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「出て行ってくれ」
短く誰かが発した。目の前で杖を突いて立っている女の子に、村の大人たちは冷たく声を発した。
「やっぱりアンタだったんだな。どうしてこの村に来た。どうして光の螺旋を起こしたッ!」
女の子は何も言わない。べた付くような汗をだらだらと流しながら、それでも辛そうな顔一つせず、女の子は、大人たちと向き合っている。
さっきのが、魔法。朝に見た大きな石の剣じゃなくって、とても綺麗なピカピカだった。どうしてか目を離せなくて、ずっと見て居たくなるような綺麗な魔法。
「アンタが……アンタさえ居なければこんな事にはならなかったんだろ……ッ! なぁ!」
父さんがこれだけ怒っているのを初めて見た。女の子はどうして怒られているんだろう。あの魔法が発射されてから、怖い化け物は居なくなったのに。
「…………、これを。エリーと、そのお父さんが持っていた物です」
女の子が何かを取り出す。それはエリーが大事にしていた、ぺんだんとってやつと、一冊の本の様なもの。それを見て父さんが目を丸くした。
「……どうして、アンタがそれを……」
「きちんと……弔ってあげてください」
その言葉の意味は分からないけれど、父さんや、村の大人たちの表情が暗くなったのはわかる。エリーが、どうかしたんだろうか。そうだ、今日遊ぶ約束をしてた。ここには居ないけれど、採取に出かけているのかな。
「……、アンタは、何なんだよ」
「──────────アリシアです。エリーが、そう呼んでくれました」
「アンタはどうして……ッ! …………………どうして……」
村の大人たちが唇を噛む。どこか痛いのかもしれない。
「お世話になりました。出て行けと言われた以上、ここに留まるつもりはありません。ご迷惑をおかけしました」
女の子が深く頭を下げる。五秒程頭を下げたけど、女の子の顔は大きな帽子で隠されてしまった。
「…………………………、二度と、面を見せるな」
冷たく言った言葉は、女の子の胸を突き刺したかもしれない。いつもはそんな言葉は使うなって怒るけど、どうして父さんはそんな事を言うの?
女の子は、微笑んでいた。ただ、優しい顔で、安心したような顔。汗でべったり張り付いた髪を気にする素振りもせず、ただ、優しく微笑んで、俺達を見ている。
「もう二度と、俺達とは関わらないでくれ……」
父さんの声は弱弱しく、見た事無い顔をしながら、頬を濡らしていた。
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