第37話

「ここで立ち話もアレだからさ、とりあえず入れてよ」


「何を?」


「俺を」


「どこに?」


「ここに」


とマンションを指差す玉木宏似の男。


「はい~?」


「まだアイツがどっかにいるかもしれないぜ?」


「ちょっとやめて」


「家に1人じゃ怖いだろ?」


「……」


確かに怖い。


ああん!後藤のバカ!ゴリラ!

なんでこんな時に出張なのよ!


てかなんでストーカーも玉木宏似の男も、私のバカゴリラがいない時に現れるのよっ!!


みんなバカ!


ああん!後藤が一番バカ!


でも…ストーカーに何かされるよりは玉木宏似の男に何かされた方が…


いやいや、この男に何かされても大変だわ!


ん?でも結婚するって言ってたし…


いやいや!でもこの男はヤッた後に別れ話するような男だし!


さっきも台本に無い事してきたし信用ならぬ!


でもストーカーは怖い…



「あのー」


「何よ!」


「別に今更何もしないから」


玉木宏似の男はそう言って笑った。


「そうね!」


「あのバナナ好きそうな男と兄弟になるのは…」


一言多い。


「あぁもう兄弟か…」


二言多い。


「俺が兄貴か…うん、悪くないな」


三言多い。





私の部屋で寛ぐ玉木宏似の男。


前によく見ていた光景に懐かしさを感じていた時、ハッと気付いてしまった。


「はじめからこうしてればよかったんじゃない!?」


「今気付いた?」


玉木宏似の男が笑っている。


安心したのも束の間、ストーカー男の次に危険な玉木宏似の男と2人きりでいる事に身の危険を感じた。


「警察呼ぶわよ!」


「呼びなよ」


玉木宏似の男が笑っている。


「警察…警察ぅー!?」


玉木宏似の男が笑っている。


「はじめから警察呼べば良かったって事!?」


「今気付いた?」


玉木宏似の男が大笑いしている。


このバカ男!

後藤のバカ!ゴリラ!

てゆーか私が一番バカ!!


「俺、警察に知り合いいるからパトロールするように頼んどいてやろうか?」


「それを一番はじめに言って下さい…」


もうイヤ…

なんでこんな目に遭わなきゃイケナイのよ…


「あー面白い!」


「ちっとも面白くない…」


でもこの男に助けられたのは事実。

私を簡単に捨てた男に助けられるなんて。


別れた時は、なんでこんな男と付き合ったんだろうって思ったけど…

この男と付き合ったのは間違いじゃなかったのかもしれない…とかなんとか思っちゃったりして。


なんかシャクだけどっ!!


「とりあえず…ありがと…」


「え?」


「助けてくれて」


「じゃあ~…なんかお礼してもらおうかなぁ」


と言って私に近付く玉木宏似の男。


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