第2話 初めてのバイトとか筋トレとか

 大学生活が始まったかと思いきや、某ウィルスのせいで大学は全面オンライン授業となった。

 サークル活動も対面は原則禁止でオンラインのみ。

 仕方がない。一先ず大学での出会いがほぼほぼ望めない以上、バイトでも始めようか。


 一見、外に出れない、皆がフラストレーションを溜めてるこの時期は、大胆に女の子を遊びに誘うチャンスのようにも思えたが、とにかく自粛しろの空気感は凄いし、顔の知らない状態でメッセのやり取りだけでもっていく力は私にないし、そもそもそれで簡単にOKしてくれる女の子はそもそも私が扱えるようなタイプではないだろう。

 といった帰結。……いや、でも逆にさ、(エロい妄想)。

 ……バイトしよう。バイト。



 スーパーマーケット二店舗、面接を受けて結果落とされた。

 そしてセ◯ンイレブン二店舗、面接を受けてそのうちの一店舗で採用が決定した時には4月が終わろうとしていた。


 時給930円で、高くもなく低くもない具合であった。

 深夜など遅い時間であればもっと時給は上がるが、生活リズムが乱れてセロトニンを効率的に生成できないことによって結果的に幸福度を損なうことを恐れて比較的明るい時間帯を希望した。

 ……まぁ、初めのバイトでコンビニというのは妥当なのではないかと感じられた。


 私は女性との出会いを切望していた。

 同年代の女性とシフト被って、仲良くなって、なんとしても青春を勝ち取ってやる。


 しかし思いの外コンビニバイトはハードだった。

 バイトってこんなキツいのか? 


 私はテキパキと素早くレジ業務ができないこと、また自分から色々なことを気づいて行えないことなど、度々叱責を受けた。

 しかし中学時代の部活動でもそんなふうに怒られてばかりで辛かったので、それと比べると特に苦には思わなかった。

 なぜならバイトは部活とは違ってお金が貰えるのだから。金くれるなら大抵のことは耐えられる。

 しかし、問題は今のところ同年代の女性との関わりが皆無だということだった。



 オンラインでの活動であったが、一応とある学術系サークルに所属することにした。


 また、学科の交流会に参加した。

 私以外は全員女子であり、なんか、友達同士でノリで立ち上げた企画に、とにかく出会いがありそうなことは逃さないぜキラリン、と私が空気読めずにダイナミック介入しちゃった感が否めない。今思うとハズカシイ。


