詰問結果・あわせの鏡

 鏡の魔術師について知りたいって?

 そう。あなたは幸運の持ち主ね。わたしたちより詳しいひとなんていないでしょうから……それとも知っていて声をかけたのかしら。だとすれば、相当に悪趣味。

 ――……わかっているわ。こんな息抜き、またとないもの。

 鏡の魔術師は、ケンウェッタ湖水地方のなかでもさらに限られた地域に生まれる双子だった者を指す名称よ。

 そう、双子だった・・・者。

 先に出てきたほう――つまりわたしたちなんだけど――は生まれてすぐ精霊に捧げられて死んじゃうから。

 わたしたち、あわせの鏡の魔術師は、運命を持たない。生きるはずだった時間は、ぜんぶ、あそこに積み重なっているの。

 ……綺麗でしょう。あの石樹はね、それぞれ双子が協力して作っているのよ。

 少なくともひと季節にひと組は双子が生まれるから、そうして新しい子がきたら、その運命を掬って、石樹にかけてやるの。あちらとこちらでぴんと張って、まっすぐにね。鍾乳洞の柱を見たことはある? あんなふうに、少しずつ高くしていくの。

 昔はもっと大変だったらしいけど。今は観光でもそれなりに栄えてるから、人間の願いが集まりやすくていいわね。

 それはもう、大儲けよ。

 近いうちに水鏡の精霊は大きなことを成し遂げてくれるんじゃないかしら。

 とうぜん、人間のために、ね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る