第4話 趣味づくり
11月頃から、私は本格的にパン屋さん巡りをするようになった。
パン屋さんではベーコンエピやオニオングラタンパンやクロックムッシュ、カレーパン、コロッケパン、ソーセージパン、アンパン、メロンパンなど色々な美味しいパンがある。
食についての趣味を持つことによって自らの世界を広げようと考えた時、真っ先に浮かんだのがパン屋さん巡りであった。女性はパンが好きだ。
大学生になった私はさまざまな食べ物やさまざまなお店のものを食べることにこだわり始めた。
それは良い変化であったと思う。
私は昔から興味の持ち方が自閉的な傾向があって、自分は味噌ラーメンが好きなんだと決めたら味噌ラーメンしか食べずに塩ラーメンや醤油ラーメンは断じて食べなかった。
また、CoCo壱へ行ったりしても毎回シーフードカレーしか頼まなかった。
しかし今ではさまざまな味を楽しもうとする。
コンビニで少し働いたことによって、コンビニのいろいろなメニューを食べることも楽しんだ。
わさびにもチャレンジしてみたがまだあまり美味しいとは思えなかった。
そんなこんなで色々なパン屋さん、特に地元や、東京の定期で安く行ける範囲のパン屋さんをたくさん巡ってパンを食べることを楽しんだ。
美術館にもよく行くようになった。
友人Tの影響で聖書を買って教会にも行ったりしてキリスト教にも少し興味が湧いている昨今でもあった。
エル・グレコやフラ・アンジェリコなど聖書を知っているとより楽しめる絵画というのは多いのでとても良い傾向だ。
絵画を歴史的に見られるようになるとさらに楽しい。
東洋大学近くの、小石川植物園に行って雄大な自然に触れたりもした。
高くまで登っていくとキャンバスで描かれたように鮮やかな、ふと吸い込まれてしまいそうな大空があった。
ツツジやイチョウが綺麗だった。
日本庭園も見れてよかった。
最近、心が豊かになってきたかもしれない。
高校の頃よりも死にたいと思わなくなった。
ネガティブになったり、あれこれ考えると疲れるしなぁ。
安楽死ができるんだったらしたいけど、別にできないならできないでそれなりに楽しく生きていけばいいという気持ちに段々とシフトしつつある。
*
1時間前に教室前に着いたが、件の女の子は来ていなかった。ずっと待っていたが来たのは授業の5分前であった。
しかも、男がいた。
私はどうするべきだったというのか。
希望は潰えた。
けれど思ったよりも苦しみはなかった。
まだまだ前途多難ではあるが、先々週、女の子と1時間弱のカンバセーションをしたことに変わりはない。
それは僕の青春にとってかなり大きかったので、その余韻で最近は気分が良い。
好機があれば、彼女が一人でいたり、なんかしらで偶然の遭遇イベントがあったりした時は全力で頑張ろう。
今はそれで良い。
5限目の宗教学概論では妖怪学のビデオを見て楽しかった。大学で色々と学ぶことは楽しいと思う。
また、仏教やインド思想について学ぶことは少しずつ私をありのままの自然へと向かわせた。
世界は思ったよりもナチュラルだった。
*
それでも完全に吹っ切れられたわけではなかった。
冬は鬱になる。乾燥で身体中がボロボロだ。寒いし、過眠になるし、マスターベーションの回数が増す。
朝早く起きてウェブエックスを起動して語学の授業を受けなければならないのがストレスだ。でも中国語は必修だから出ないわけにはいかない。
家に何日も篭っていると煮詰まってくるので、散歩に出かけて、その結果アベックを見かけたりするストレスでおかしくなりそうだった。
だけど音楽を聴いたり、美味しいものを食べたり、新しいことを勉強したりする喜びでなんとか誤魔化そう。
誤魔化しだ。本当は何もかも好きではない。心底めんどうくさいから。
私が本当に好きなこと。それは、だらだらYouTubeを見たり、マスターベーストしたり、眠ること。
そのくらいしかない。
彼女ができさえすれば全てが解決するのに、という気持ちが毒のように広がっていく。でもいつか……。
12月20日。
大学のSDGsのイベントに参加した。しかし女性との出会いはなかった。
コミュ力不足により、うまく仲良くなるところまでいけなかった。
高校時代の友達であるSくんに久々に連絡を取ってみることにした。
Tが地元の友達とよく連絡を取っているのに影響を受けたからである。
私がLINEでご飯に誘うと彼はそれを了承した。
駅で集合して、すぐ近くのサイゼリヤに向かった。
お互いににこやかに服装の話や大学の話などをしながら歩いた。
サイゼリヤは美味しい。
彼は飲食のバイトをしているらしかった。彼は大学でのガールフレンド獲得の失敗について話した。私は心底共感した。
彼も大学で彼女はできないが、友達はできたようだった。
私たちは1時間以上の雑談をした。それは気まずい雰囲気ではなかった。
食べた後はすぐに別れた。大学の課題があるとのことだったから。
彼は人間関係を積極的に欲しないタイプの人間だと察せられるから、私の方からしつこくするつもりはない。
彼はその場その場で必要に応じた友達を作る。卒業したりして接点がなくなれば自然と関係は消滅してもよい。というようなタイプであろう。
しかし、私は人間の縁というのは、しばらく関わりがない状態でも確かに繋がっていて、然るべき時が来たらまた関わりが生まれて、然るべき時が来なかったら関わりは生まれないというだけのことであると考えていた。
ふとした時に然るべき時が来て、人生が盛り上がってくるということにポジティブな期待を持つ。
だから今はこれでいい。私とSくんは確かに繋がっている。
これで終わりなら終わりでいい、終わらなかったら面白いと思う。
クリスマスはせめてKFCチキンを食べて幸せに過ごすことにした。
私はチキンが好きだ。コンビニのチキンもすごく美味しくて食べると幸せになれるけれど、KFCチキンはさらに美味しくて幸せになれる。
私は英語の先生が少し気になってしまうという出来事があった。
もともとオンライン可の授業であって、来る人数は本当に少なかった。(3人とか4人。)
私は大学に行くことにまだ特別なワクワク感を覚えていたので、ほとんど対面で授業を受けた。
先生は、「人数少ないですね、でも来てくれる人がいるだけ嬉しいです」と言った。
私はその時、特別感を感じた。
私は先生の心の支えであるかのように思えた。(勘違いも甚だしいが。)
そんな事実に付随して、2021年最後の授業にて、先生は授業終わりに私が会釈をすると、「良いお年を〜」と言った。
しかもそれは他の人には言っていなかった!
すごく心があったかくなった。
ーーー
色々なことに興味を持てるようになってきた成長 +5p
会話した女の子とさらに関係を発展させることができなかった −5p
寒い、冬嫌い −5p
Sくんとの再会 +3p
積極的にイベント参加しても出会いなし。というか私の能力不足 −3p
チキンむしゃむしゃ +3p
英語の先生との心温まるやりとり +3p
青春ポイント−859p
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