったかぁ~これはしばらく起き上がってこれないなぁ~!」
堕天使の不快な声がひたすら響き渡り、その響き渡る声の中で、静かに私は質問をした。
「むっつーはどうなってしまうんだ?まさか死...」
質問をしている途中で調子に乗っている堕天使から答えが返ってきた。
「そいつは俺が死ねば自動的に解除できるんだよぉ!つまり早く俺を倒して来いよ~!」
正直上羽を失い、さらにむっつーが戦闘不能になってしまってかなりピンチになってしまった。変身無しでも倒せれるのだろうか。その中でアメリアちゃんが氷魔法を使い周りを凍らせた。
「うちの魔法の出番だね!」
アメリアちゃんが氷魔法を使い、槍の形の氷であの堕天使を攻撃し、直撃したように見えた。
「誰が知らねぇが危なかったぜぇ...!?もう少しで顔面に当たるところだったぜぇ!」
何故か分からないが、その堕天使の周りにも同じ冷気が流れ込んでいた。そして氷の粒を使いガードをしている。そのガードした氷をどっかその辺に放り投げ、堕天使も氷を使い武器を出した。
「これが俺の武器『アイス・ギア・クランク』だぁ!?」
その見た目は氷の結晶みたいに透明で形はギザギザの楕円とそれを持つための取っ手がある。つまり自転車の部品を武器にしているみたいだ。
「どこからその武器を出したんだ?」
と独り言のように言いながら私は武器を構え、居合切りをする準備をしていた。するとその武器を私の方に向いて振った。私は構えながら何をしているんだと思い目線を堕天使の方を見ている。
「?なんか飛んできたような...」
私は違和感を覚えながらさらにしばらく堕天使の方を警戒していた。しかしそれは前兆でしかなかった。ふと目線を堕天使から外すとさっきまで見えていなかったものが見えるようになっていた。それは氷で出来た大きい粒だ。これに当たったら間違えなく顔面が血だらけになるだろうという恐怖感から私はすぐに刀を抜き氷を叩き割ろうとしていた。
「甘いなぁ!その氷は加速するんだよ!」
という声と共に氷が急加速した。そのスピードはアメリアちゃんでも見えないほど速い。もうだめかと思った瞬間、その氷が突然溶けて水になっている。周りを見るとさっきまで氷だったのが炎一色になっている。何か嫌な予感がすると感じたらそこに居たのは中世の鎧を纏ったむっつーの姿がいた。
「大丈夫?暴走しない?」
と声を掛けたが、全く返事がない。私たちは急いで遠くへ、そしてなるべく速く逃げ出した。
「なんだぁ!?その...す...がたは...」
何やら堕天使も様子がおかしいようだ。多分薬が切れたのか性格が180度変わった。
「ひ...!な、なんですか!?この非力な僕に何が用ですか!?」
最初に見た時と同じ気弱な性格になり、不自然にうずくまっている。なぜか右手を見られては困るって感じでその右手を隠している。何をしたんだろうと思いながら逃げているとその堕天使が勢いよく起き上がり幸せそうな表情をし、目にも止まらないぐらいのスピードで私たちの元へ来た。私はなぜこんな遠い場所でも追い付けたのかと聞くと前の怒りが混じっていた声と違って冷静な声で
「俺が注射したこのブレンドした麻薬にはスピード力を一時的に上がる奴をセレクトした。持ってあと30分もないがまぁいいだろう。」
と言いながら堕天使があの武器を取り出し、攻撃をした。私はよけようとしたけど足元が氷で固定されていて身動きが取れない。あと数センチで当たるっていうところでアメリアちゃんが氷の斧を素早く作り、間一髪のところで攻撃を弾いたのでギリギリセーフだ。しかしむっつーの炎がまだ燃えているので氷の溶ける速度が早く一回の攻撃が限界だった。
「あ~?ならこれはどうだ?」
そこにあったのはアイスはアイスでも甘いほうのアイスだ。この甘い匂いに誘われて私は不思議な感覚が針のように訪れた。目の前には蝶の姿の上羽がぽつんといた。私は久しぶりの再会だったので掴もうとしたら上羽が急に弾け、その破片が周りの背景と一致し色鮮やかに写る。私はまた会えなかったと悲しんでいたら後ろから上羽が人間の姿となって出てきた。私は疑問にも思わずもう一度会えたという喜びが勝ちまた抱き着こうとした。すると今度は上羽の体が突然崩れて下を見たら何もなかった。私は二度目の悲しみをし、ふと空の方を見たら蝶の姿の上羽が大量に飛んでいる。今私の中にある感情はうれしさと悲しさの二つを行ったり来たりしていてどうすればいいのか分からない。足がふらつきついに倒れてしまい意識が真っ暗な暗闇の中へ消えてしまった。...私は今まで何時間寝ていたのだろうか。気が付くとそこに居たのはむっつーとアメリアちゃんだけだった。それにむっつーはすでに変身を解いて暴走が終わっている。どうして?という質問をしたらアメリアちゃんが答えた。
「えーと、状況を説明すると...まず暴走状態になった霧月が敵味方関係なく炎で燃やし尽くして...」
それから聞いた話によるとこの後暴走したむっつーの出した如意棒が炎を纏い巨大な剣になったらしい。その剣で堕天使を一刀両断し、体が真っ二つとなりその堕天使はまるで霧のようにどこかへ消えたらしい。ただここで話が終わる程簡単なことじゃなく、私が堕天使の攻撃を受け、気絶していた時にむっつーの暴走が止まらず辺りを燃やし尽くしながらアメリアちゃんのことを狙い襲い掛かる。その際にアメリアちゃんは氷魔法を使ってもしょうがないから封印魔法として相手を結晶化させ封印するという魔法を使い閉じ込めさせた。しかし、それでも炎の力が止まらずついには結晶を割ってしまい再び襲い掛かろうとするも気絶してしまったようだ。しかも眠るように倒れるのではなく力が抜けるように突然立った状態から勢いよく倒れたということだ。まるで何者かに力を取られるように... それで暴走が止まったということらしい。とりあえず堕天使は多分倒したので私たちは天国と地獄の境目を目指すことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます