目撃者

部活に行ってから明日提出の課題をゴッソリ忘れてきた事に気付いた。


「やっべー!やっべー!課題出さないと部活行けなくなる」


俺は慌てて教室に向かう。教室に近付くと誰かの声が聞こえた。


「…好きです!付き合ってください」


きゃー!告白してるー!

誰!誰が誰に告白してるんだ!?

俺は息を潜めてドアに張り付きそーっと覗いてみた。


「!!」


幼なじみのエマがサッカー部のキャプテン石橋に告白されていた。


「エマちゃん」


ハッ、


「…」


やめろ…


「もし今好きなヤツとか…付き合ってるヤツいなかったら…俺と付き合ってくれないかな」


ダメ!


「…」


ダメダメダメー!絶対ダメー!!


「わっすれものしちゃったあー!!どこだっけなぁー?あ、あれ?おまえらどどどどどうしたの??」


不自然過ぎるだろ俺…


「本田!!」

「!」


エマと石橋が驚いている。当たり前か。いやいや違うんだ。俺は本当に忘れ物を取りに来ただけで、そしたら石橋がエマに告白なんかしてるから…とか少ない脳味噌で色々考えていたら


「ご、ごめんね石橋くん。私、本田と付き合ってるんだ!だから…ごめんね」


えーっ!?何言ってんの?エマ何言ってんの?


「え!そうだったんだ…ごめん知らなかった…」


「…帰ろ?」


赤い顔したエマが俺の手を握ってきた。


「そ、そーなんだよ!実はそーだったんだよ!黙っててごめんな石橋!じゃーな!」


エマと手を繋いだまま勢いよく教室を出た。

口から心臓が飛び出るかと思った。いや飛び出た。

そのままどこかに歩いていくエマ。

ってゆーかいつまで彼氏のフリしてればいいんだ?

この手も…繋いだまんまで…いいのか?いや、俺はいいんだけど。


「お、おいエマ。いいのかよ、俺と付き合ってるとか言っちゃって~」


ずっと無言で歩いていたエマが止まった。


「エマ?」


「…いいの」


「ん?」


「本田と付き合ってるって思われてもいいもん」


「へっ?」


「…もう!バカ!」


「それって…!!」


「もう言わない!」



課題忘れててよかったー!!

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