 いやでも、一応公の場(Twitter経由で加入した学科のLINEグル)で参加者募集してたわけだから、別にそこまでおかしくはないだろう。


 なんとかそれなりに乗り切ることができた。空気を淀ませずにすんだ。

 女性ってやっぱりコミュ力が高いから、私みたいなコミュ障相手でもそれなりに会話盛り上げることできるんだよね。いやはや。

 主にワードウルフをやった。楽しい感じで終われて良かった。


 でもほんとは、私が楽しませなきゃいけないんだよな、そのくらいじゃないと彼女なんてできないよな、と不安感に襲われた。

 私にはそういう能力がない。根本的にコミュ障のままだ。

 それに、今日の交流会によって私は次の機会を獲得しなければならなかった。果てしない道のりであることを考えると陰鬱になった。


「一歩ずつだよ。女の子相手でも物怖じせずに話していけること。そのためには経験を積むしかない。今回はその一歩だね。マナセくんえらいね」


 そう言って脳内ガルフレの咲菜ちゃんにいい子いい子してもらえたので、私は少し元気を取り戻した。


 閑話休題。


 私は今年の二月頃から筋トレに励んでいた。

 しっかりとプロテインを飲んでいたし、さまざまな筋トレ系のチャンネルを参考にして行っていた。


 できる限り筋肉が分解されないように朝はなるべく早く起きてタンパク質を摂取して、自重器具を使い筋トレに邁進した。

 とても辛かったが、少しでも筋肉がつくと、あぁ、こうしてテストステロンが分泌されることによって、私を魅力的に思う異性がきっと現れるに違いない。


 そんな未来を毎日夢想した。

 毎日毎日そのように運命の女性、ソウルメイトとの邂逅に夢を馳せ続け、しかし裏切られる日々の中で段々と嫌気が差してきた。

 どうしてこれほどまでに努力しているのに報われないのだろう。


 バイトでの出会いはない。

 勇気を出してストリートナンパをすることもあった。

 しかし番ゲできない。

 通話アプリなどでネトナンするも結果が出ない。


 今思えば筋トレなどやらなければよかったのだと思う。

 いたずらに女性に対する憎悪を増大させるだけの結果に終わってしまったから。


 女の子が一定期間、私と友達になってくれて、「今まで頑張ってきたよね」「マナセくんは頑張り屋さんだね」「マナセくんは優しいね」


 そう言って(別に言わなくても、そういう雰囲気を醸し出してくれれば良い)、私の存在を認めてくれさえすれば全てが丸く収まる話だった。



 7月に入り、私はどんどんとシフトを減らされていた。

 5月から週三勤務で始めたコンビニバイト、しかし今やほとんど週一勤務である。


「大抵は2、3週間したら一般雇用になるんだよ。もう少し焦りを持ちなさい。……分かったな、頑張れよ」


 というオーナーの偉そうな言葉で、私はそろそろ辞めようかな、と思った。

 相変わらず出会いないし、コンビニなのに廃棄の弁当とか貰えないし、この職場に未練はなかった。


 私は依然としてインセル(不本意な禁欲主義者)的な女性嫌悪に深く囚われることとなった。


「あぁ、エリオットロジャー君、君だけが真の友達だよ」


 私は泣きながら『My Twisted World: The Story of Elliot Rodger』の邦訳を読み耽った。


 バイトは7月下旬に辞めた。

 筋トレも辞めた。

 眉毛サロンやカット約6000円の美容院には通い続けた。

 全てを諦めたわけではなかった。

 前向きに努力する、その行動自体が幸福なんだきっと。


 しかし春学期期末テストを乗り切り夏休みを手にした私は家から出ずにぐーたらしていた。

 12時ちょっと前に起きて、あいぽんの毎日とかカツドンチャンネルとかの底辺系YouTuberの動画とかを見て。


 やっぱり、そういうのが自分にとって一番合っているなと、思ってしまう自分もいた。

 んで午前3時ぐらいに寝るという生活。


 高校時代にやっていたYouTubeチャンネルに動画投稿をした。

 しかしYouTube活動の道筋が立たない。

 現在の自分が、過去動画投稿を精力的にやっていた頃の自分と比べて、変わってしまったことにより今までとは違ったやり方で、より良い動画を作っていこう。

 そしてYouTubeドリームを掴んでしまおう。今の私ならきっとできる。


 そう思って色々と考えて動画を出してみるものの力みすぎてコンスタントに動画を出せない。

 また、それだけ変に思いが入っていることによって、少しでも自分の意図とは違うコメントをされた時にやるせない思いが起こったりして、とにかくうまくいかないのである。


 でもいつかYouTube活動を成功させたい。

そうすれば今までのYouTubeに関する苦労全てが笑い話になるのだ。


 しかしそのような取り返そう取り返そうという思考が悪循環を呼んでいるのではないか?

 夏休みは滔々と流れていく。

 精神的に不安定になって、ここ数ヶ月でドッカンバトルに8万円も課金してしまっていた。

 まあ、別にバイトした分お金の余剰があるから、問題はないんだけど。

 全ては彼女ができれば取り返せる。いつか全てを肯定できると信じて。


 ……秋学期が始まろうとしていた。


ーーー


交流会で女の子と話す +5p

バイト先で出会いがない −3p

ナンパ成功しない −8p

夏休みでダメライフ +3p


青春ポイント−1005p

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青春獲得ユニバーシティ日記 プロ弱者マナセ @jakusha-jnana

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