第16話 陰キャ大学生の日常

 皆の者はグループワークで全く口を開かない、もとい開けない陰キャの存在をどのように思っているのだろうか。

 中学の頃なんかは、なんで喋らないのとか、色々イジられたりもしたものだが、それが大学にもなるとあっ察しである。


 「だってもう大人なのにさ、最低限のコミュニケーションもとれないとか終わってるし、きっと一生このままなのかなとか思うとちょっと悲しくなるね笑」


 とかは被害妄想で、多分何とも思われてない。空気だから。

 水曜1限の英語のグループワークほんとしんどいな。眠いし。何でお金払ってこんなことしなければいけないのか。学生って大学にとっては客だよな? 

 プレゼンテーションとかも、声が掠れて上手く出ない。まあでも、嫌なことも淡々とタスクとして乗り越えていけばいいんだと思う。どうせ大したことにはならないから。


 同じ学科で、仲良くしていた友達、その友達が2年次からは他の人とも仲良くしだして、ある程度グループ的なものを形成し始めたとき、私は自然と彼から距離を置かねばならなくなった。

 3人以上の集団の中では、私はただただ息を潜めるほかないから。苦しいのだ。



 その代わり私は別の英語の講義で同じになった新たな人間と交友を深めるかたちになった。

 自然と成り行きで。アニメが好きという共通点があった。


 大学というのは本当に友達作りやすい環境だね。でもその交友関係をより強固なものへと育てていくことが私にはできないのだ。ほんと、どうしてhg-8-secのピッコロ大魔王のアビリティのごとく、会うたんびに私は喋れなくなっていくのか。

 答えは話題が尽きるからです。ありきたりな質問に逃げることが難しくなるからです。


 その友達も私ほどではないが陰キャだから余計にぎこちない。『呪術廻戦』の話をされたが、私は正直興味を持つことができなかった。同様に彼はプリキュアには興味がないようだった。


 『SPY×FAMILY』や『コードギアス』とかの話はしたかな。面白いよね、って。

 あとお互い『四畳半神話体系』が好きで、その話題も少し盛り上がりを見せた。(ちなみに私の一人称「私」は『四畳半神話体系』にインスピレーションを受けたものである。)


「ちょうど今映画やってるよね。『四畳半タイムマシンブルース』」


「そうなんだよねー」だから話題に出してみたんだよね。


 すると彼の方から一緒に映画を見ることを提案してきた。

 となると、彼の方は別に私といることに苦痛は感じていないのか。2限と3限の間休み、彼がパズドラの画面を見せてきて、そのガチャ引いてるのを私が「あぁ」とか「おー」とか言いながら見てる時間を彼はどう思っているんだろう。


 でもなんだかんだ嬉しいというか、この機会にもっと打ち解けられるかもしれないしと思って提案に賛成した。


「いつ観に行こうか。僕はいつでもいいけど」


 そう言うと、彼は少し悩んでいた。


「次の3限、普通に落としそうなんだよな。提出物出してないし。別に今から行ってもいいかな。いや、でも一応出とくか〜」


 みたいに言って、結局次の3限は出るようだった。彼はこの2限の英語も定期的に遅刻してくるし、その他の授業でも単位の危機にあるようだった。


 彼のそういう怠惰気味なところは魅力的だった。勤勉な人間と一緒にいると疲れるからね。やっぱ堕落至上主義ですよ。もはや講義サボったり遅刻する方が模範的な大学生らしいだろう。


 次の週には、彼は3限を捨てることにしたようだったので、じゃあ、今から行こう、ということになった。

 私も3限があるのでサボるかたちになるが、私は提出物は最低限出してるからね。数回サボるくらいなら多分単位もらえる。そもそも出席点というのは本来設けられないものだからね。(そんなようなことを雑談で教授が言ってた。)

 


 なんか、授業サボって友達と映画観に行くって青春だよな。ちょっぴり悪いことの共有というのは青春の鉄板。


 新宿の映画館へ行った。

 『四畳半タイムマシンブルース』はとても面白かった。小説も買った。お腹が空いたのでラーメンを食べることにした。猫ラーメンみたいでいいな、と私は思った。


 友達と映画を観た後、映画についてどの程度感想を語り合うものなのだろう。私は語りたいけど、なかなか深いところまでの言語化がすぐにはできないから、もどかしい思いをする。

 やはり考察というか、議論がしたいよな折角なら。でもなかなか、ね。


 いやでも、観れて良かった。すごく楽しかった。

 彼とは3年次も演習の授業で被るから接点を持ち続けることになる。


ーーー


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