昨日からの今日
星乃先輩は僕の側に来ると
「...どうしたの?桜井くん」
と言うのだった。
「あの...本当に分からないんです...」
「うん...、あの人...何者なのかしら?」
「...分かりません...」
僕はそう言って星乃先輩をじっと見たのだった。
翌日。
学校に向かうバスの中で、僕は隣に座っている星乃先輩を見やった。
彼女は昨日の出来事が尾を引いているのか、どこか疲れた表情を見せているように思えるのだった。
彼女は本を読みながらバスに揺られている。
僕はその横顔を見続けていたが、やがてその視線に気付いたのか僕を見た。
「...桜井くん」
彼女は微笑みながら僕の名を呼ぶのだった。
そして、僕らは学校に到着したのだった。
朝礼が始まる前の時間、教室で神田が僕に話しかける。
「なぁ...昨日は」
神田は昨日の出来事が信じられないという表情をしていた。
僕もそれは同じ気持ちだ。
「...俺も良く分かんねぇよ...」
山田も困惑した表情を僕らに向けてくる。
「でも、あれはヤバくない?あんな子がいたら...」
山田がぼそりと呟くように言った。
クラスメイトが数人、昨日の21時に桜の木に行ったのかとかを聞いてきた。
僕らはそれには曖昧に応えていた。勇者が出たなんてバカらしくて言えない。
「...そうだよな...」
「でも、あの子も何か訳アリなんだろね...」
山田が神田の言葉で何かを察するように言うのだった。
「..そうだな...」
僕と神田はそれ以上何も言えず、沈黙したのだった。
「...それにしても、今日は保科先輩はどうだった?同じバスなんでしょ」
山田はニヤニヤしながら僕に聞いてくるのだった。
「...あぁ」
僕は昨日のことを思い出して舞台に立つ星乃先輩の姿が浮かんだ。
「少し疲れてた...」
まぁ剣で追い回されたらな。
青原の判断なのか事件化はされていない様だった。
犯人(勇者)も少女だった。この学校の誰かなのかもしれない。
そんなことを思っていると、
「やぁ、我が同胞よ!」
聞き覚えのある声がする。
僕らの席の前には勇者の格好をした少女が立っていたのだった。
クラス中がざわめく!
「なになに!?」
「あれコスプレ?」
クラスメイトの女子たちが騒ぎ始める中、勇者は堂々と立っていたのだった。
クラス中の視線が僕に集まるのを感じた。
「どっから出た!」
「うぁっ」
神田と山田も驚いている。
勇者は教室内を見回すと僕に視線を移すのだった。
「さぁ、魔王を撃ちに行こう!」
勇者はそう言うと僕の手を取った!
「おい!待て!」
神田が叫ぶが勇者は無視して走り出した。
僕は彼女につられて走り出していた。
勇者は校庭に出るなり、僕に言ったのだった。
「我が同胞よ!魔王を倒すのだ!」
「待て!待て...手を離せ」
僕は手を振り解く。
勇者は少し戸惑ったように僕を見るのだった。
「どうした?なぜ魔王をかばう...?」
「何を言っているんだ!先輩は関係ない!」
僕は声を荒げて勇者を睨む。
「...」
「お前、どうやって僕のロッカーに紙切れ入れたんだ?何で、僕にかまう?」
「...それは...」
勇者はそう言うと下を向くのだった。
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