第22話:変態扱いされる俺
【◆ゲーム世界side◆】
担任教師のキント先生から、
実施は4日後。場所は学園に程近い場所にあるダンジョン。
ダンジョンには国が管理しているところや、管理者がいない物など様々あるが、そこはマギア魔法学園の管理下にある。
生徒は二人ペアになってダンジョンに入り、決められたルートを回りながら、魔法で魔物退治をする。
このダンジョンには比較的弱い魔物が多く生息していて、一層目であれば初心者でも全く問題のないザコしか出ないらしい。
だから魔法使いを育てるこの学園の実戦練習の場として最適なのだ。
キント先生が、『抽選の魔法』を使って今からペアを決めると言った。
事前にペアを決めることで、当日までに二人で作戦会議をしたり連携練習をして、お互いの得意な魔法を把握したり、チームワークを高める。
「抽選の魔法……クラスの全員を二人一組のペアを作る……〇×Δ@……」
先生が目を閉じてなにやら難しい呪文を唱えている。そして魔法の杖を一振りした。
クラスの生徒一人ひとりの頭の上に、光る数字が表れた。
赤の1番と青の1。赤の2番と青の2番。
このように同じ番号同士がペアとなる。
教室のあちらこちらで歓声が上がっている。
仲のいい友達同士でペアになれて喜んでいる女子。
犬猿の仲の男女がペアになって罵倒しあっている。
ゾンネはハルルとペアになったようで、めっちゃ喜んでる。
相方になったハルルは、ちょっと顔が引きつっている。ご愁傷様。
そして俺は青の15番。
赤の15番を探して教室中を見回す。
──少し離れた席に座るレナと目が合った。
彼女の頭の上には赤の15番。
おおっ、俺のペアはレナか。クラスで親しく話したことがあるのは彼女だけだから助かる。
「はい、それじゃあみんな。今からペアで話し合いをしてもらうから、席を代わってペア同士隣に座ってよ」
全員がガタガタと椅子を鳴らして立ち上がり、自分のペアを探している。
俺も立ち上がると、レナが寄ってきた。
「ツアイト君。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
向かい合ってお互いに頭を下げた。
「……きゃあっ!」
「……え?」
突然レナが両手で顔を覆って、小さく悲鳴を上げた。指の間から覗く瞳が下を向いてる。
なぜか下半身がスースーする。
「うっわ!」
制服のズボンのボタンが取れて、足元までずり下がっていた。
女子の目の前でパンツ丸出し!
恥ずかしすぎるっ!
レナの悲鳴に気づいたクラスメイト達がこちらに注目した。
俺は慌ててズボンを引き上げる。
周りを見たが取れたボタンが見つからない。
仕方なく両手でズボンを持ったまま立ち尽くす。
「ツアイトって露出癖があるって噂はホントだったんだ! この最低野郎!」
誰かわからないけど男の声が響いた。
「マジ? ツアイト君って変態なの?」
「汚いモノを見せつけられてレナが可哀想!」
「それにしたって、教室で女子の目の前で露出するなんてヤバすぎだろ」
教室内がざわつく。
「いや待ってくれ。俺は露出癖なんてないよ! たまたまボタンが取れただけだ」
確かにユーマ・ツアイトは性格悪いし嫌われキャラだ。
しかしヤツの記憶を探っても露出癖などない。
だが周りに信頼のない俺がそんなことを言っても、誰も信用しないだろう。
事実クラスの中は疑わしげな目を向ける者ばかりだ。
「言い訳すんなよ!」
「そうだぞツアイト。お前はいい加減な男だ。誰がそんなことを信じるかよっ!」
日頃の行いが悪いツアイトの自業自得ってわけか。
いや、待てよ。それにしたって、さっき誰かが変なことを言った。
『ツアイトに露出癖がある噂はホントだった』だと?
露出癖なんてないし、そんな噂なんてない。
さっきの声は男の声だったが、なんだか無機質な──そう、まるでボイスチェンジャーを使ったような声だった。
この世界にはボイスチェンジャーなんて
もしかしたら誰かが、俺を陥れようとしているのかもしれない。
「あ、あった」
レナはスカートの制服姿なのにも関わらず、床に這うように身体をかがめてボタンを探して見つけてくれた。何がとは言わないが、見えそうだったので思わず目をそらした。
指先でつまんだボタンを、食い入るように見つめている。
「レナちゃん、早く変態男から離れたほうがいいぞ!」
「そうだそうだ! この男はレナちゃんにパンツを見せつけようとしたんだぞ!」
俺を変態扱いする声が渦巻く中、レナがよく通る凛とした声を出した。
「待ってください! ツアイト君はそんな人じゃありません。特に最近の彼は真面目で誠実で、ちゃんとしています。」
騒がしかった教室が一瞬でしんと静まる。
「私は最近彼と関わって、変なことをする人じゃないと確信しています。ちゃんとした証拠がないことを、まるで事実のように騒ぎ立てるのはやめてください。人を表面だけで決めつけるのはやめてください!」
いつもの厳しい態度のレナだが、俺を信頼して、擁護してくれる彼女はなんと頼りになることか。
「それにこれ」
レナが手にしたボタンを皆に見えるように掲げた。
「ボタンを糸で止める穴が、まるで鋭利なナイフで切ったように綺麗に切れています。だから取れたわけですが、このボタンにはわずかながら魔力の
つまりそれって。
「誰かが魔法を使って、ツアイト君のボタンを壊した、ということです」
「ええぇぇっ!?」
「誰だよ、そんないたずらをするなんて!」
「それなら間違いなく、ツアイト君は無実だわ!」
レナが床に這ってまでボタンを見つけてくれたおかげで、俺の潔白が皆に受け入れられた。
「ありがとうレナ。感謝しかない」
「いえ。私があなたから受けた感謝からすれば、こんなもの大したことありません」
なんという謙虚なレナ。
とても可愛くてきゅんとした。
「でもいったい誰がこんなことを?」
「魔力の残滓は感じることができますが、それが誰のものかまではわかりません」
誰かが俺を辱めようとした?
誰が? なんのために?
いや、待てよ──
ふと、さっきの手紙がふと頭に浮かんだ。
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