第3話 アルバイト
給料日まで乗り切り、手取り三十四万円程の給料が入金される。もちろん給料日は休み希望を出しており、入金される深夜一時頃に全ておろし闇金への返済分を別口座に移動させてしまう。公共料金や給料受け取りの口座を使用してはいけない。闇金が摘発されたら全て使えなくなってしまう。以前に使用したメガバンクは使えなくなってしまった。警察から連絡があったのだそうだ。
そのまま自転車で中野区から高円寺まで移動して、駅裏のネットカフェに入る。ハッキリいって無駄遣いなのだが、給料日のパチンカスには大した問題ではない。コンビニから買ってきたビールや弁当を消費しながら、明日は何を打とうかとパチンコスロット動画を貪る。
朝一番に闇金へ連絡を入れて入金先の口座番号を教えてもらう。ネットバンキングで知らない人へ振込み、今月のミッションは完了。ウキウキしながらパチンコ店に急ぐ。
結局その日は負けた……。どうしようもないくらいの惨敗だった。何を打っても当たらないし、まだ余裕があるからと突っ込みすぎて十万以上負けてしまった。
まだ給料の半分以上は残っているので豪勢な夕食の買い物をして帰宅する。LIN○を確認すると闇金から「連絡ください」とメッセージが入っていた。完済した後に連絡が来るのは初めてだったので何か手違いでもあったのかと焦って連絡する。
「どうも、斉藤です。連絡くださいってメッセージみたんですけど……何かありました?」
『あ、斉藤さん。完済ありがとうございました。別に返済には特に問題なかったので心配しないでください』
その言葉に心底ホッととする。他の人の心情はわからないが、闇金関係の連絡はかなり神経をすり減らす。
『斉藤さん、ウチの利用長いよね?』
「そうですね。一年くらいは利用してると思います」
『斉藤さんは入金もキチンとしてくれるしウチとしても助かってるんだよね。上の人とも話ししてさ、提案なんだけど、ウチでアルバイトしてみない?』
闇金のアルバイト……。すぐに思い浮かんだのは闇金を題材にした漫画の主人公達のことだ。羽振りがよく、良い家に住んで良い車に乗ってるような人達のことだ。
「どんな事をするんですか?」
『どんな事をするかは、承諾した後でないと話せない事になってるんだよ。まぁ、警察に捕まるようなことはないのと、やってくれたら月五万円からのアルバイト代出すよ。仕事が休みの日にでもちょっと動いてくれるだけでいいんだけど、どうかな?やってみない?』
闇金なんだから犯罪行為に加担するというのは頭ではわかっていたが、捕まらない程度のことだろう、自分だったら上手くやれそうという根拠のない自信があった。
「わかりました。やってみたいと思います」
『助かるよ!じゃぁ、明日上の人に話してから連絡するからね。あと、毎朝八時くらいに何かメッセージか電話して。ま、会社のタイムカードみたいなもんだよ』
タイムカードみたいに確認するということに、面倒くさいとかではなく「しっかり管理しているんだな」という安心感のようなものを感じてしまったのだ。
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