第6話 爆発


 廉也は真夜の下着を見てしまい、慌てて目をそらした。つい見てしまって罪悪感を覚える。

 形の良いお尻とパンツが脳裏に焼き付く。真夜は見られたことに気づいていないらしい。


 廉也は邪念を振り払って、真夜に手を差し伸べた。


「だ、大丈夫?」


「へ、平気です……」


 真夜は涙目で全然平気そうじゃない。


「無理はしなくて良いよ……?」


「無理なんてしていません! それに……女子の手料理って、男の子はみんな喜ぶんでしょう?」


「そ、それはそうかもしれないけど……」


「二条くんは?」


「う、嬉しいよ」

 

 真夜は表情をころりと変え、ふふっと笑う。

 そして、立ち上がった。


「わたしも二条くんを喜ばせてあげたいですから」


 廉也は真夜の笑顔に見惚れた。こんな可愛い子の笑顔が、自分にだけ向けられている。

 しかも二人きりの自分の家で。


 ところが、真夜は次にとんでもないことを言い出した。


「上手く作れたら、ご褒美に一緒のベッドで寝かせてください!」


「え!?」


「約束ですよ? じゃあ、早速作りますね! 台所は……」


 シュバババっと真夜が台所を探しに部屋を出る。止める間もなく、廉也は慌てて追いかけた。

 真夜は台所に入り、きょろきょろと見回す。野菜を手にとって、「これは……レタス?」なんて言っているが、それはロマネスコである。


 明らかに料理に慣れてはいなさそうだ。


(神城さんって意外に強引……。それに、心配だなあ……)


 廉也はおずおずと口を開く。


「な、何を作るつもり?」


「え? そ、それは……。二条くんの好きなもの、です!」


「じゃあ、生姜焼きかな。たぶん材料も冷蔵庫にあるし……」


 なるべく安全で作りやすそうなものを廉也は提案してみた。

 真夜はぱっと顔を輝かせ、こくこくうなずく。


「生姜焼きですね! お安い御用です。二条くんは休んでいてください」


「で、でも……」


「いいから、いいから」


 真夜に背中を押されて、廉也はリビングのソファに腰掛けた。


(クラス一可愛い女の子に手料理を作ってもらえるなんて夢みたい……のはずなんだけど……。この不安は一体……?)


 そのとき、ポンと激しい爆発音が部屋に鳴り響いた。

 キッチンからだ……。


 廉也は慌てて立ち上がり台所へ駆け込む。


「だ、大丈夫?」


 フライパンを前に途方にくれた姿の真夜がいた。彼女は困った顔で。


「二条くん。生姜焼きが……か、完成しました?」




<あとがき>

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