第16話 姪っ子の成長

凛子にはもう一人姪っ子がいるのだ。

姪っ子は、自閉症と知的障害なので、グループホームって所で生活をしていたのだが…。



親の離婚で、今いるグループホームを出ないと行けないと言われたのだった。



そうなると…今通っている職場も変わらないと行けなくなるのだ…。



実は、姪っ子の父親は、離婚騒動の時に、急に家を出ていったので、相談出来ず、母親に訴えるしかなかったのだ。



だがしかし、姪っ子の母親(凛子の実の妹)は、子供達の事を考えるとか、まるでなく、ただ、親としての威張りだけで…姪っ子に電話で、『仕方ないのよ!』と言っただけだった。



姪っ子は、どうしても?諦めきれずに、凛子と太陽に毎晩毎晩…泣きながら、『住まいも変わりたくないし…職場も変わりたくない』と…電話で訴えて来るのだった。



凛子と太陽は、何か?方法はないものかと…福祉の担当の人に相談した。


その福祉の担当の人は、姪っ子達が小さい頃から相談に乗ってくれて親身になってくれる人なので、事情もよく分かってくれていたので、『出来る限りの事は力になりますよ』と言って下さったのだった。



姪っ子は毎夜…ワンワン泣き通しで、

凛子はいたたまれない気持ちでいっぱいだった。



ある時…その福祉の担当の人が、住まいはどうしても変わらないと行けないが…。


職場だけは、2つ先の市まで、自力で電車に乗って、駅の近くに停まっているバスに乗ることが出来たら…

変わらなくても良いんだけど…。

と前向きな提案を持ちかけて下さったのだった。



早速、凛子は姪っ子に、その提案の話をしたのだった。

すると…姪っ子が、住まいは変わってもいい…。

でも、職場だけは変わりたくない!!とかなり強い意志を主張して来たのだった。



その話を福祉の担当の人にしたら、では、そのような方向でやっていきましょう!!と言うことになった。



凛子は、妹に、電話で、今回の流れを事細かに説明した。

すると…妹がめちゃくちゃ激怒し始めたのだった。



妹:

『なんで…仕方がない…って納得させるようにしたのに…。

要らない事をするんだ!

母親は私よ!お姉ちゃん私の娘を奪う気?』



凛子:

『あなたがそう思っているだけで、姪っ子は納得出来ていなかったのよ。

毎晩毎晩…私と太陽に電話して訴えてきてたの…。

そのぐらい、今の職場を気に入ってるのよ。』


『私は、割に職場には恵まれてなかったから、自分に合う職場に巡り会えている姪っ子の気持ちの素晴らしさをどうにかして生かせてやりたい!!と強く思って、私達なりにできる事をしたいと思って動いただけよ。』


『それと姪っ子の母親はあなた以外誰も居ないから。

 奪うも奪わないも…姪っ子はあなただけの娘じゃない。

 自信持ちなさいよ!』


『私に、娘を取られたとか、そういう理由の分からない事に怒りを向けるより、姪っ子が少しでも安心して過ごせる環境を作ってあげる事を考えてあげてね』


『お姉ちゃんは、妹ちゃんの幸せも、姪っ子の幸せも同じぐらい願っているからこそ、妹ちゃんが安心して、自分自身の幸せを見つけられる為に、甥っ子、姪っ子の事を出来る限りの範囲でやってるんだからね。』



妹:

『う〜ん。』



凛子:

『所で同居人さんとはどうなの?』



妹:

『お姉ちゃんは、太陽さんが先に亡くなったら…どうしようとか…不安になる事ないの?』



凛子:

『太陽が亡くなったら? ほへ?いきなり何の質問してくるの?びっくりしたわ。』


『まぁ、そうね。でも…まだ想像はつかないけど…もし?そうなった時だよね?はてさて…不安か?』


『確かにさみしくはなるとは思うけど…。仮に不安な気持ちにはなるだろうけど…でも、人は生きていかなきゃだからなぁ。』


『それに必ずしも太陽のほうが先に亡くなるか?は分からないのもあるしね〜。』



妹:

『そうなんだけど…。私、不安で…。』



凛子:

『でもさ、同居人さんあなたよりも3歳年下だったけど、あなたのほうが長生きする設定なのね。

妹ちゃんは生きる執着心強そう。』



妹:

『そうじゃあないけど…

 不安なのよ…。』



凛子:

『まっ、ひとりだけ不安不安って言っててもあれだから…

同居人さんに素直に話してみたら?』




妹:

『うん。そうするね。

 お姉ちゃん、姪っ子の事を頼むわ。』

と言って妹は、電話を切った。



電話が終わった後…凛子はいろいろ、妹の心情を想像したのだった。

あの子は甘チャンだから、人に寄りかかって生きてないとダメな子だから、そういう女性だから…。



今の同居人との関係がまだあやふやだから安心出来ないんだろうなぁ…。



そういう不安さの甘えさが、凛子に、鬼姉とか、子供を奪う悪魔みたいな風な言葉に変えられて、妹は私にしょっちゅうぶつけて来てるんだろうなぁ。



言われてみれば…毒母からもそう…

それ以外…職場や友人からもそう…。



みんな何かしら…色んな悩みや不安を抱えて生きている事は分かるが?

