第9話 冒険者ギルドのエメルダ

「うっ、う~ん」


昨夜は、全く久しぶりに、堪能しました~

見た目15歳、中身は40過ぎのオヤジ、

据え膳は、美味しく頂きました~、


「・・・てへっ」


あんまり久しぶりだったので、張り切ってしまった。


もう大変でした~、


マリーに聞いた話だと、この世界の夜の営みは、


子作りの為のもので、楽しむ余裕が無いのだそうだ。まあ、交尾ですなぁ、


この世界の人族の平均寿命が非常に短い為なのかな?


女性に極振りの男女比も有るのかな?


何も知らない、マリーに、あれやこれやと教えたよ~


いや~快感ですわ~、そのマリーは、俺の横で、腰を抜かして、


いびきかいてます。


「え~っと~時間は、5時過ぎか~まだ、外は暗そうだな~」


外が明るくなっていれば、鎧戸から光が漏れるのだが、


今はLEDランタンランタンの灯りのみだ、


昨夜気付いたのだが、この世界の1日は26時間あり、

メニュウ画面に25時の次が0時になっていた。


リリーに聞いたのだが、この世界の一年は14か月なのだそうだ。

地上世界が太陽を一周する、公転周期が丁度14ヵ月なのだそうだ。


なお、ひと月は32日で一年448日となるのだが、

メニュウ画面にちゃんと表示されるので、気にしなくて良いらしい、


「うん、ややこしくなるので、忘れよう」


俺はマリーを起こさないように、ベットから出ると銭湯へ行った。


脱衣所で服を脱いでいると、マリーがやって来た。


「タカシ様なぜ、起こして下さらなかったのですか?」


「いや~良く寝ていたんで、悪いと思ってね」


「いえ、私の喜びは、タカシ様のお世話をする事ですので、

次からは起こしていただくと、嬉しいです」


「ん~まあ、考えておくよ」


「はい、よろしくお願いいたします」


朝からマリーにお世話してもらった。って食べてないですよ、


そんな事したら出かけるのが、おっくうになるからね。


やるべき事を早くやらないと、戦争に巻き込まれでもしたら、

命に関わるしね。


風呂から上がると食堂に行き、朝食の用意をする。


スクランブルエッグに、炒めたベーコンを添えて、

トーストにバターを塗って、出来上がり。


ワゴンに朝食を乗せて、背後霊のマリーに、押してもらい、


サラダバーに行き、サラダ、果物、スープ、今朝はコーンポタージュだ、


向かいのドリンクバーで、俺はホットコーヒー、マリーはホットミルクティだ。


客席へ行き、配膳をすますと、二人とも、席に着き、では、


「「いただきま~す」」


夜明けの海を見ながら、ジャズピアノの調べを聴き、朝食を食べる。


「至福~!」


マリーは、黙々と朝食を食べている。

泣かなくなったのは、進歩だろうか?慣れだろうか?


ゆったりとした、朝食の時間が過ぎて行く、


メニュウ画面の、時間は7時過ぎ、そろそろ、出かけるか、


「マリーそろそろ出かけるか」


「はい、承知いたしました」


俺たちは、銭湯を通り部屋へ戻った。


「タカシ様、昨日もそうでしたが、後かたづけせずに

戻りましたが、良かったのでしょうか?」


「ん~大丈夫、食堂も銭湯も、扉を消したら、中はリセット、

元どおりになるからね」


「そうなのですか?凄いですね」


「そう、凄いの、だから、他言無用で」


「はい、承知致しました」


「そしたら、マリーの荷物持って来てくれるかい?


