第13話 愛のちらし寿司
あれから凛子なりに、太陽にいろんな角度から、諭したりしたのだが、ナカナカ、「食費」をくれる事が定着出来ないでいたのだった。
これはもう、太陽と話し合うと言う次元ではないのかな?と思ったので、
手法を変えて、凛子の家への入室を出禁にする事にしたのだった。
お互いに、少し離れて見て、ゆっくり落ち着いて、お互いの関係の事も含め、見つめ直す事も大事なのかもなぁ〜っと凛子は思い、半ば強引に決めたのだった。
太陽は、さすがに凛子に出禁にされて困っていた。
確かに、毎日、晩御飯を何食べようか?
考えないといけないので、大変なのもあった…が…。
それより何より、凛子は一度決めたらテコでも動かない意志の強い女性なので、
はてさて、どうしたものか?と思案するのだった。
凛子は何度も太陽に…「なぜ?食費を払うのを定着してくれないの?」と聞いて来るのだが…。
太陽としては…「忙しくしてて、うっかりしただけなのだ。」それを凛子に言っても、分かってくれない…。
でも…凛子は「食費のお金」の事だけではないのよ。
「一緒に晩御飯を共にするこの時間の大切さ」を分かってほしい…とも言っていた。
今まで太陽は、「食事」は当たり前に取るものだと思っていて、「晩御飯」においても、同様だった。
言われてみれば、母ちゃんが病気で入院するまでは、作ってくれるのも、「母ちゃんが俺に作って食べさせる事を生き甲斐にしている」から、俺もその思いに応えたいって感じだった。
母ちゃんが入院してからは、妹が代わりに親父と俺の「晩御飯」を作ってくれていたが、それもどこか…当たり前な事だと思っていた。
そう言えば妹に、「たまには自分の食べ終わった食器ぐらい洗いなさいよ!」と嫌味を言われた事があった事を思い出した。
それも父が洗ってくれるので、それでいいやぁ〜っと太陽は甘えていた。
俺は…このままでいいんだろうか?
凛子には付き合ってから何回も…こんな事を言われたのだった。
「あなたは1人で生きて行く生き方があなたの生き方なんだと思うわ!その生き方でこれからも胸を張って生きて行けばいいと思う。」
だけど…私は、もう二度と…「ふたりで居てもひとり」だと感じさせられる相手とは仲良くしたくないの。
そんなワガママ言ってると、一生ひとりのままで生きる事になると言われても…。
そこは「妥協」したくない。
凛子は離婚をしてから、その意志が堅いらしい。
太陽だって、同じ思いはある。
俺だって、「共に生きて行けるパートナー」を求めてはいる。
俺なりには、そう思って、凛子と過ごしているつもりなのだが…今、「食費問題」が起きている。
明らかに、俺の甘えだ。
太陽はあまり自分と向き合う事は苦手で、いつも今は考えたくないと思う事はすぐ「未解決棚」に置く事にしている。
それを今まで何度も…凛子に「棚から降ろされて」、向き合わされるように持って来られてはいる。
中でも、「食費問題」は特に向き合いたくなかった。
凛子は時折…こんな事も言うのでドキッとしてしまう…。
それは…「男って、女にどこまで許してもらえるか?計る生き物」
このセリフを聞いた時は、凛子はなんで?ここまで男心を見透かすことが出来ているのか?と思ったのだった。
とにかく凛子は、太陽にとってかなりリスペクト出来、かなり信頼出来る相手なのだ。
俺は損得勘定な所はあるが、凛子は違う…。
そろそろ…凛子の堪忍袋の緒が切れるかも知れない…。
取り返しがつかなくなる前に、俺自身の「誠意」を見せなければ…。
一方、凛子は両親に、太陽が食費を払う事を定着してくれないから、「別れる」かもしれないと…しんみり話したのだった。
両親は、あんなに仲良しなのに…なんで?こんな事で?と言ってきた。
でも、凛子の意志は堅かったので、「こんな事」が大事な事だから、それを太陽が分かってくれないのなら、
これから先、似たような事が起きても、乗り越えられないと思う。と…かなり暗い表情で力無い声で伝えたのだった。
凛子はもう出来る事は全てやった…後は祈るだけ…だった。
すると…母が、いつもとは違って物凄く優しい笑みで、「ちらし寿司」を作ったから、太陽くんを呼んで一緒に食べなさい。と励ましてくれたのだった。
凛子はその「ちらし寿司」をじっーと眺めながら…思案していた。
これは「チャンス」かも!と直感で思ったので、勇気を出して太陽に電話をしたのだった。
凛子:
「太陽、お疲れ様。お仕事中、ごめんなさい…。
実は母が、「ちらし寿司」をくれて、ふたりで食べなさいって。
もし?良かったらでいいんだけど…。
今夜、一緒に食べませんか?」
太陽:
「うん。一緒に食べよう。」
凛子は、少しホッとした。今まで「食費問題」に全エネルギーを注ぎ過ぎて、些か、疲れがどっと来たのだった。
なんかもぅ…どうでもよくなっていた。
自然の流れに、もう委ねてもいいやぁ〜という気持ちになって来ていた。
ピンポーン〜
太陽:
「ただいまぁ〜」
凛子:
「おかえりなさい。」
太陽:
「連絡くれて嬉しかったよ。俺も…今夜は凛子に会いに来ようと思っていたんだ。」
「なんか俺、今まで、凛子に、甘えていたな…と反省したんだ。」
「凛子と晩御飯を食べるこの時間の大切さを、離れた事で改めて痛感する事が出来たよ。」
「今日ね、内科に薬をもらいに行ったら、食事療法が効いていますね。血糖値の数値が安定していますね。って病院の先生に言ってもらったんだ。」
「凛子が毎晩、俺の健康を考えて美味しいご飯を作ってくれているからだと実感したよ。いつも、凛子、ありがとうね。」
「かなりヤキモキさせて待たせたけど、これからは毎月末に必ず食費を渡すよ。
これは今月のね。これからもお願いします。」
凛子:
「うぇ〜ん~~シクシク。」
「よかった…。」
太陽:
「わぁ〜美味しそう。
凛子、食べようよ。」
「義母さんのちらし寿司って豪華で美味しんだよなぁ〜。」
凛子は、久しぶりに、ほおばって美味しそうに、食べる太陽を見れて、とても幸せな気持ちになれたのだった。
ここどれくらいの期間だろう…。じっくり安心して眠れていなかったのだった。
今夜は久しぶりに安堵感に包まれてゆっくり眠れるわ。と思った凛子だった。
万物の者たち〜
凛子に力を貸してくれて
ありがとう!!
無二の魂のふたごちゃんの宇宙〜愛情カツをくれて
ありがとう!!
もうひとりの私のココロ〜
ありがとう!!
凛子の心の中に、色んな人からの「愛」を感じた瞬間だった。
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