お猫様を温める僕ら
毛糸で諸々編んでいると、どうしても「余り糸」が出てくる。
作品を編む時、毛糸は一作品分まとめて、少し多めに買うのが普通だ。
と言うのも、毛糸を染める時、職人さんが色を染めるのだが、手仕事なのでどうしてもその時その時で若干の色の違いがある。
これを「ロット違いの糸」「窯の違う糸」なんて呼ぶ。ちなみにラベルに書いてあるので、買う時は同じロットかを確認しながら買うのだ。勿論判別がつかないほど同じ色を作れる場合もあるのだが、大体の場合、ロットが違うと若干色が違う。
「後で足りない分を買い足そう」
と思うと、うっかりツートンカラーの作品が出来てしまう可能性があるのだ。
そうして多めに買って残った糸だとか、あるいは古い作品を解いた糸。中途半端の長さの糸。一見作品にはならない長さの糸。
そういうのは、掻き集めて猫ベッドにしてしまう。
モチーフを編み繋いで作ったり、色々な糸を引き揃えて太い糸にして編んだり。作り方は色々だ。
何でもいい。ふかふかで柔らかくて、お猫様がくるんと丸まって入れて、冬は温かい事が何より重要だ。
出来上がる前から、お猫様は編みかけの編地に乗って、「これ、僕のにするから」と額を擦り付け、「早く寄越せ」と主張する。
それをなだめすかして何とかどかしながら編み、やっと仕上がると、我がのお猫様達のリーダー格である黒猫様に、うやうやしく差し出す。
「チェックお願いします」
そう言うと、黒猫様は「成程、確認します」とばかりに手触りや乗った感じ、柔らかさ、顎を乗せた時の高さなんかを丁寧に確かめる。
そして、
「良いですね!」
とばかりに口角を上げて、モフっと猫ベッドに鎮座する。
その時の気持ちは容易く言い表せる物では無いが、強いて言うなら、達成感と自己肯定感と褒められて嬉しい気持ちと、お猫様可愛い! という気持ちその他諸々。
とにかく、気分がぶち上がるのである。
んで、三分の一くらいの確率で使ってくれない。
先日屋根付きの猫ベッドを編んだが誰も入らず、仕方なく屋根部分を解いてドーナツ型クッションに編み変えている最中だ。今度こそ使ってくれるといいな……
ちなみに猫ベッドでなくても、お猫様は所有権を主張してくる。
去年はクッションカバーを編んでいたのだが、編んでいる最中から「これ僕のですよね!?」をずっとやられて、根負けして献上した。
今は窓際の猫ベッドの上にブランケットとして設置され、お猫様達はその上で悠々とお昼寝をしたり、ニャルソックをしたりしている。ええ。誠に本望。
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