インベントリ無限収納庫にしまうから」


「はい、承知致しました。少しお待ちくださいね」


マリーは、パタパタと、部屋を出て1階の自室に戻って行った。


暫くして、昨日準備しておいた、手荷物を持って来た。


徒歩での旅になる為、荷物は最小限だ、


マリーの荷物をすぐに使う物だけを残して、ストレージにしまい、


ママゾンで、革製の丈夫なリュックサックを購入、

手荷物をリュックサックに入れて、装備を装着して、リュックサックを

背負い、最後にポンチョを着て、旅支度、完了。


「マリー忘れ物は無いかい?」


「はい、大丈夫です」


まあ、忘れ物があってもこの宿ごと持って行くので、人前では

無理だけれど、後から取りには行けるのだけれどね、


俺たちは宿の外へ出て人目が無い事を確認してから、

宿をストレージにしまった。


マリーは、目をむいて、口をポカンと開いたまま固まっている。


「他言無用で」


「は・・・・・」こく、こく、


大通りを30分ほど歩いて行くと、大きな円形の広場に出た。

相変わらず、道沿いは大と小の入り混じった匂いで、

堪らない、円形広場の周りは大小の店が並んでいる。


その中でもひときわ大きい建物がギルドなのだそうだ。


俺たちはギルドの観音扉を開いて、中へ入った。


広いフロアは活気はなく、薄暗かった。


中で、女性職員だろうか?一人せわしなく、はたらいていた。


こちらに、気付いた、女性職員が、背中を向けたまま、


「ごめんね~冒険者さん~?昨日で、受付終わっているから~ギルドは

閉鎖なんだよね~って早くこの国から出ないと~兵隊に

とられちゃうよ~」


「いえ、俺たち、冒険者登録して欲しいんですけど~」


「えっ、そうなの?」


女性職員は初めて、こちらに、振り返ると、


「あちゃ~登録用の魔法道具しまっちゃったわ~ごめんね~もう無理~」


と言い、女性職員がこちらに、やって来た。

暗くて良く分からないが、今まで見て来た、人と少し感じが違った。


野暮ったい、綿のワンピースの人しか見ていなかったが、


女性職員は、リクルートスーツにタイトスカート、ネクタイ、と


中々スマートないでたちであった。靴は先のとんがったふにゃふにゃの靴だが、


「そこを何とかならないですか~?」


「ん~ごめんね~やっぱり無理~私も早く、此処をかたずけて、

早く出国しないと、マジやばいんだよね~」


事態は俺たちが思っていたより、深刻な様だ。


女性職員を少し観察した。マリーよりはましだが、やはり痩せていて、

暗くて分かりずらいが、顔色も悪そうだ。


「所で話は変わりますが、職員さんは、朝食を取られましたか?」


「ギルドから支給されている、食料が一昨日切れてしまって、

ここ2日水しか飲んでいないんだよね~だから、急いでいるんだよ、


動けなくなる前に出国しないと、って、あんた食料持っているのかい?

あるなら分けておくれ、冒険者登録でも、銀の冒険者にでも、

なんでもしてあげるからさ~」


・・・切羽詰まっているようだ、


「じゃあこれで」


菓子パン三つとペットボトルの紅茶をママゾンで、購入して、

ストレージから取り出すと、女性職員に手渡した。

女性職員は菓子パンと紅茶を受け取ると、


「なにこれ?柔らかい、フワフワじゃない、こんな食べ物初めて見るわ」


「これは、菓子パンと言って、俺の国の食べ物です、


飲み物は紅茶と言います」


ペットボトルを貸してもらいキャップ開けてあげた。


女性職員は口でパンの袋をピッと破くと、パンを一口、


最初不思議そうな顔をして、顔がにやけて、にやけて、


段々崩れて行くと、福笑いの顔の様になっていった。


ん~なんか昨日も見た様な、やっぱ、泣いてるし~


手早くパンを食べ終え、紅茶を飲みながら、


「何、このお茶、何て、甘くて、優しい味なのかしら、ネエ貴方、神様?」


「違いますよ、変わった、能力は持っていますが、普通の人です」


「じゃあ、私をお嫁さんにして、お金なら私が稼ぐわ!」


唐突に、なんでそうなるの、


「ムリムリ、俺まだ、15歳だよ」


「成人じゃない、貴方は遊んでいて構わないから、ギルド職員の私なら、

普通以上に稼ぎがあるから、まかせて」


・・・15歳で成人なんだ~


「いやいや、そう言う事じゃな~く~て~」


「私が20歳の年増だから?年増だからダメなのね、働きずめだったのよ~若い時から

気が付いたら行けず後家の歳になってたんだから、仕方ないじゃない、」


あ~人の話を聞かない系だわ、この職員さん、後20歳なんだ~


「だったら、愛人でも構わないわ!まだ、男の人は知らないけれど、上手に

やって見せるわ、身の回りも、床も上手にお世話するから、ねっ、ねっ、

愛人にしてちょうだい」


「・・・貴方、エメルダじゃない?」


「えっ、そうだけど、あ~あんた、ブラッデイマリー?」


「ブラッデイマリーは止めて、今はタカシ様の従者よ」


「えっ、そうなの?私より二つ年上の年増の未亡人のあんたが?」


「年増は止めて、あんたと二つしか違わないんだからね!


いやに人の話を聞かないと思ったら、あんただったのね、


あんた昔とちっとも変ってないのね?」


「じゃあタカシ様、今から、私も従者って事で、」


と言う事で、なし崩し的に従者になった、エメルダ・・・


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