第8話 食堂
食堂の扉の中へ入ると、そこは、ファミレスだった~
大きな窓に食卓が整然と配置され、
カウンターがあり、ドリンクバーにサラダバー、
店内には、ピアノのスロージャズが流れている、
俺は文字通りの食堂を予想していたのだが・・・・
マリーを席に案内して、俺は厨房へと、
厨房も広く三人位は楽に作業出来そうだ。
「さて、何を作るか?」
厨房を見渡して揚物用の機器が有るのに気付き、
幾つかある冷蔵庫の一つに唐揚げ用の鶏肉を発見、
五キロ位はありそうだ、全部揚げて、
残りをストレージにしまっておけば、
旅先でのよいおかずになるのは間違いないだろうと、
早速機械のスイッチを入れる。
温度を170℃にセット、
温度が上がるまでに、
一キロずつ、分ける様に、大皿を五枚並べて、
下地にする葉野菜を洗って皿にひいていく、次に、
小皿に塩コショウ乗せたもの、
マヨネーズを乗せたもの、タルタルソースを乗せたものを
二人分用意する。
まあ、ソースはその都度用意すると言う事で、
後は、レモン汁用のレモンを用意して、あらかじめ皿の端に、
二つずつ乗せて、準備OKっと
油の温度が上がった所で、次々に唐揚げを投入して行く、
揚げあがった唐揚げをいったんあげて、再度投入、これで外はカリカリ、
中はジュウシーな唐揚げの出来上がりっと、
完成した唐揚げの皿を冷めないうちに、ストレージにしまい、
次々と唐揚げを仕上げて行く、
最後の一皿は今日の晩御飯のおかずだ、
マリーの分のパンを用意して、俺はやっぱりご飯だね、
ビールが欲しい所だが、我慢我慢っと、
出来た晩御飯をワゴンに乗せて、
っと後ろに匂いにつられて、引き寄せられた、
背後霊、いや、マリーが立ってじっと俺をガン見していた。
「マリー、配膳手伝ってくれるかい?」
「はい、お手伝いする為に、やって来ました」
「えっそうなの?」
「はい、お手伝いする為に、やって来ました」
「はい、分かりました~って、出てるよ~ヨダレ、だらだらと~」
「じゃあ、ワゴンを押してくれるかい?」
「はい、承知いたしました」
「じゃあ、ワゴンを押してサラダバーに行こうか、こちに来て」
「はい、タカシ様」
「ん、良い返事だ、ヨダレ唐揚げにかけないでね」
サラダバーに行き、サラダを二人分見繕い、デザートの果物、
とスープは、コンソメスープで良いか、
二人分用意して、
後、隣りのドリンクバーから、ウーロン茶を用意して、
はしと、フォークとスプーンっと、
全部、ワゴンに乗せて、席へと、
対面で配膳して、席へつき、では、
「いただきま~す。」
「タカシ様頂きますとはどんな意味なのでしょう?」
「ま~俺の国のご飯を食べる時の挨拶かな~?ま~意味は
有難く命を頂きますと言う事なんだけどね」
「そうなのですか、私たちは、女神さまに、感謝するのですけれど、今日から
私の神様は、・・・・では、私も、頂きます」
と手で唐揚げをつまもうとして、
「あち、あち~」
と言ってつまめない、
ちょいとお待ちよ、マリーさん、
出来立て熱々の唐揚げをフォークが有るのに、
なぜ手でつかむ、
「マリー目の前に有る銀色の三本の尖った先があるやつ、
そうそれ、それで唐揚げ、その肉を突き刺して、
そうそう、それから
三つある小皿の薬味のどれかに付けて、食べるんだよ、
熱いからフ~フ~して、冷ましてから、たべてね、」
コクコク頷くマリーフォークで刺した
唐揚げをタルタルソースに付けて、
フ~フ~息を吐きかけ、冷ましている。
リリーからは聞いていたが、
本当にてずかみなんだ~
冷めた唐揚げをこわごわ半分位パクリ、
しばし、ハフハフしてから、
顔が固まり、そしてにやけて、にやけて、にやけて、
福笑いの顔みたいになってしまった。
「な、なんて美味しいの?こんなの初めて」
後は無言で一心不乱にパク付いている。
うん、後は放置で良いよね、
俺は箸で唐揚げを摘まみ
塩コショウを少し付けて食べ始めた。
「うん、美味い!」
声に出る美味しさだ。
外はカリッと中はジュウシー、旨みの詰まった肉汁が口の中で溢れる。
そこでご飯をかきこむ、
「ン~最高~」
ビールが欲しいわ~
俺は、窓の外の景色を見ながら、
唐揚げを食べている。店内に流れる、
スローテンポのジャズピアノの調べを聴きながら、
なぜか窓の外の景色は
夕陽を浴びた、海なのだが、???
