第5話 エロゲ屋さん
ソフマップ!!!!!!
ライブハウスの近くにはなぜかソフマップがある。そして、この栗松さんはそのソフマップの常連なのだ。
そんなに彼はパソコンオタクなのか?というとそういうわけではない。
彼の目的は……
「おお!『天使☆騒々 RE-BOOT!』置いてるぜ!」
彼がソフマップに来る理由は……エロゲである。
しかもこのソフマップは何故かすごくエロゲの品揃えが良い。パソコンよりも多いと本当に言えるくらいだ。
そして、俺はよく彼と共にここに訪れては、新作エロゲを漁るということを稀にしている。
「お前、何買う?」
「いや、最近金欠なんで今日はいいです」
「そうか、じゃあ俺この会計済ませてくるから」
栗松さんの手には8本ほどのソフトがあった。
————よくそんなに金があるな。金持ちなんかな……。
俺はレジへと向かう彼を横目に見ながら、沢山のゲーム棚を歩き回っては、見渡していた。
しばらく歩いていると、そこに珍しいタイプの客がいた。
まさかの若い女学生。しかもその見た目からして、結構ギャルな方な口の女と見た。そんなやつがエロゲ棚にしゃがみ込んでは、裏面を見つめて吟味してるような顔をしているではないか。
俺は勿論、自らの目を疑う。
しかし、幾らその目を擦ってみれど、その景色は変わらない。
相変わらず、そこでギャルがエロゲを眺めていた。
まるで合わない。これが月と鼈というのであろうか。どっちが鼈なのかどうかなんぞ知らん。
とりあえず月か鼈かどちらかのギャルを見ていると、いきなり彼女は俺の顔を見上げ始めた。
「!?」
そのいきなりの視線に俺は思わず軽く反応してしまった。
「珍しいね。女の子がこんなところに来るなんて」
「あ、え?はい……」
そうか、この見た目では俺は女として認識されているのか。今更ながらそんなことを思い出した。栗松さんと男の話をさっきまでしていたからしばらく忘れていた。
しかし、ここは性別を誤魔化すべきであろうか。
俺は今日それで痛い目を見たばかりだ。その失敗を生かすべきであろう。
無意味に嘘をつき続けるべきではない。
「いやぁ……実は私……いや、俺、男なんですよね」
俺は特に気にしないフリをしながら口にした。
どんな様子かというと棚に並んでいるエロゲのパッケージを確認しながらっていう感じ。
「へー男……え⁉男!?!?」
はじめは薄い反応であった。
しかしその反応はその後思ったよりも大きいリアクションへと置き換わったのである。
彼女の持っていたエロゲが床に落ちる。ディスク割れてないよな大丈夫よな。
「へ?ほんとに?まじで?まじで男!?」
「ほんとですよ。女なのに男だと嘘つく理由がどこにある」
「いや、だってこういう店だから男って言ったほうがなんかやりやすいと女の私からしたら思うんだけど。だからメリットはあると思うんだけど……男!?その見た目で!?」
それにしても声が大きい。本屋とエロゲ屋(実際はパソコン屋)ではお静かに。
「そうだよぉ!そうですよ!あ、このソフト欲しかったんだよな。買お」
俺はでけぇ箱に入っている『恋愛、はじめまして』という作品を手に取った。ASAPROJECTっていうメーカーだって。ごめん聞いたことない。でもキャラデザが好きなので買います。10000円の出費は痛いですが、サポートギターの依頼料で稼いだ金で買います。
「それ買うの?」
「まぁ、俺も一応エロゲーマーですからね」
「ふぅん……」
彼女はそう言いながら屈めてた体を起き上がらせる。その手にエロゲは一本もない。
「あれ?買わないんですか?」
「うん、別になんか買うつもりで来たわけじゃないし。ただの暇つぶし」
そう言いながら、彼女はそのやけに短いスカートをパンパンと叩いた。床が結構汚れていたのであろう。
とりあえず、会計を済ませようとレジに向かうと、なぜかギャルも着いてきた。
「なんでついてくるんですか?」
「別にいいじゃない」
なんだこの態度。ツンデレか?こんなキャラ見たことあるぞ。
今日のレジはなぜか並んでいる。珍しく客足が良いようだ。
俺たちがレジの最後尾に並んでいると会計を済ませようである栗松さんの姿が見えた。
「とりあえず買えた。店は開けとくから。その会計済ませたら勝手に入っとけ」
「わかりました」
すると、栗松さんはギャルを見て何やらにやけた後、ソフマップから姿を消した。
そしてしばらくの無言が二人の間に生まれた。
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