第3話


(この子、意外と鋭いな……)


 廉也は少し驚いた。純真無垢に見えた真夜が、意外なことを言ったからだ

 いくら廉也が日本有数の財閥の息子で、自分で大金を手に入れているといっても、さすがに10億円がはした金ということはない。


 そう言ったのは、真夜の心に負担をかけないためだった。

 真夜はそのことに正しく気づいている。


 真夜は微笑む。


「それに、さっきもかっこよかったですし。助けてくれてありがとうございました」


「え、えっと……どういたしまして」


 こんなふうにストレートに感謝されるのは久しぶりだ。人との関わりを断っていたのだから。

 廉也は目の前の少女にどう接すればいいか、わからなくなった。また昔みたいに、期待して裏切られるのは嫌だ。

 

 この子とはこれっきりだ。偶然助けただけ。

 廉也は手をひらひらとさせる。


「それじゃ……また学校で」


「えっと、あの、その……お礼をさせてくれませんか?」


「いいよ、お礼なんて」


「いえ、それではわたしの気が収まりません! 二条くんのために、わたしにできることなら、なんでもしますから!」


(な、なんでも!?」)

 

 ちょっぴりエッチなことを想像してしまう。

 今、なんでもするって言ったよね……ではなく、廉也はますます真夜にどう答えればいいかわからなくなった。

 

 廉也は「い、いいから!」と叫んで歩き出そうとする。

 その廉也の腕を真夜がつかむ。予想外の強引さに廉也はびっくりする。


 真夜がふるふると震えている。


(? どうしたんだろう?)


 おずおずと真夜は言う。


「あの……実は帰る場所がないんです」


「えっ!?」


「お父さんもお母さんもいなくなっちゃいましたから……。家も差し押さえられてますし……」


「あー……なるほどね。住む場所も俺がお金を出せるけど……」


「そ、そこまでしていただくのは申し訳ないです!」


「10億円に比べたら大したお金じゃないよ。でも、すぐに用意は難しいな」


「ありがとうございます。そうですよね……」


 他に解決策といえば……。


「誰か友達の家に泊めてもらうとか……?」


「友達、ですか。わたし……実はそんなに仲の良い友達はいないんです」


「えっ、そうなの?」


 言われてみれば、彼女は人気者だが、特定の誰かと仲良くしているイメージはない。美少女すぎるから、だろうか。


「……でも……」


そして、真夜じーっと真夜が廉也を見つめる。廉也、冷や汗をかいて後ずさる。


(まさか……)


「二条くんもわたしの友達ですよね?」


「と、友達だったっけ?」


 真夜、顔を赤くして上目遣いに廉也を見つめる。


「わたしを二条くんの家に泊めてくれませんか!?」


「そ、それはダメだよ!?」


「やっぱりタダで泊まるなんて、ご迷惑ですよね……」


 悲しそうな真夜に、廉也は慌てて首を横に振る。


「い、いや、そういうわけじゃないけど……」


 真夜がちらっとまちなかの建物を見る。廉也の視線もそちらへと釣られる。

 そこには格安量販店『ポンキホーテ』があった。


「良いことを思いつきました!」


 真夜が満面の笑みで言った。

 この子のいう良いことは……危なそうだ。廉也は直感でそう思った。






<あとがき>

真夜との同棲お風呂が気になる方は

☆☆☆での応援、お待ちしています……!!!!





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