第14話
私の名前をひたすら連呼する歌が流れる店内。
「何買うの?」
「バナナ」
「……」
「お?ツッコミはどした?お腹すいちゃった?」
私はムラムラ…違うモヤモヤして、ゴリラへのツッコミもままならない。
「山田ぁ、SONYとSHARPどっちがいいと思う?」
「三菱!」
性能やら節電対策やら値段交渉は店員へどうぞ!
山田は山田でも私はヤマダ電機の店員ではない!
「これ黒と白どっちがいい?」
「黒!」
「じゃー白にしよ」
「なぜ聞いた!」
んもー!本当になんなのッ!?楽しい!
「後藤」
「なんでしょうか」
「イチゴとバナナどっちが好き?」
「バナナ」
やっぱりね。
「コジマ電機とヤマダ電機」
「ヤマダ電機」
そうだろうね。
「小嶋陽菜と山田美奈子」
「こじはる」
あらっ?
「バナナと看護師」
「看護師」
よーし、それならば…
「バナナと看護師の山田美奈子」
「バナナ」
あれれっ?
「山田と美奈子」
「……」
おっ!?ってゆーか、えっ!?
何故に沈黙?
山田か美奈子って、どっちか言わないの?てか言いなさいよ二択なんだから!
…黙秘か、黙秘するんだな。
やっぱりメスは嫌いなの?てかバナナに負ける私って…
とかなんとか考えていたら、
「…山田」
はい頂きました!ありがとうございまーす!
やっぱりこのゴリラは私の事が好きなのね!好きなのよ!やっぱりね!そうなのよ!うん、知ってた、わかってた!
あー良かった!本当に良かった!
とロマンティック浮かれモードでニヤニヤしていたら
「山田」
ゴリラが私を真っ直ぐ見つめている。
ああ神様!
ついに!いよいよ!唇を奪われてしまうのですね!
まさかヤマダ電機でゴリラとキッスするとは思わなかったけどまあいいわ!
ゆっくりと近付いてくるゴリラの顔。
改めて本当ゴリラ!どっからどう見てもゴリラ!この髭、当たったら痛そう。いやんどうしよう!?
今キッスしたらさっきヤマダ電機の前でやっていた屋台フェスで食べたたこ焼きの味がしちゃ~う!
ああ~ん!
「青のりついてる、歯に」
穴があったら入りたい!
倒置法で言われ恥ずかしさ倍増!!
虫がついたり青のりがついたり一体どうなってるのか私の口!
さっきよりも嬉しそうにウホウホ笑っているゴリラ。
「…ぐぬぬぬぬ」
こんな屈辱的な事、今までなかった。
ここまで馬鹿にされて場末のスナックホステスが黙ってると思ったら大間違いなんだから!!
いつかアンタを手玉に取って、それこそ掌で転がしてやるんだからー!!
と私がゴリラに鋭い視線を向けると
「山田」
「なによッ!」
「ウチくるー!?」
「行く行くー♪」
ハッ!ついうっかり…
中山ヒデちゃんの番組のタイトルコールそっくりにゴリラが言ってくるもんだから、ついうっかりノッちゃったじゃないの。
…ん?つい…?うっかり…?
ウチくるー!?行く行くー♪ってどこへ!?
ゴリラがウチくるー!?って言ったわ!誘ってきたわ!
私のパチンコウホウホ物語は、ドラミングするゴリラの赤色の7図柄でテンパイすると大量のバナナ群が画面を覆う激熱リーチに発展した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます