第2話 異なる世界~蒸気機関のネットワーク
第一章 「異なる世界~蒸気機関のネットワーク」
「じゃあじゃあさっそくたびをはじめるのー」
そう言っているが、まだ旅の準備とか色々してないけど大丈夫なのだろうが?と思ったときに考えていることが分かったのか知らないけど上羽がこう言った。
「だいじょうぶ。そのかたなをもってこればいいの。あといちおうふくもほしいかもー」
「ということは行く準備はもう整っ...」
「じゃあしゅっぱつ~」
会話が終わる前に服を無理やり引っ張られて、一瞬のうちに辺りが妖しい光に包まれて不安とか緊張とかと思う前に気が付けば目の前が不思議な世界が広がっていた。
「本当に異世界に来たんだ...」
「どう?はじめていせかいにきたかんそうは?」
その無邪気な声からは想像もできないぐらい得体のしれないものものを感じ取った。一瞬神々しい何かがあったような...そしてこう答えた。
「なんかちょっとわくわくするというかドキドキするというか...思ったよりも楽しみかも」
「えへへ でしょー!じゃあこれからみちあんないするからついてきてなの。」
そう言われたから、道を案内してもらった。森の中にいたから下ばかり見ていてなんの会話もなく大体30分歩いた。そして辿り着いて顔を見上げた先にあった光景が衝撃を受けた。 古い世界観が漂い、そして金色に輝く街。そして空飛ぶ船や不思議な蒸気機関車、大きい歯車や時計を飾っているビルなどが目に焼き付いている。いかにも異世界に来たって感じだ。右見ても左見ても今まで生きてきた中で独特な世界だ。さらに道歩く人々が、歯車型の片眼鏡をしている。これがスチームパンクというものなのか。漫画でしか見たことのない世界だから最初の不安が一気に吹き飛んだ。幼い心戻った中で上羽が囁いた。
「これからあなたにじゅうようなことをおしえるの。」
一瞬幼い声でなく、肌がピリピリする感じの低い声を出していたので少し空気が変わった。
「いきなりなに?ホテルに予約でもするの?」
多分違うだろうと思って適当に答えた。下手したら怒られそうだけどこっちも軽いノリを出してみた。すると
「はんぎゃくちょうあとらすがこのせかいにいるかもってじょうほうがはいったの。」
軽いノリはスルーされて普通に話してくれたのはいいけど、少し疑問が生まれた。
「軽いノリをスルーするのはいいけど、まず反逆蝶アトラスって何?いきなりすぎてよくわからないんだけど説明をお願い出来る?」
本当にいきなり重要そうなワードが出てきた。一体どういう存在なのだろうか?
「まえにてんかいでいっしょにくらしていたかみさまなの。」
「天使?」
「じつはてんしなのー」
いつもの軽くて幼いノリで話していた妖精?みたいなのが、異世界に行く理由が暗い気がしてきた。
「それであとらすはかみをうらぎっただてんしなの。うらぎるまえはうつくしいちょうなんだけど、うらぎったとどうじにじまんのきれいなはねがなくなって、あかちゃけたいろになって、からだがおおきくなっちゃて、てんかいからきらわれていたの。あと、あきとも ひまわりから『四月一日 椛に会えば今までにない変身ができる。空間を開けるから会いに行ってこい』っていわれた。」
情報量が多い...情報量が多すぎる!もはや思考停止してこう思った。
「初めての異世界楽しみだなー」
そして上羽も説明疲れたのかめんどくさかったのかこう言った。
「なのー」
......ということでまず観光しに来たように建物を見たりしてはしゃいでいた。そういえばホテルはどうするんだろう?まさか野宿?と考えていた。そうしたら
「見かけない顔だな」
「『突撃之剣』でも呼ぶか?」
自分が別世界から来ていた存在というのを忘れていた。それにこの町の名前も聞いていない。聞いてみるか。
「この町の名前教えて頂けたら嬉しいですけど教えてもらえますか?」
「もう少しで特殊部隊が出るからそこで聞いたらいい。」
「ありがとうござ...え?特殊部隊?」
「聞こえてなかったか?特殊部隊をさっき呼んだんだよ。」
なんかやけに大げさだなと思わず感じてしまった。その理由は多分特殊部隊についていけばいいか。と無茶苦茶軽く考えていた。それから数分歩いた先にあったやたらと豪華な建物を目の前に思わず息をのんだ。そして室内に入ると、そこには黄金色の輝いていていかにも偉い人が居そうなそんな空気だった。やたらと高級そうな椅子に座らせてもらって、特殊部隊たちがこう言った。
「見かけない服だけど、別の大陸から来たんだろう?」
その前にこの都市の名前とか色々聞きたいことがあったのでこういった。
「この都市の名前を教えて欲しい。教えたら質問に答えますので。あと何でほぼ全員片眼鏡をしているの?」
本当に大丈夫なのか?こんな質問をして。それにしても特殊部隊ってなんか大げさだな。と思った。ただ、相手から見たら私が異世界から来た人だろうし慎重になるのも無理はないなと感じていた。
「じゃあ最初に都市の名前と片眼鏡をしている理由を教えるから、ちゃんと質問に答えてね。」
特殊部隊の質問に答えたいけど、素直に異世界から来たって言われても信用できるかな?と思いながら
「わかりました」
と言った。そのすぐ後に特殊部隊がこう話した。
「この都市の名前は『アリストミスト』という名前だ。そして片眼鏡をしている理由だが、機械化に失敗した人工人間が凶暴化し、それを沈ませれるのがその歯車型の片眼鏡だ。ではこちらから質問をさせてもらおう。何しに来たのか、そしてどうやってここまで来れたのかを教えて欲しい。」
そうやって説明をしていいのか頭を使い悩んだ。悩んだ末に一つのプランをひらめいた。そのことを上羽に小声でこう話した。
「ここで変身して忍者みたいに逃げれない?難しそう?できれば被害を抑えたいから手短で頼みたいのだけど...」
そして上羽がこう答えた。
「だぶんたいじょうぶなの?」
なぜか疑問形だけど、プランとしては大丈夫そうだ。だから手の甲にある血液を蝶に吸わせ、羽が深紅になりながらこう唱えた。
(宇宙(そら)に届け、光さす月虹...)
すると辺りが赤黒くひかり、変身が完了した。そしてこれを見ていた特殊部隊が一瞬化け物でも見るかのような目をしてこう騒いでいた。
「明らかに人でない...まるで夢を見ているかのようだ...」
そして忍者らしく煙幕を使い、高いところから窓を割って忍者の力でうまく逃げることに成功した。
後ろの背景に昼の月があり、この明るい中で建物をすり抜けてしばらく隠れていた。その際に見てた人々がまるで謎の生き物を見てるかのように騒いでいた。このことを上羽にこう話した。
「もう少しで正体がばれるところだった...ギリギリセーフ?」
「うまくのうりょくをつかえているみたいなの。」
しかし、周りに誰もいない暗い細道だったので油断をしてしまった。突然人とぶつかって思わず倒れこんでしまったが、まるで運命の赤い糸に導かれたかのような感じだった。手を差し伸べてくれた。
「大丈夫か?」
「全然平気だから大丈夫」
「もしかして俺の大剣に当たったから倒れたのか?それとも自慢の筋肉にぶつかったからか?」
見た目は赤い髪の毛でオールバックな髪型をしている。いかにも熱血感溢れる人で筋肉がすごいある。
「こういうたいぷにがてなの...」
これが上羽の苦手なタイプなのか...なんか知れてうれしいかも。と思い少し笑ってしまった。
「あのー...名前は何で言いますか?」
「アッシュ。アッシュ・サラン・エタノールだ。しっかり覚えろよ!あんたの名前も教えろよ!」
流石にテンションが高い。高すぎる。熱血漢ありすぎる人だ。私とは真逆の人間は割と疲れる。
「私は四月一日 椛。よろしくね。アッシュ」
「わたぬき もみじと言うんか!よろしくな!それで話は変わるが、さっきの騒動はあんたがやったんだろ?しっかりとこの目で見てたぜ!」
まさかこんな熱血ゴリラに正体がばれるとは思いもしなかった。
「いったいどこから見ていた?」
恐る恐る聞いてみると
「赤黒い光がしたからそのままついてきた。さすがにここまで追うのには結構苦労したんだぜ。でもある程度ここに来ることを予測して素早く先回りするの、いくら俺でも大変だったぜ!」
なんてことだ、ただのゴリラではなく、頭の回転と足の速いゴリラだったなんで...さすがは異世界だ。世界観が違いすぎる。正直下手な忍者より忍者しているような気がする。忍者ゴリラなのか?などと思っていたら
「あんたの剣、だいぶ細いなー俺の大剣『炎剣 天魔ころし』と戦ったらすぐ壊れそうだな。俺の自慢の筋肉とこの大剣があれば敵なしだぜ!」
まるで自分の筋肉と大剣が一番強いかのような感じでめちゃくちゃ自慢してくる。相手が異世界なら、こっちも異世界の力で対抗しようと思った。
「これは刀というものです。正確さ、刹那さなどが大切です。そんな力任せには生み出せない『繊細さ』というもので敵を倒します。」
「そこまで言うならここで勝負しようぜ!俺の力とあんたの繊細さ、どっちが勝つが戦ってみたいぜ!」
予想しながった決闘を申し込まれた。単純なやつだ...ならばと思いこう言う。
「そこまで言うなら殺す気でかかってきて。」
アッシュが少し驚いた表情をしたが、すぐにいつものようになり
「ならば本気で行くぞ。」
手の甲を蝶に当てて、私の血を吸わせて唱える。
(宇宙(そら)に届け、光さす月虹...)
「ようやくでばんきたなのー!うれしいのー!」
そしてくノ一に変身した。一瞬の出来事だったのでアッシュが何も出来ずに変身を見ているだけだった。
お互いを見つめあい、二人の異なる刀剣を抜こうとした。
最初に攻撃を仕掛けてきたのはアッシュだった。いくら変身して体が強化してもこの一撃はとても重かった。するといきなり剣に炎が渦巻き、龍のように打ち上げた。この力は間違いなく本物だ。炎がさらに加速し、あたりがもう逃げれないぐらいに燃えていた。
「俺の炎は世界も燃やす。あんたに負ける気はない。」
右手の痺れがまだ取れない。二刀流だったが、もはやその意味を持たない。残った手で戦うことにした。
密かに唱える。
(禍福の女神)
上羽の言うには何が出るがわからない、ギャンブル性のある技だ。
「なにがでるんだろうね!なのー!」
...出たのは相手の武器をコピーだった。アッシュの持っている大剣を一時的にコピーして自部の手に持った瞬間、思わず手から放してしまった。上羽の加護を受けている武器なら難なく持てるが、加護をもたないコピーだと普通に持てない。
(いつもこんなに重い剣を片手で扱っているのか...荒々しい性格と力が合わさってとても強い。)
最初はハズレかと感じていた。だが、何とかして有効活用をしようとしひたすら考えた。アッシュの顔を見るといったい何が起こったのかわからない顔をしてたが、やはりこの剣は自分にしか持てないんだという安心した顔に変わっていた。
「なんかしらないが、俺の大剣を勝手にコピーした挙句に持てないなんで、敵を逆に弱らせた俺ってラッキーすぎる!?この隙に全てを燃やし尽くして灰となれ!」
ひたすら考えた末の答えとして、こんな選択をした。
(禍福の女神)
もう一度ランダム技を放つ。...出たのが、相手の欲しいものを召喚するというものだ。どういうことがというと相手の欲しいと思っているものを実現化するというものだ。いったいどういう能力なのか把握できなかったが、次の瞬間意味が分かった。筋肉に必要な肉などのたんぱく質などがご丁寧に皿に盛って置いてあった。。アッシュがとても欲しそうな目で見ていた。すると戦いを中止して私に向かってこういった。
「その技は欲しいものをくれるのか!?あんたについていけばたんぱく質たくさん撮れそうだな。是非ともあんたについていきたいぜ!」
(なんで説明すればいいのか...ランダムすぎてうまく使いこなせる自信がないな...)
なんかあっけなかったから変身を解除してしまった。
その時だった。
「そこで何をしている?」
白いマントを羽織り、騎士のような恰好をしている人がアッシュたちに向かっていた。
「アッシュ・サラン・エタノールか...そこで何してるんだ?辺りが焦げ臭い。」
「別に何もしてないぜ。ジョンソン・ウルフレッドこそ何してるんだぜ?」
「この街の中に入ってきた欠陥品の処理をしてただけだ。」
欠陥品って何のことだろう?少し聞いてみるか。
「欠陥品って何ですか?なんか怖そうだけど」
「ぼくもおもっていたのー」
「説明すると元々普通の人がとある科学者の手によって半永久的な命を手に入れる人が居たが、その際に失敗してしまって狂暴化となってしまった存在だ。その恨みとして人々を襲い掛かる。基本的に都市の外に捨てられてあまりここにはこないが、たまに都市に襲い掛かる個体もいる。こういうケースは特殊部隊を用いて破壊をする。」
「特殊部隊?(多分さっきお世話になったところかな...?)」
「そうだ。その昔にたくさんの欠陥品を量産してしまってどうにもならなかった時があった。そのときに生まれたのが『突撃之剣』という特殊部隊だ。特殊部隊の中でも銃を専門とした部隊と剣を専門とした部隊、魔法を専門とした部隊がある。その中で剣を扱うのが騎士団という名前だ。俺はその騎士団をしている。」
「アッシュ・サラン・エタノールとの関係性はあるの?」
「基本的にない。正直あまり関わりたくはない。」
「何でですか?」
「なんでなのー?」
「暑苦しいから。理由はそれだけだ。」
「それだけの理由だけ?」
「それ以外に何があるというんだ」
なんとなく納得できるような気がする。でも暑苦しいだけで悪い人ではないと思いそのことを話そうとしたが、周りに誰もいない暗い細道というのに突然大きな音がした。その音は町全体に広がった。
「む...もうこんな時間か。そろそろ騎士団に帰るか。」
「どうしてこんな周りに誰もいないところでも聞こえるの?」
「町全体が機関車のレールを敷いていてどこでも行けるからだ。ただここの暗い細道まではレール敷いていないから駅に行く必要がある。」
「いつもこの時間になるともうこんな時間なんだって思うぜ!じゃあ今日はこの辺にしようぜ!」
それからこの二人と一回別れて私はその辺で野宿をすることにした。この世界のお金を持っていないからだ。正直野宿つらい...
