第3話

「俺の勝ち(ウホッ)」


隣のゴリラがウホッと笑った。


「……」


私は9箱、ゴリラは10箱。

なによ…なんなのよこれは。


悔しくて言葉も出ない。

こんなゴリラに負けるなんて。


マリンちゃんのバカッ!



…ん?待てよ…?


ゴリラはいくらで当てたの?

確かゴリラは私の隣に座ってすぐに当たりを引きやがったわよね?


……。


気になって気になって仕方がなかった。


私はカウンターにいるゴリラの背中を刺すような眼差しで睨んだ。


するとゴリラがこっちを向いた。


わ!さすがゴリラ!!

野生の勘で私の殺意を察知したんだわ!


へえ~と私がゴリラに関心していると、ゴリラがウホウホと近付いてきた。


バナナ?好物のバナナが景品になかったのかい?


「なんか怒ってません?俺、何かしました?」


余裕の笑顔を見せるゴリラ。


それにしてもデカイ。

私も背高い方だけど全然見上げてしまうほどデカイ。


「別に」


ゴリラの威嚇に屈する事なく、私はエリカ様バリに冷たくあしらった。


「すんません、なんか俺の方が勝っちゃって」


私のエリカ様をスルーしてゴリラはウホウホ笑っている。


気に入らない!

そうだ!思い出した!


「いくらで出たんですか?」


なぜゴリラに敬語!?


「500円♪(ウホッ)」


「……」


ご、500円ですって!?

気に入らない!ほとほと気に入らない!


バナナが山ほど買えるじゃないの!


私はどれだけバナナが買えるのかと計算していると


「これから仕事ですか?」


とゴリラが聞いてきた。


「いいえ」


バナナの計算に気を取られていた私は普通に答えてしまった。


するとゴリラは


「お詫びにメシでもどうですか?」


私にたらふくバナナを食わせる気か!

ってかお詫びって何よ!?


「バナナは結構です」


何故!

私の頭の中はバナナ一色。


「バナナ…?」


その顔でバナナって言うの禁止!


「焼肉でいいすか?」


「いいですね焼肉」


不覚にも即答してしまった!

しかも笑顔でッ!


しかしなぜこのゴリラは私が焼肉好きな事を知っているの?


野生の勘!?

ヤダ怖い!ゴリラってすごい!



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