第20話 最高のサプライズ

凛子は、甥っ子の事が気になりながら仕事していると…

Lineが鳴ったのだった…。


あっ…甥っ子からだ。


甥っ子:

『凛ちゃん…それが…。

 今ね…ボーリング場にいるの。』


凛子は、想像とあまりにも違う事になっていて…ため息しかなかった。



凛子:

『どういうこと?

 私は、仕事をして帰るように言ったよね?

 ママ達にも、それをお願いしたんだけどな…。』



甥っ子:

『それが…今日は休ませます!って

ママが言ったら、所長さんも、明日からまた頑張ろうねって言ってくれて…。』



凛子は…あぁ〜見誤ってしまったと…後悔したのだった。

そうだった…。凛子の妹は、息子の事なんぞ、親身になるような人ではなかった。

いつでも自分の事が一番だった…。


なんで?こんな非常事態に…

そんな冷酷な事が出来るのか…。


一人…悶々と後悔してても、仕方がない…。

何とかしないと…。



甥っ子には、ママの言う通りにして、適度な所で、切り上げて寮に連れて帰ってもらいなさいね…とLineを送った。



仕事が終わって、慌てて、太陽に電話してその事を話したのだった。

太陽は呆れていた。

でも、まずは所長さんに連絡して、丁重に謝ったほうがいいよね。って事で凛子は謝りの電話をした。



夜…凛子は、妹にも電話をしたのだった。


凛子:

『妹ちゃん、こんばんは。』



妹:

『あっ、お姉ちゃんこんばんは〜』



凛子:

『私…今日は謝りに言った後は、そのまま甥っ子には仕事をさせるようにお願いしたよね?』



妹:

『うん。だけどね…所長さんが明日からでいいですよ。って言って下さったから…。』


『それなら、同居人さんも居るし、この際、甥っ子と同居人さんを、仲良くさせたかったから…。その後、みんなでボーリングに行ったりして遊んで帰ったの。』



凛子:

『あなた、本気で甥っ子の事、心配してないし、将来の事も何にも考えてないね。

お姉ちゃん、今日は本当に、あなたに頼んだ事を後悔したわ。』



『でもまぁ、悔やんだ所で、済んでしまった事はどうしょうもない。所長さんは寛大な方だから、甥っ子の知的障害の事も理解してくださってるから、大目に見て下さったのはあるみたい。』


『今日はお疲れ様。おやすみー。』


凛子は半ば一方的にしゃべって、電話を切ったのだった。



何とか甥っ子は仕事に行くようにはなったのだった。


だがしかし、甥っ子には…原付バイクの免許取得も目指させていて、そちらの方も、なかなか…甥っ子自身がやる気を出してくれないので…ほとほと困り果てて居たのだった。



とにかく、目標に向かって取り組むのが苦手な子ではあった。

原付バイクに乗れるようになると…こんなに楽しい世界が待ってるよ〜と話しても…。



想像力が元々、乏しいので…イメージが全く浮かばないのもあった。


凛子と太陽が、試験を受けに行かせる為に、何十回も応援し続けて、そのたんび、甥っ子は『がんばるねっ!』と元気よく言うが…。



実際は、1回も行かないのが現状だった。もう凛子も太陽も…応援するのがバカらしくなって、何も言わなくなったのだった。



すると…またもや…仕事を休む甥っ子になってしまい…案の定、寮に行くと…荒れ果てた状態の部屋で、また大量の洗濯をしにコインランドリーへ向かうのだった。



凛子は甥っ子に何を言っても、しても、放っても…改善されない事に、苛立ちが込み上げて来て居た。



そう思った瞬間にはもう凛子は、甥っ子に魂の叫びをしていた。


凛子:

『もうね…私も太陽も、甥っ子に、してあげられる事がないわ。

 あなたに何を言っても…しても…

あなたの心には何も響かない…。

 もうお手上げだわ!』


『なので、これからはプロにお願いする事にするわ!

 プロの人は、私みたいなのとは違って、もっとあなたの心に寄り添って、あなたもプロの人の言う言葉なら

素直に聞けるんだと思うわ!』



凛子は感情さゼロで、淡々と棒読みの冷静で非情さを感じるように、じんわり悲しい気持ちを込めて、少し早口で強めの口調で甥っ子に伝えたのだった。


甥っ子は黙っていた。



凛子も…先ほどの言葉を言った後は…

黙っていた。



どれぐらい経っただろう…。



甥っ子がワンワン泣き始めたのだった。



凛子はビックリして…。

ワンワン泣いている甥っ子を優しく抱きしめてあげたのだった。



そして…

凛子も…一緒になって

ワンワン泣いたのだった。



いつぶりだろ?

