第12話 2度目の大学の夏休み
10時50分に起きた私は寝ぼけ眼で最寄駅に向かった。
二年生になってTと通話したりどこかへ行くことは多くなっていった。
今日もTと会って、私の地元を歩いた。
2人でカラオケ店に向かう。カラオケは楽しい。一人でも楽しいが、他者がいるカラオケというのは、自らの自己表現力が試されるような違った楽しさがある。場の空気を作るというある種の創作活動(?)。
普通に、自分の知らない曲を知れることも知見が広がるしね。
カラオケで3時間歌って、レモネードドリンクを飲みながら帰路に着いた。昨日二人で凸した信仰宗教について色々と振り返ってみたりもした。
公園ではちょっとした祭りの準備をせこせことしている人たちがいた。
中1の時、その公園の祭りでぴかぴか光るおもちゃの金魚を中学の友達から貰った。
その友達はその数ヶ月後に転校してしまって、以来私はぼっちとして過ごした。金魚は今やドロドロに溶け、見るも無惨な姿になっているが一応保管している。
家に着いて、だらりとした時間を過ごす。
彼が私の家にくるのはこれで二度目だった。
父と母の宿泊許可が降りたので、私たちは近場の銭湯へ行ってサイゼに行って、帰ってきて談笑して、眠った。
次の日、一緒に大学へ行った。
*
我々は9月からルームシェアを始めることを話し合って決めていた。
この頃から賃貸のコーポレーションに行って物件を見学した。
かねてから実家を離れて一人暮らしを経験したいと思っていた私であったので、Tからルームシェアの誘いを受けることにした。
一人暮らしではないが、青春ポイント的にはむしろ良い効果を得られるだろうと考えた。
ルームシェアというのは、相手がいなければならないという点で手軽に体験できるものではない。
私のように人と打ち解けるのが極端にできない人間なら尚更。
その点、一人暮らしならいつでもできるのだから、精一杯ルームシェア生活をエンジョイしようと思った。
とても良い大学生期間の思い出となるだろう。
彼の方は、病的に寂しがり屋というか、常に人といて話をしたい欲が強いようで、そのために同居人を必要とするようだった。
8月初頭には部屋は決まった。
そこは2部屋あって家賃8万という安価であり、近頃リフォームされたのか綺麗な様相を呈していた。
初期費用を払わねばならなくて、やはり新生活というのは大変なようである。でも、何かが動き出すような期待感が確かにあった。
*
軽音サークルの8月ライブでは私たちの即席バンドは、クリープハイプの「NE-TAXI」「オレンジ」「ラブホテル」を演奏することに決まった。
私はクリープハイプはメジャーなバンドの中でも一線を画して好きなのでよかった。
8月30日までに3曲を仕上げなければならないことにプレッシャーを感じたが、8月中は毎日練習して楽しんで、尚且つかっこいい演奏ができるように備えようと思った。
そのための期間は十分にあった。YouTubeにtab譜面あるから良かった。
「オレンジ」は私がリードギターを弾くことになったので特にたくさん練習しよう。他はバッキングギターだからそんなに難易度はないが。
August24日。バンドメンバーとの音合わせ、兼顔合わせ。
緊張を和らげるためにストゼロを飲んでギグケースを背負って大塚ペンタまで行った。
先に一年生の女子二人が着いていて、挨拶を交わした。
あからさまに私を排斥する雰囲気ではなく、余裕のある態度で、軽い世間話をした。
私は一年生の女子とのコミュニケーションを兼ねてから楽しみにしていた。
私の頑張り次第で今日という日は好機になるのだ、なんとかして距離を縮めなければ。
シールド忘れたので借りてきますね、と会話の中で思わず敬語が出てしまった。
扉を閉めると微かに、ちょっと敬語に戻ってるじゃん笑、気まずいの嫌だから、ちょっと〇〇会話頑張ってよー。いや□□もいつもはもっとはっちゃけてるじゃん、元気出してー。なんでよお前〜〜……
という内輪ノリ会話が聞こえてきた。
私はこういう時に"ウケた"、と勘違いしがちであるが、これは断じてウケたわけではないことを知っていた。
フランクさが足りていないようだ。頑張らないと。
*
シールドを借りてきた私は元気よく、借りてき……たよ、と言った。
しばらくしてもう一人のメンバーが来た。
二年の男である。
ゆえに私の独壇場ハーレムではない。
このバンドはギター、ギター、ドラム、ヴォーカルの構成である。
ベースはまだ組む枠が余っている人を見つけることができなかったから無し。ベースいた方がいいけども、仕方ない。
アンプの調整をして、まずは一回合わせてみよう、という流れになった。
3時間は結構あっという間に過ぎる。
帰る時に7月ライブの時のこととかちょっと話をして解散した。
初顔合わせのため、そこまで打ち解けた雰囲気でなかったために、私が会話の中に入る余裕はあった。会話のテンポ的に。だから私は会話の中になんとか普通に入ることができていた。
でもそれは今回限りだろう。いつもそうだ。
コミュ障特有の、初対面時はなんとか大丈夫だけど二回目以降がうまく話せないいつものやつ。
もう分かってるんだよ無理だって。感じがいつもと同じなんだ。
私はもう頑張ることに疲れていた。一応奇跡を信じて、ダメだったら今回も仕方ないよね。
この日々は後々振り返った時に思い出にはなるから。バンドをやった、という既成事実だけで十分だろう。
こうして文章にして、青春というラベルを貼って、私は確かに行動したんだ。後悔はないんだ、って思えるようにね。
やってること終活か?笑
それにしても、一人練習だとミュートしきれなくて他の音が入っちゃったりするのが気になるけど、ドラムとバッキングと歌が入るとそういう部分はかき消されて演奏が2割マシくらいに聴こえるな。
練習の成果もあって足を引っ張ることはなかった。むしろかなり良い仕上がりだった。
本番は緊張するだろうけどこの調子なら行けそうだ。
ーーー
友達と過ごす +23p
ルームシェアや8月ライブへの期待 +3p
音合わせ、バンド練習 +29p
青春ポイント−868p
夏休みに友達とほぼ毎日一緒に過ごすことも、バンド組んでスタジオで練習することも非常に青春らしいと感じる。私は全然青春系アニメの主人公としていけるような気がした。
誰かが言った。
「でもヒロインいないやん。それって主人公か?」
私だった。
青春らしさって結局、彼女できない悲しみを誤魔化すためのものでしかないよなあ、みたいな、ね。
次回、青春ポイントの終極。
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