第2話 お気に召すも、何も・・・

 メガネおねえさまバンザ~イといつも面白おかしく言えている彼も、これにはさすがに何も言えない模様。

 お気に召されたかって、そんなもの、気に入らないわけがないじゃん!


・・・・・・・ ・・・・・ ・


河崎由佳様


本当にお久しぶりです。

お気に召すも何も、本当なら夢どころの話ではありません。

こんなきれいな女性が私のような三文文士に言い寄ってくるはずがないですよ。

ええ。

どこかで読まれたかもしれませんが、私は縁談を2度、実力粉砕しました。

その詳しい経緯はここでは述べませんけど、良かったら読んでね。


でも、半世紀の時空を超えてあなたからこんなメールをいただけるなんて、

夢のようなとか何とか、そんな次元さえ通り越して、

もう、天に舞い上がってしまいそうです。

このままでは、酒飲んでも寝られそうにないや。


作家らしくない表現で、申し訳ない。

もしお会い頂けるなら、一も二もありません。

是非、お会いしたいです。


 2024年11月24日

                        米河清治


追記

こんなかわいいメガネおねえさまと毎日が過ごせるなんてラブコメ、ぼくの作風からは到底無理です。今のぼくの実力では、書けないよ。

でも、実践できれば、書けるようになるかな。


・・・・・・・ ・・・・・ ・


 かつて彼は裁判所にある人物を訴えた。それに追加して、その人物についた弁護士をも訴え上げて何やらやったという。その時の彼の文章、相手に不気味な殺意さえも感じさせていたという。

 そんな文章を平気のヘイサで書く人間の文章か、これ。それどころじゃない。これが作家と自称してなおかつそれらしい文章の一つや二つ書ける人間の文章か。

 一応彼の名誉のために申し添えておくと、彼女に連絡先、電話番号などもしっかりと記載していたことは言うまでもない。作家氏としては今すぐにでも彼女に電話してその住所まで出向きたいと思ったことは言うまでもないでしょうが。

 だけど、岡山市内からは少し離れた場所ということもあるし、彼自身が自動車を所有しておらず、運転免許もない。それどころか、昼間から酒を飲んでいるようなテイタラクなのだから、ただでさえ半世紀ぶりに現れたメガネっ娘に幻滅を与えるような真似はできないやと、そんなことを考えた次第。


 メールを送ったら、程なく返答が来た。

 彼女から、電話してもいいかと。

 一も二もないや。

 彼は、観念した。もちろん、返事はイエス。


 程なく、スマホ上ではこれまでかかってきたことのない番号が着信した。

 かくなる上は仕方ない。彼は電話に出た。

 まさか、ホントのホントに、彼女だろうか。今の彼女は、どんな声をしているのだろうか。人生55年、今までにないドラマがこのスマホから展開するのかと思うといても立ってもいられない。


「あ、もしもし、どちらさまでっしゃろ?」


 照れ隠しの関西弁が事務所兼自宅のワンルームの隅々まで瞬時に響く。

 果たして電話の主は、あのメガネっ子?

 それとも、ただの間違い電話か、別の誰か?

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