第4話 メイド萌えのキミに


「二条くん、メイド萌えなんですよね?」


「えっ!? 昼間のラノベなら誤解だよ!? あれは……」


「恥ずかしがらなくてもいいんです!」


 真夜の頭の中では、すっかり廉也はメイド大好き、メイド萌えの人間になっているらしい。

 そんな真夜は目をきらきらと輝かせている。嫌な予感がした。


「ちょっと来てくれませんか」


 真夜は連夜の手をつかみ、強引にポンキホーテの店内へと引っ張っていく。

 二階にあるバラエティグッズのコーナーに来た。


 そのコスプレコーナーで、真夜がメイド服らしきものをつかむ。ペラペラの布地だが、可愛らしくちょっと扇情的な服装だ。


 真夜はそれを当然のように試着室へと持っていく。


「覗いちゃダメですからね?」


 真夜がくすりと笑い、廉也は慌てふためいた。


「覗かないよ!?」


「えー、本当ですか?」


「信じてもらえないのは、ちょっと不本意だ」


 廉也が抗議すると、真夜は微笑む。


「もちろん、二条くんはそんなことしないって信じていますよ」


 真夜はそのまま試着室に入る。なんだか、いいように振り回されている。廉布を隔てた先に真夜がいる。


 衣擦れの音に彼女がセーラー服を脱いでいるところを想像してしまい、廉也は慌てて妄想を打ち消した。


 しばらくして――。


「お待たせしました!」


 真夜は絵に描いたようなドヤ顔で、メイド服を着ていた。胸が強調されていて、スカート丈も短い。


 どう見ても宴会用のコスプレだ。

 えへんと胸を張ると、大きな胸が揺れ、廉也は目をそらす。


「えーと?」


「メイド大好きな廉也くんに恩返しをします……! つまり、わたしをメイドとして……雇ってください!」





 廉也の住むのは高級マンションだ。3LDK。

 一人で暮らすには広すぎるし、贅沢すぎる。高校生なら、なおさら。


 でも、それがニ条家では普通だ。本邸は想像できないほど豪華だし。


 ただ、そのマンションもいつもと違うことが一つある。

 クラスメイトの美少女がメイド服姿でいるのだから。


(け、結局、断れなくて家に神城さんを連れ込んでしまった……)

 

 メイド服姿の真夜はとても上機嫌だった。 「わあ、ここが二条くんのおうち……!」なんて目を大きくしている。


 ただ、部屋は散らかり放題で、廉也としては恥ずかしい。


「片付いてなくてごめん」


「全然気にならないです! それを片付けるのがわたしの仕事ですから」


「本当にメイドをするつもり?」


「はい! 家に連れてきてくれたんだから、雇ってくれるってことですよね?」


「いや、そう決めたわけじゃないけど……」


「もし二条くんに追い出されたら、わたし、一人で夜を外で過ごさないといけません……」


 廉也は公園の段ボールで真夜が「助けて~二条くん~」と泣いている姿を想像してしまう。小学生たちが「お、おばけ……!」なんて言っている。

 ……面白いので、ちょっと見てみたいかもしれない。


 いや、こんな可愛い子が外で一晩なんて、危なすぎる。襲われたりしたら目も当てられない。

 結局、廉也は今日のところ、真夜を泊める以外の選択肢はないらしい。


 ホテル代を出しても良いのだけれど、それはそれで真夜が納得しないだろう。

 

「と、とりあえず今日はうちに泊まってよ」


「やった! ありがとうございます」


 こうして真夜はメイドとして廉也の家に住み込むことなってしまった。


 真夜はいたずらっぽく、上目遣いに廉也を見る。


「ねえ、二条くん。お礼に……わたしがメイドになってご奉仕しますから。料理でもお掃除でも、お風呂で身体を洗ったりでも……なんでもしますよ!」


「お、お風呂!?」


「だって、わたしは10億円で二条くんのものになったんです。わたしが……キミの理想のメイドになります」


 真夜は大きな胸に手を置いて、廉也に迫る。

 その頬はほんのりと赤かった。


「ま、まあお風呂はちょっと恥ずかしいかもですけど」


「それはメイドの仕事じゃないしね」


「そうですか?」


「そうだよ。神城さんの世界のメイドはどうなってるの……?」


「何でもお世話するのがわたしのなかのメイドです! でも、まずは……今日はもう夜遅いですし、ベッドメイキングでしょうか?」


「あっ、ベッドが一つしかないな。神城さんはどこに寝てもらおう……」


「えっ、こんなに広いのにですか?」


「だって、一人暮らしだからね。二条家の持ち物だから部屋は余っているけど」

 

 廉也が寝室の扉を開き、隅のベッドを指差す。二条家の家の持ち物なので、備品のダブルベッドをそのまま使っている。


「ど、どうしましょう……?」


 真夜が慌てた様子になる。

「まあ、俺がソファで寝ればいいかな……」


「だ、だめです! 二条くんはわたしのご主人さまなんですから!」


「かといって神城さんをソファに寝かせるのも悪いし……」


「えっと……あれだけ大きなベッドなら二人で一緒に寝ることもできますよね?」


「えっ!?」


 真夜はさすがにドキドキした様子で顔を赤くして、廉也をじっと見つめた。

 その表情には熱っぽさと期待があるようにすら見えた。




<あとがき>

廉也vs真夜の「一緒のベッドで寝るかどうか」の駆け引きが……!


面白かった、一緒のベッドに期待!という方は


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