第8話 アクシデント
最初に宣言した通り、一緒にお風呂に入っても良い、と真夜は言ったけれど、さすがに廉也は断った。
それはいくらなんでもまずいからだ。真夜は「また今度、ですね」なんてふふっと笑って風呂場に入っていく。
シャワーの音が、廉也の想像を掻き立てる。
(俺の家の風呂場で神城さんが……)
一糸まとわぬ真夜を思い浮かべてしまい、廉也は罪悪感に駆られた。
そのとき、「きゃあああああっ!」と真夜の悲鳴が聞こえ、廉也は慌てて風呂場へと向かった。
「た、助けてっ!」
一瞬ためらったが、何か危険なことが起きているのかもしれない。
中の水琴さんは裸だけど、でも、もしなにか取り返しのつかないような事態が起こっていたら――。
廉也は結局、浴室の扉を開けた。
真夜は震える手で、壁を指差していた。
そこには黒色の大きな虫がものすごい速さで疾走していた。
廉也は浴室隣の洗面台の下から殺虫剤を素早く取り出して、吹きかける。
そうすると虫は死んで、ぼとりと床に落ちた。
真夜は安心したように、ほっと息をついた。
どうやら虫が怖くて悲鳴をあげていたみたいだ。
「あ、ありがとうございます……二条くん」
真夜は小さくつぶやき、そして、自分がいまどんな状態か気づいたみたいだった。
彼女の一糸まとわぬ体の肌は、おそろしく白かった。ハーフだという噂を思い出す。
そして、シャワーを浴びていたから、銀色の髪はしっとりと濡れていた。
その髪が柔らかな胸の膨らみにかかり、扇情的な様子になっていた。
廉也は慌てて目をそらしたが、遅かった。
「えっと、その、あの……」
真夜がうろたえた様子でなにかつぶやく。さすがに恥ずかしいらしい。
廉也は「ごめん」とつぶやき、虫の死骸を拾った。
そして、回れ右をして浴室から出る。
……前途多難だ。
しばらくして真夜が出てきた。
「あ、上がりました……服も貸していただき、ありがとうございます」
だぼだぼのワイシャツ姿の真夜が、かえって可愛い。
いわゆる彼シャツということになる。
「その……さっきは……」
「ごめん。わざとじゃなかったんだ」
「わ、わかってます! わたしが悲鳴を上げたせいですし……それに、一緒のお風呂でもいいってわたしが言ったんですから。次こそは……」
真夜はそこで口ごもり顔を赤くする。;
気まずい沈黙がその場を支配する。
「あ、あとはもう寝るだけですね」
真夜が照れ隠しのように、そう言った。
「寝場所なんだけど、やっぱり俺がソファに……」
「ダメです! 料理も服もお風呂も用意してくれたご主人さまをソファで寝かすなんて、メイド失格ですから」
「じゃあ、神城さんがソファで寝る?」
「やっぱり、一緒に寝てはダメですか?」
<あとがき>
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