第12話 秋帆
「何の用、秋帆?」
「き、気安く名前で呼ばないでよね」
秋帆はそう言うが、その口調はいつもほどきつくなく、恥ずかしがっているような感じだった。
とはいえ、嫌がっているのは事実なのだから、名前で呼ぶのはやめておこうとも思う。
真夜が廉也と秋帆を見比べながら言う。
「二条くんと火倉さんって仲良しなんですか?」
「だ、誰がこんな奴と仲良しなもんですか!? ただの幼馴染よ!」(顔を真っ赤にしながら)
「秋帆は……火倉さんは俺のこと嫌いだろうからね」
「そ、そうよ。べつに……幼馴染だからってずっと仲良しを続けられるわけじゃないんだから……」
「火倉さんはしっかり者で人気者で、優等生だし。ボッチの俺とは大違いだ」
「廉也だって昔は違ったじゃない……」
秋帆は悲しそうに言う。それは昔の話だ。
二条家の跡取りとしてあるべき姿を目指していた頃の連やの話。今の連夜は違う。
「二条くんには友達いるじゃないですか」
真夜の言葉に廉也も秋帆も「えっ」と振り向く。
「わたしが二条くんの友達です……さっきはとっさに顔見知りって言っちゃっいました。ごめんなさい」
「こんな奴とあの超絶美少女の神城さんが友達?」
「二条くんはすごくて優しい人なんです! 昨日だって、わたしを助けてくれましたし、住む場所だって……あっ」
(秘密をバラしかけてる!?)
廉也は焦った。真夜が友達と言ってくれたのは嬉しいけれど、それはそれでまずい自体になりそうだ。
「住む場所??」
案の定、秋帆が怪訝な顔をする。
「な、何でもないから気にしないでよ。火倉さんには関係ないことだし」
「あっそ。どうせあたしには関係ないけど……。二条は約束も忘れてるし」
不機嫌そうにジト目で秋帆は言う。
「約束……? あっ」
思い出そうとして、廉也は大事なことに気づく。
「そうだ。火倉さんは今日が誕生日だよね。おめでとう」
「えっ。覚えていてくれたんだ……ありがと。嬉しいな」
秋帆が顔を赤くして、とても嬉しそうに微笑む。廉也はどきりとする。
(秋帆は俺のこと、嫌いなはずなのに……。なんでこんなに嬉しそうなんだ……!?)
秋帆は頬染め表情のまま言う。
「子供のころ、誕生日プレゼントをくれたよね」
「ヘアピンだったよね。もう捨ててるかもだけどさ」
「捨てたりするわけないでしょ! あ、あれ、まだ大切に持ってるし、たまにつけたりするから」
「えっ、そうなの!?」
「ほら」
そう言うと、秋帆はポケットからヘアピンを取り出す。
「ほんとだ。俺があげたヘアピン。もしかして、いつも持っているの?」
「べ、べつに深い意味はないんだからね? ただ、気に入っているから、お守りみたいなもの」
<あとがき>
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