第4話 性別バレ
「えっと……」
俺は衝突したことによって、尻もちをついた姿勢になっている。
つまり。見上げると彼女、高橋さんが見えるのだ。
そんな高橋さんは現在俺に本当に汚物を見ているのかと思わせるほどの目をしている。
いや、彼女からしてみれば、本当に俺は汚物として見ているのかもしれない。
やがて、「そうか、俺は汚物だったのか」と自認するまでにも至った。
「なんでここに……てか、なんでそんな制服着ているんですか?」
高橋さんは俺の来ている男制服を示した。
「そ……それは……あ、兄のお下がりだから?」
「は?」
高橋さんはとても清々しい「は?」を俺に浴びせてくれた。
正直、俺も何を言っているんだ?と思っている。
「い……いやぁ、うち貧乏でさ……新しく女の子の制服買う余裕がなかったんだよねー」
俺は汗を滝のように流しながらなんとか訴える。
「でも、あんな高いギターは買えるんだ」
ぎくぅぅぅ!!!
俺が普段使っているギターはGibson Lesporl Standard 60s。
30万前後はする良い感じのギターだ。学生にはやはり高い。
「あれは……そうそう、貰い物!」
これは嘘ではない。
「そうそうって言ってんじゃん」
でも信じてもらえなかった。「そうそう」は確かに嘘をつくときによく使いそうな言葉だけども。
「とりあえず、このままここでだべってても遅刻するから……話は後でにしようぜ!」
俺はさっさとこの場から避難するために、彼女にそう呼びかけた。
「ちょっと図が高いんじゃない?」
「え?ハイ、すみません……」
完全に俺の尊厳はなくなっていた。
*****
───まじでどうしよう……。
俺は黙々とギターのネックを触っている時に脳細胞が活性化する節がある。そして、今音楽の授業、俺は何故かアコースティックギターを持たされていた。今週はギターの授業のよう。
───それにしてもどうしよう。多分もうライブハウスいけない。行ったらアイツに性別を公表され、その後に高橋さんの家に行ってしまったことをバラされ、殺される。物理的にも社会的にも。
いや、ライブハウスに行かなくても、学校で殺される。
そして、時はすぐさま放課後となった。
どうしよう、今日、ライブハウス行こうかな……?
あのデンパライトっていうバンドいるかな。いなかったらいいな……。
そんなことを思いながら、スマホの電源をつけると、一通のメールが届いていた。
『来なさい。』
その下には住所が添付されていた。
ここ、俺のホームのライブハウスだ。
となれば……このメール主とは……。
俺はその発信元のメールアドレスを確認した。
*****
場所を変えたい……。
俺はいつも通り女装(男子とも女子とも捉えられる格好だが、見た目的に女と判断される格好)でこの場所に訪れた。一応、ギターを背負って。
ちなみに今日はいつもより結構早い時間にここに来ている。まだチケットの販売も始まっていない。
「はぁ……憂鬱だ」
俺はここでライブする時以来初めてライブハウスでため息をついた。
「あれ?ハナミじゃん。こんな早くに何してんの?」
そこには結構イケメンなこのライブハウスの店長・
イケメンのわりにかなり人のいい人で運動は苦手である。イケているように見えるが根は陰キャだ。
「いやぁ、実はとある人にここに呼ばれて。とりあえず開けてくれませんか?」
「ああ、別にいいぜ」
そして彼は店を開けてくれた。
ちなみに、この栗松さんは俺の性別を知っている。なぜなら、彼との初対面の現場は男子トイレだったからだ。
*****
これはまだ俺がじぇんじぇんライブハウスに慣れていなかったころ……。
この時はここでも性別が誤解されて、なかなかにしょげていた。
そんなときにこっそりトイレで小をしていると、そこに彼がやってきたのである。
「あれ……なんで女子がこんなところに……って」
そして俺の小便器に向けられて剝き出しになっている俺の性器を彼は凝視した。
「お前……男だったのか……」
という感じでバレてしまったわけである。
しかし、彼にはバンドマンにはそんなに備わるものではない情というものが備わっていたようで、俺が現状維持を懇願したら、この件は隠密にしてくれているようにしてくれた。本当に優しい。
「ちなみに、そのメールに指定時間とかあるのか?」
「特に書いていませんね」
「ということはお前……ちょっと早すぎたんじゃないか?来るの」
学校で彼女に会うのが気まずすぎたがあまりに過去一早くここに来ちゃったからな……。
俺はその自らの焦りように呆れて頭をかいた。
「じゃあ、あそこ行かないか?」
「あそこって……?」
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