イチリン

リムルラスカル

一躙

 曇りがかったカーテンから、黄色を帯びた光の線が頬を照らす。最近の楽しみは、寝る瞬間、布団にすべてを任せて横たわる、何とかなっているだろうと朝を待つ、あの瞬間しか心のゆとりが感じられない。しかし、朝を迎えるとどうだろう。まだ違う世界にいるという妙に温かい気持ちになるが、段々と現実がフェードしてくる。


 「研究しなくては」。 


鹿好和希は、苦々しい想いを抱えるまま、ポロシャツに手を通すのだった。



最近は、電車を見ても気分が上がらない。まぁ、理由は、うん、そういうことだ。

俺は屈指の鉄道オタクだ、のにだ。山陽地方を走る115系の接近音が響き、ため息が出る。

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イチリン リムルラスカル @kzkCreator

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