第5話 母親の介護が始まる
凛子は相変わらず、甥っ子の就活に、
精を出していた。
甥っ子の学校は、就活に向けて、
「実習」っていう、会社で直接3日程、
仕事を体験して自分に合った会社を、
見つける流れがあるのだ。
そんな時、先生から、新たに新しい会社を
開拓したいから、
その面接を受けてもらえないか?
と話をもらったので、
ぜひ!チャレンジさせて下さい!!と
言ったのだった。
それで、保護者同伴で、
A社に出向いたのだった。
最初っから、
とても感じのいい支配人さんで、
甥っ子自身の事にとても、
興味を持ってくれているのを感じたので、
凛子はありったけの甥っ子の出来事を、
話まくったのだった。
その支配人さんも、人事の方も、
真摯に耳を傾けて、
ゆっくり聴いてくれて、
凛子も尋ねたい事は、
聞いたりしたのだった。
甥っ子は、
「凛ちゃん、
あんなに僕の事話すから、
プレッシャー感じて、
来たじゃあないか!」
凛子は…あら…この子、
「プレッシャー」って意味を、
知ってるし、感じ始めたのね。
凛子は甥っ子が発する言葉で、
成長を確認しているのだ。
凛子は自分が、
この会社に入社したいと
そう思えるぐらいの好感を、
持てたので、
絶対に!!この会社に入れたい!!と
強く思ったのだった。
その後、「実習」として契約を、
してくれるようになったと、
先生から連絡が来て、
その後、「実習」という形で3日程、
実際に、お仕事をさせてもらったのだった。
凛子の願いが叶い…。
甥っ子は見事…内定の通知をもらえた。
凛子はめちゃめちゃ嬉しかった。
甥っ子が高校1年生から、
両親の離婚騒動で、
凛子の元で、暮らすようになって、
最初は、両親の離婚騒動で、
夜逃げ同然で、
いきなり凛子の元にやって来て、
不安やらいっぱいで泣いたり、
荒れたり…。
もう大変だったが…。
なんとか、就職が決まった。
なによりありがたかったのは、
寮がある事だった。
甥っ子を「自立」させて行く事が、
本人にとっても、周りにとっても
安泰に導く事だと凛子は信じて、
やって来ているのだ。
実は、学校サイドは、
甥っ子がこの会社に、
入社する事は、反対していたのだ。
それは、この会社は、
健常者だけの正社員での、
仕事だったからだ。
障害者の人が半数ぐらいいる所の方が
甥っ子が楽に仕事が、
出来るんじゃあないか?
と言われたのが、
凛子と太陽は、
確かに、しんどいのはあると思うが、
健常者の中で働く方が、
甥っ子が向上して行くと思う思いが、
強かったのはある。
大人のサポートは確かに、
かなり必要だろうが…。
甥っ子ならやれる!!
と凛子は思えたのだった。
凛子は可能性のある人間を伸ばしたい!!
その為ならどんな事もするし、
諦めない!!
これはちょっと凛子のエゴかも…とは
思ったのだが、賭けて見たかったのだ!!
一方、宇宙は、「親孝行」をしていない事を
物凄く、悩んでいたのだった。
しかし…
じゃあ何をどうしたらいいのか…までは
わからない感じだった。
そんなある日、宇宙は、
久しぶりに実の母の家に、
おすそわけを持って行ったのだった。
ピンポーンとベルを押したが、
応答がない…。
ドアを開けようとしたら、
カギはかかってはいなかった。
お母ちゃん…不用心だなぁ…
と宇宙は思いながら、家の中に入った。
宇宙は、部屋の中を見て愕然とした。
家の中は、ごみ屋敷みたいになっていた。
母は、布団の中で、眠っていた。
宇宙は慌てて、母に声をかけた…。
宇宙:
「お母ちゃん、これどうなってるん!?」
母:
「ムニャムニャ…おぉ~そらかぁ…。」
「今日は、仕事はやすみか?」
宇宙:
「どこか、お母ちゃん具合が悪いんか?」
母:
「昨日な、近所の、山田さんがな…~でな…
それから~があってな…。」
宇宙:
「僕は、お母ちゃんの体の事を聞いてるんよ!
大丈夫なん?」
母:
「そうなんですか…。
まだ用意してないんですよ…。」
お母ちゃん…なんかおかしい…。
どうしよう…。
宇宙は、介護士なので、母の状態を
感じて…。
もしや…と良くない予感がしたのだった。
それで、急いで、地域の「包括センター」に
電話をしたら、かかりつけの病院に
行って欲しいと言われ、行ったのだった。
診断は、宇宙が恐れていた…。
「認知症」だったのだ。
それからの宇宙は、
もうてんやわんやで…。
母の家は、人が住んで居るような、
状態ではないので、
片付けやら、なんやら、
テキパキこなしながら、
なんとか…。
人が住める状態に、
きれいにしたのだった。
あんなに「親孝行」出来ていない自分に
悩んでいた日々が、嘘のように…。
今は「親の介護」を始めたのだった。
凛ちゃんには、
今の自分の状況が変わった事を簡潔に、
lineで伝えた。
凛ちゃん自身も、今は、甥っ子さんの事で
一生懸命に奮闘している様子だった。
お互いに体には気を付けて頑張ろうね。と
lineを送り合ったのだった。
今の宇宙はもう、
以前の想いにふけて、
想い悩むような時間はなかった。
仕事と両立しながら、
母の介護をする事で
精一杯だったのだ。
宇宙は、
この仕事をしていて良かったと、
初めて思ったのだった。
自分のこの「介護士」という仕事が、
実の母親の「介護」をする上で、
かなり役立てられていると、
実感したのだった。
宇宙は、日常は、仕事終わりに、
母の所に寄って、食事の事やら、
下の世話やら、身の回りの事等を、
一通りこなして帰る日々。
母の所に泊まるのは、
仕事の休みの前日のみだったのだ。
親の介護をするまでは、
仕事帰りに、家の近くの本屋に、
古本を見に行ったり、
するぐらいの日々だったのが、
今はまるでその頃とは、
違う生活に一変していたのだった。
だが、宇宙の中で、
親の介護をしていなかった日々よりも、
今の方が断然…
充実感を感じられていた。
母とこんなに長い時間一緒に、
食事をしたり、
寝泊まりをしたりしたのは、
独身以来だと思ったのだった。
宇宙は、
母との時間が長ければ長い程、
母がいつか…僕の元から亡くなって
去って行ったら…。
僕はどうなってしまうんだろう…。
今度はその「未知なる恐怖」に
怯えるのだった。
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