第9話 マッチングアプリに挑戦!

 マッチングアプリのタップルを始めた。

 

 大学に入って、私はかなりの努力をしてきたつもりであるが一切報われることはなかった。


 しかし私は心の底では思っていた。

 いざとなればマッチングアプリがあるさと。


 モチロン簡単に出会えるなんてことは思っていないが、流石に有料プランでなら一度くらいは女性とデートができるだろう。



 まずは無料会員期間でポイントを集め、そこから有料プランへと移行。


 タップル攻略の動画を見てプロフィール、プロフィール写真、メッセージの万全な対策をした。


 マッチングはときどきするがメッセージはほとんど帰ってこない。


 帰ってきたとしても今度は続かない。


 長期的にメッセージのやり取りをすることが愚策であるというのは分かるが、しかしあまりにも初歩的な段階でメッセージのやり取りが滞る。


 女性をフリックする手が震えた。


 誰でもいいんだよ、誰でも。



 とある女性とメッセージのやり取りをして、通話の約束をした。


 今日の18時から、私は「こ」さんと通話をする。


 そこでリアルデートに持ち込めれば……そして実際にドタキャンが起こらずに会うことができれば、今現在の僕の焦り、苦しみはひとまず楽になる。


 私は「こ」さんを信じていた。

 信じなければ何も始まらないからだ。


 昨日書いた「こ」さんとの通話のための軽い台本に目を通す。


 彼女はプロフィールの文章にスヌーピーが好きだと書いていた。


 私はスヌーピーについてWikipediaで大まかなあらすじを確認したあと、東京の町田にスヌーピー美術館なるものがあることを知り、それを一つの話題として用意していた。


 その他にも色々用意していた。


 分かっている。あくまでも困った時に見るためのものだ。


 自分で頭で考えて即興で言葉を出す練習をしていかなければ成長はない。

 コミュ力を鍛えることは最優先事項なんだ。


 しかし無理な時は、いたづらに機会を逃さぬよう台本を見て然るべしだ。


 すごく緊張していた。

 ちゃんと明るく話さなければ。


 タップルでは最初の通話は15分間しかできない。

 まあちょうどいい時間であろう。


 差別化をはかる、最低一回は笑いをとることを念頭に意識しよう。


 18時になった。

「かけてもいいですか?」と返信して、20分、30分となっても返信はなくこれはもう無理だと確信した。



 マッチングアプリなんてこのような残酷な世界だと理解していたから、そこまで傷つくことはなかった。


 私に異性としての魅力を感じさせるだけの力がなかったからこのようなことが起こったんだ。


 きっと私はこれからも女性からこのような仕打ちを受け続けるだろう。


 だけどいつか、私を無価値な異性だと、本能に従って切り捨てることをしないで、誠実な心で向き合ってくれる人はいると信じている。


 そもそもこれ(この瞬間書いているこのエッセイ執筆)は、そのような女性が実際に存在するのか確認するための実験的な意味合いも兼ねているのだから。



 私は泣く代わりにタップルで高速で無料分と100ポイントを使い果たしいいねをした。


 そうして2人とマッチングし、1人はメッセージが返って来なかったが、もう1人の「ちぃ」さんはメッセージが返ってきた。


「ちぃ」さんのことは本当に信じていた。


 私のプロフィールをしっかり読んで「哲学サークルというところが気になったのでいいねしました!」と。


「人間の存在意義について考えてて哲学かじったりしてるんですけど難しいです 教えてください!」


 人間の存在意義とかは心底どうでもいいが、良いムードを終わらせないためにもここから建設的なフェーズへと移った。


 彼女はキルケゴールの『死に至る病』を難しくて読めてないと言っていて、じゃあ一緒に読書会をして読むのを提案するのもありだなと思ったが、その前にメッセージが返ってこなくなった。


 哲学に興味を持つような人間でも恋愛においては弱者男性を無慈悲に無視してくる、だからこそリアル女性に夢を抱きすぎてはいけないことを再認識した。


 一緒にトップガンマーヴェリックを見るというものありかと思っていたのに。(彼女が設定していたデートプラン)


 急に誰かからフォローが来て確認するとエロ垢だった。

 どうしてこんなにmisérableなんだろう。


ーーー


彼女ができない −100p


青春ポイント−958p

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