素直に悩んでたり、不安な事を話せる大人が凛子の周りには、本当に居ないなぁっと…また思ったのだった。



今日は、姪っ子と福祉の担当の人が、2つ隣の市まで、新しいグループホームから、歩いて駅まで行って、そこから電車に乗って、2つ隣の市の駅で降りて、そこからバス停まで行く。その流れを練習したのだった。



姪っ子が1人でも行けるようになるまで、福祉の担当の人は練習に付き合いますよ〜と言ってくれたのだった。



思ったよりも早く、2回目付き添ってもらったら3回目はもう一人で、行けるようになったのだ。



姪っ子は『目的があれば意欲がわいて、実行できる子』だと言うことが、初めてわかった瞬間だった。



甥っ子もそうだった。

最初は、自転車にも乗りたくない…と頑なに自転車に乗ろうとしなかった。乗れないわけでもないのに…乗ろうとしなかった。



どちらかというと…

姪っ子のほうが、『目的』を持たせるとモチベーションが持てて…

それに向かって努力できる子なのかもなぁ…って思ったりした。



凛子は子供たちの育成に携わることで…本当に…色んな素晴らしい出来事を感じさせてもらったりして

感動をたくさん味わえているのだった。



時に感動は…楽で楽しい事ばかりではない…。

でも、それも含め…凛子は今のこの人生に充実していた。



凛子らしく生きて行く事で、周りをも幸せに巻き込んでいく導きを、着々と…重ねて行って居るのだった。



姪っ子もイキイキ楽しく、新しいグループホームにもそれなりに慣れながら…大好きな職場へと毎日…頑張って電車に乗って通っている。



そう言えば…

宇宙はどうしているだろ?



宇宙からもそう言えば…

連絡ないなぁ…。

何かに…奮闘しているのか?

久しぶりにラインをしてみたのだった。



凛子:

『宇宙〜

 元気にしてるかな?

 いつから話してなかったけ?

 早めのクリスマス会して以来っけ?』



宇宙:

『わぁ〜凛ちゃん、お久しぶり。

 元気か?と言われると…

 体の方はボチボチなんだけど…

 お母さんの介護をしながら、仕事を両立させるのが、困難になり出してて…。』


『とりあえず、正社員から準社員に変えてもらって、夜勤ゼロにしてもらったのはあるんだけど…。

 準社員になると…給料がかなり減ったから嫁の機嫌も悪くて…。』


『あっ〜ごめん。久しぶりなのに…こんな愚痴はなしばっかりしちゃって』



凛子:

『宇宙の話は愚痴って感じには聞こえてないから大丈夫よ〜。

 そっか…宇宙も色々あったのね…。

 今もなお…思案している、お母さんを施設に入れるか?の問題を抱えて居るのね』



宇宙:

『そうなんよ。僕の体も目やら色々来てて、どこかでいいタイミングで、母を施設に入れないと…共倒れになりそうな気がしてて…。』


『でも、なかなか…母を施設に入れる事に抵抗感があって…正直…行き詰まっているんだよね。』



凛子:

『母ひとり子ひとり』で育って来たって言ってたもんね。


『でも、守るって…時として、冷酷かもしれないけど、思い切った決断も必要なのよね。』


『そして、私と宇宙はそこも似てて、決断しなきゃいけない人なんだよね。』



宇宙:

『本当に…そうなんだ…。』


『でも、なんか凛ちゃんと話せた事で、心が軽くなれたよ。

動けそうな気がしてきたよ。

ありがとうね。』



凛子:

『うん。よかった。いつでも、連絡してきてね。

 ひとり、孤独になったら

だめよー。

 宇宙には凛子がいるんだから…ねっ。』



宇宙:

『うん。凛ちゃんと話していると…勇気が湧いてくるよ。

 自分が今、何からしていくべきなのか?が見えてきた気がするよ。』



凛子:

『私はいつもここにいるよ。』

『なんてったって私と宇宙は、魂のふたごちゃんだもの〜。』



宇宙:

『うん!めちゃくちゃ魂のふたごちゃんを感じるよ〜。』

『またゆっくり連絡するね。

 今日はラインくれてありがとう。

 おやすみ〜』



凛子もまた、宇宙と少し話せた事で、よし!今!宇宙も自分なりの課題に向かって邁進してるんだから、私も自分を信じて頑張ろうと思えたのだった。



部屋の窓から空を見ると…

満天の星がキラキラしていた。

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