第21話
翌日。
「ちょっと美奈子大丈夫?なんか疲れてない?そして顔が変!」
「昨日激しくて…」
「ああー、今日から出張だっけ?」
「今朝早く彼はイッたわ…」
「ちょっと!いつまでもそんな変な顔してスケベな事ばっか考えてないでちゃんと仕事しなさい!あとちょっとだからがんばろ!」
スケベな香織に背中をバチンと叩かれた。
「痛い…」
ああ仕事。仕事仕事…がんばらなくちゃ…。
ゴリラに会えない1ヶ月、私は無理矢理仕事を入れる事にした。
――――
ゴリラが札幌に出張に行って1週間。まだあと3週間もあるじゃないの…。
…淋しい。ゴリラがいないとこんなにも淋しいなんて。
毎日連絡くれるのは嬉しいけど会いたくなっちゃうの。ラーメンとかジンギスカンとかビールとかお寿司とか美味しそうな写真ばっかりいやがらせのように送り付けてくるゴリラの事が大好きなんだとつくづく実感する。ゴリラとのあんな事やそんな事を思い出しては溜め息。
遠距離恋愛なんて私には絶対無理~!すすきの絶対行ってる~!遠距離恋愛してる人たちすごすぎ~!
1週間後。
仕事を終えた私はゴリラのニオイを嗅ぎに行った。間違えた。部屋の掃除に行った。
ゴリラは出張に行く前に『淋しくなったら俺のニオイ嗅ぎに行っていいよ』と私に合鍵を渡してくれた。合鍵。愛鍵。愛の鍵。うふっ。
この部屋は私以外のメスは誰も入る事のできないゴリラと私の愛の巣。
私はもう鑑識ではない。
それだけの余裕を与えてくれるゴリラの愛。
ああん、早く会いたい。
掃除(正確にはニオイを嗅ぎまくった)を終えて部屋を出た時だった。
外に見知らぬ若い男が立っていた。
「あ、どーも」
見知らぬ若い男は私を見てペコリと頭を下げた。
……誰?
「お久しぶりです」
ちょー爽やかに私に白い歯を見せるジャ〇ーズ事務所にいそうな見知らぬ若い男。
ま、眩しい!か、かわいい!そして…誰?
「山田さんですよね!?」
そうだけど…なんだチミは!?
「えーっと、ごめんなさい?」
名を名乗れジャ〇ーズJr.!
「俺、後藤さんの会社の後輩の森っていいます」
森…?ごめん、わからない…。森光子とノルウェイの森しか知らないわ私。
「少し前に〇〇って飲み屋で一緒に飲んだの忘れちゃいました?」
そんな事があったようななかったような…。
私はゴリラにゾッコンだから他の男は一切目に入らないのよね。
「あー!んー!?」
…いやいや、すまんがまったく思い出せない。
「…まあ…いいですそんな事は」
まあいい?そんな事?何言ってんの?なんか変な子ね。
こっちだってまあいいわ。とりあえず本題。
「なぜここに?」
ゴリラは1ヶ月札幌に出張だって事、同じ会社なら知ってるでしょうに。
「あ、はい。いえ、やっぱいいです失礼します」
「はい~?」
まったく意味がわからないまま森くんとかいうジャ〇ーズJr.みたいな若い男は軽やかに去って行った。
「…なにあの子。変なの」
〇〇って飲み屋ってどこだっけ?後輩と一緒になった事なんかあったっけ?
いくら思い出してみてもあのジャ〇ーズJr.みたいな子と飲んだ記憶なんて出てこなかった。
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