こんなにワンワン泣いたのは…。



甥っ子はワンワン泣いた事で、少し気持ちが、浄化されたのか?

スッキリした顔付きで…。



『僕…寂しかったんだと思う。』

とそう言ったのだった。


高校卒業して、すぐ寮生活で、コロナの時代で…。

高校の時も…親の離婚騒動で、いきなり凛ちゃん達と住みだして…

とにかく…頑張らなきゃと思う事に必死で…。



自分の気持ちが何を思っているのか?分からなくなってしまってた…。

封印しすぎて…。



凛子は、甥っ子の言葉を聞いて…ハッとさせられたのだった。


凛子は、甥っ子を『自立』させなきゃ!とそれだけに必死だった。


甥っ子の気持ちをゆっくり聞いてあげられるゆとりが無かった事を

反省したのだった。


でも甥っ子は、

『今さっき、凛ちゃんに愛カツをもらえて、

闇から抜け出せたよ〜って

凛ちゃんは、僕にとって

太陽の人だよ。』


『これからも僕が闇に深く潜るような事がまたあったら、凛ちゃんの太陽さで僕を救い出してね。』


凛子は甥っ子に『もちろん、任せて〜。』と笑顔で言ったのだった。



その後、もう凛子と太陽は、甥っ子に、原付バイクの試験を受けなさいとは言わなかった。



すると…

無二の親友と密かに試験勉強をしてたようで、凛子に、ある日…甥っ子から電話があったのだった。



ピロリ〜ピロリ〜。


あっ、甥っ子からだ。


凛子:

『もしもし?どうした?』



甥っ子:

『あのね…。………………た。』



凛子:

『何言ってるのか?声が小さくて

 聞こえないよぉ〜。』



甥っ子:

『あのね…。試験を受けに来て…

 う………った。』



凛子:

『今日、試験受けに行ったの?

 それで…どうだったの?

 もっと大きい声で言ってよ〜

 聞こえないんだってばー。』



甥っ子:

『合格したよ!!』



凛子:

『マジマジ〜すごいねー!!』

『おめでとう。』

『本当に…よかったよかったぁぁ〜うぇ〜ん。』



甥っ子:『ありが……と…うぅっ……ぇーんん。』

『凛ちゃん、感激してるん?』



凛子:

『うん、めちゃくちゃ嬉しいよぉ〜。』

『今すぐ傍に居たら、ハグして一緒にワンワン泣いて喜びを分かち合ってるわ』



甥っ子:

『僕も生まれて初めてこんなに感激したことはないよ。』

『凛ちゃんと太陽くんはこの感動を僕に味あわせたかったんだね。』



凛子:

『そうよ〜。』

『あなたはやれば出来る子だもん。』

『それをあなた自身が、実感して自信を持って欲しかったの。』


『気をつけて、帰っておいで〜。』

『今夜はお祝いだね!!』



凛子は早速、太陽に電話をした。

太陽もかなり驚いたが、めちゃくちゃ嬉しいとはしゃいでいた。



凛子は離婚してから、今度は妹の離婚騒動がすぐ起きてきて、その事で、突如、半ば強制的に姪っ子、甥っ子の母親代わりの役を引き受ける事になり、ふたりの『育成』をし始める事になった。



特に甥っ子の方には、今の寮生活付きの正社員の仕事に就かせたいが為に…。

お金も時間もかなりの投資をして、ここまでやって来たのだった。



高校生活でも、時折…悩まされ葛藤もして来たのだったが…。

社会人になってからの方がもっと、考えさせられる事が物凄くあったように思う。



あまりに甥っ子の闇の深さに…もうなすすべが無いのか…と一時期…弱気になったり…諦めかけそうになった事もあった。



でも…凛子は甥っ子を信じる気持ちは誰よりも負けない自信があった。



太陽が、凛子は、物凄く愛情深い女性だと俺は思うよ。


だからこそ、俺も含め、子供達も凛子の事が、大好きなんだと思うよ〜って、以前…甥っ子、姪っ子の事で、物事がなかなか上手く行かなくて…

太陽に泣いている時に…太陽が言ってくれたセリフを思い出したのだった。



あぁ〜本当に今日という日に

感謝だわ。



甥っ子ちゃん〜

凛子に最高のサプライズを

ありがとうね〜。



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