朝。起きてみたら空飛ぶ船が朝焼けを反射してとてもきれいに思えた。そこに上羽がこう言う。
「ぼくのもくてきちゃんとおぼえてるのー?あとねずににもつをまもったよーえらいでしょ!なのー」
「ちゃんと覚えてるよ。この世界にいる大切なものを取りに来たのでしょ。あと荷物守ってくれてありがとう」
「しっかりとおぼえてよかったなのー!それにほめられたのー!」
とりあえず私は朝の支度をするために私服と仕事用の巫女服が入っているカバンを持った。さらにもう一度アッシュに会いたいと思い町の方へ行ってみた。まだ異世界に来てから一日も経ってないから当たり前だけど不思議な機関車が走っているこの景色にはまだまだ全然慣れていない。はっきりと目を覚ましたはずなのにそれてもどこか遠い夢でも見ているみたいだ。
「アッシュは今どこにいるんだろうかな?」
「とりあえずてきとうにさがすのー」
そこで目にしたのはやたらと大きくて丸い建物だった。好奇心で中を覗いてみるとそこには強烈なにおいがして思わず顔がクシャクシャになってしまった。ここでは一体どんなことをしているのだろうか?と考え、この場を後にする。そして色々な建物を覗いたりして、少しだけだけど観光気分を味わえて嬉しかった。しばらくしてから赤髪で筋肉質な大剣を持った男を見つけた。間違えないだろうと思い声をかけた。
「おーい そこで何してるのー?」
「おぉ あんたか。今このチケットを手に入れたところだぜ。」
「チケット?」
「血と戦士が混ざり合う闘技場... ゴッドネールコロシアムという場所に戦士枠で参加しようとふと考えたからさっさと受付済ませようと思ったぜ。」
もしかしてさっき見たあのでかい建物なのだろうか?と疑問になり質問した。
「あのでかくて丸い建物のこと?」
アッシュは大きく頷き説明を始めた。
「基本的に外にいる凶悪なドラゴンとかの生き物を特殊部隊が捕まえてそのコロシアムで戦うんだ。俺はこれを始めて軽く10年になるとおもうぜ。それで今まで負けたことがない。それで言われたのがアリストミスト一無敗の大剣使いって」
「どうして大剣を使おうと思ったの?」
「幼い頃このコロシアムを見て育ったのもあるけど、大剣は基本的に重すぎで人気のない武器だからその代わりに賞金が倍になるんだ。だからあえて自分で選んだぜ。この大剣を選んだからには持ち上げないといけない。そのためにこの筋肉をつけるためにかなり自分を追い込んだぜ。」
「なんかおもしろそーなのー!」
「まぁ、頑張ってね。私は町の外に行くから。」
「え?外に行くの?さっきドラゴンのような狂暴な生き物がとかうろついているって言ったけど何が目的だ?何か特別なことでもするのか?」
「『黒の審判の書』の存在を見たいから。」
「それは確か伝承の魔導書って聞いたことがあるような気がする。ただあんまり覚えていないぜ。正直そんなに魔法に興味なかったからその授業だけで寝ていた記憶があるぜ。それであんた本当に外に行くのか?いくら魔法みたいに変身しても大丈夫かどうかは分からないんじゃないか?」
「でもまぁ、それが目的だから。ねぇ上羽。」
「それがしめいなのー」
「だからここで解散だね。」
「そこまで言うならしょうがないかー。ま、せいぜい頑張れよ。」
そういってそれぞれ目的のために解散をした。一体私の運命はどうなるのだろう?と思いながらアッシュに手を振った。
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