第9話 ベッド


 真夜は廉也に訴える。


「料理は上手くできませんでしたけど……わたし、二条くんと一緒のベッドがいいです」


「普通のメイドは主人と一緒のベッドで寝たりしないんじゃない?」


「わ、わたしの世界のメイドはご主人様と一緒に寝るんですっ!」


「い、異世界……?」


「現実ですよ?」


「まあ、それはともかく神城さんはもっと危機感を持ったほうがいいよ。俺になにかされてから遅いし」


「エッチなこと、考えてるんですね……!」


「ま、まあね」


「ちなみにどんなエッチなことを考えていたんですか?」


「えっ?」


「参考までに聞いておければと……」


「何の参考なの……?」


「どちらにしても二条くんは何もしないでしょう?」

 

 廉也は肩をすくめた。真夜はくすくすと笑っている。少し脅した方が良いのかもしれない。


「俺だって男だよ。けだものみたいに……神城さんに襲いかかる?かもしれない」


「全然、説得力ないです」


 言われたとおり、廉也はそんなことをするつもりはない。

 真夜だってわかっているのだろう。


 真夜は目を伏せる。


「一人で眠るのは……怖いから、嫌なんです。さっきの男たちにさらわれそうになったのが本当に怖くて……」


 真夜は強引に廉也のベッドに潜り込んだ。そして、布団をかぶり、上目遣いに廉也を見る。

 彼シャツ姿の美少女を廉也は見下ろす格好になる。


「一緒のベッドで寝てくれないと、寂しくて泣いちゃいます」


 真夜が瞳をうるうるとさせる。廉也は完全に降参した。


「わ、わかったよ。今日だけだからね?」


「やった! 二条くんってやっぱり優しいですね!」


(いいように振り回されている気がする……)


 廉也もしぶしぶベッドに入る。互いを見つめ合う格好になり、二人は赤面した。


「わたし、家族と仲が悪かったですから……。こんなふうに一緒に寝てくれる人がほしかったんです」


「そっか。俺も……誰かそばにいてくれたらな、ってのは思ったことがあるよ」


 廉也は小さくつぶやく。真夜の返事が気になった。


「神城さん?」


 真夜はすやすやと寝息を立てていた。


「……もう寝てる!?」


 唖然としてから、廉也は「仕方ないな」とくすりと笑った。


(今この瞬間、俺が居場所になることで、神城さんの心が少しでも安らぐなら良いな)

 

 その穏やかな思いはすぐに消えた。

 冷静に考えると、女子と一緒にベッドの状態なわけで……。


(……俺はドキドキして眠れないんだけど!?)


 真夜はこんなに穏やかそうに寝ているのに、自分は眠れない。

 廉也はよっぽど真夜にいたずらしてやろうかと思ったけれど、そんなことできるはずもなく。


 ギンギンのまま、夜は更けていく……。





<あとがき>

『異世界に転移したら、美少女皇女と結婚~』が重版しました!!!!!!! また、HJテーマ別長編コンテストで別名義の大正ロマンものが受賞しています! よろしくね!


理想のメイドの予約もよろしくお願いします! 有償特典はなくならないうちに、ぜひ!!






 







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