この際どうでも良いっか、
遠くの方で白波が立っている。
バリアリーフがあるのだろう、ゆっくりとした、
時間だけが流れていく、
「まさに、至福のひと時だね」
美しい夕焼けの海に夜のとばり降りた頃、
マリーも、お腹が膨れたのか、
うっとりと、窓の外の景色を眺めていた。
海は真っ黒になり、
今度は夜空に宝石がキラキラと輝き始めていた。
何故か店内の照明が星が見える位に暗くなっていた。
どこぞの、ラウンジかパブの様なかんじだ。
「タカシ様、あの~ここは神々がおわすと言う天界なのですか?
体が元に、いや、それ以上に、若返ったり、するお風呂、
食べた事の無い、ほっぺたが落ちそうになる位美味しい、食事、
窓の外の見た事も無い、美しい風景、
リュート以外の、聞いた事の無い楽器の美しく穏やかなしらべ、
子供の頃に読んでもらった、
絵本の神々が暮らす、天界の様」
「絵本の事は分からないけど、天界では、ないよ、
俺の特殊能力なんだよ、・・・・他言無用で」
「確かに、他の人に知られたら、
大変な騒ぎになってしまいますね」
「ところで、明日からの予定だけど?」
「はい、明日は一番に、冒険者ギルドへ向かいます。
国王軍が冒険者を兵隊に徴用しようとしていると言う噂があり、
ギルドが閉鎖する恐れがありますので、
冒険者ギルドは、世界中に有り独立した組織です。
ギルドから国が買い取る、
魔核や魔物の素材は大変貴重で、
各国はギルドを手厚く保護していますので、
ギルドは大きな力を持っています。
ギルドが閉鎖した国は徐々に衰退して、滅びる、
とさえ言われています。
冒険者はこのギルドが、手厚く保護しています。
先ず冒険者は国家間の入出国が自由なのです。
この国では街に出入りする時は、税金は掛かりますが、
早急に冒険者カードを作る必要があります。
ギルドが閉鎖されては、それも、ままならないので、
その後、王都を出て、
馬車で二日程行った所のジオンの街まで行き、街には入らずに、
広大な原始の森から魔物が出てきた時に、
国内に入らないように、原始の森に沿って築かれた、
長城の砦、のノル砦から、
長城を抜けて、長城と原始の森の間にある、
冒険者の為の小径、隣の国、
ヨシュア王国まで繋がっている、精霊街道に出ます。
ここからは、原始の森からの魔物が頻繁に、
出没する、危険地帯になります。
精霊街道を10日程徒歩で、隣のヨシュア王国にたどり着けます。
精霊街道は馬車1台が通れる位の細い道で、
雨が降るとすぐに、寸断されて足止めされますが、
兵隊に追われる事はありません。
今は春の季節で、雨が降る事も多いので、
道中は、ひと月位見ていても、おかしくはないでしょう」
隣の国まで、ひと月か~ってここって王都だったの~?
「はい、大体わかりました。明日朝食を取ったら、
一番で冒険者ギルドに向かう事にしましょう、ところで、
マリー話は変わりますが、この宿屋を俺に売ってくれませんか?」
「はい~?」
「俺のインベントリ《無限収納庫》に宿屋位なら、入ると思うんだよね」
「入っちゃうんですか?」
「入っちゃうんです」
「売るのは構いませんが、古いですよ」
「改修するから、問題なし、買った時は、幾ら掛ったの?」
「前の持ち主が歳で引退すると言う事で安くしてもらったのですが、
金貨50枚で譲ってもらいました」
「じゃあ、金貨30枚でどう?」
「もらいすぎです、10枚で十分です」
「暫く管理もして欲しいから、それ込みで」
「傍に置いてもらえるのですか?」
「マリーさえ良ければ」
「喜んで、お仕えします」
「じゃあ30枚と言う事で、ハイこれ」
「有難く頂戴いたします」
「じゃあ、これからの予定も決まった事だし、今日はもう休みますか?」
「はい」
俺たちは一旦銭湯に出て俺の部屋にもどった。
「じゃあ、マリー明日の早朝、起こしてもらえますか?」
「ハイ、承知いたしました。タカシ様」
部屋から出て行こうとしないマリーに、
「マリーどうかしたの?」
「タカシ様今夜からは、ご一緒に・・・
年増の未亡人はお嫌いですか?」
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