闇より来たる者

その時、仮面の女が口を開いた。

「少年少女たちよ。私のことは勇者と呼べ!」

僕たちはその言葉に驚いたが、何も言えないでいた。

「君たち...いや君よ!私は異世界より来た転生者だ!」

勇者と呼ばれたい彼女は、僕を指差して言うのだった。

「...は?」

僕は訳がわからなかったし、何が起こっているのか分からなかった。

しかし、勇者の言葉は続く。

「君よ!この世界に平和をもたらすため、私に力を貸してくれ!」

勇者はそう言うと僕の前に膝をつくのだった。

僕はその行動に困惑してしまうのだった。

「...はぁ...何言ってんだこいつ...」

神田がぼそっと呟いたのを聞き取ることが出来たのは幸いだった。

僕たちはその後、自称勇者の話を聞いた。

なんでも彼女は異世界の勇者であり、今、この世界は魔王によって支配されているらしいのだ。

魔王はこの世界の全ての魔力を独占していて、このままでは世界が滅亡してしまうのだと彼女は力説していた。

彼女は僕たちをパーティーとして勧誘していた。

僕たちも彼女の言葉に半ば呆れながらも話を聞いていた。

彼女は僕たちにお願いするのだった。

「私の仲間になってくれ!」

「...」

「お前、まず顔見せろよ」

神田が全員知りたかったことを言う。

しかし勇者はかぶりを振って答えるのだった。

「今は無理なんだ...すまない...」

その言葉はどこか寂しそうだった。

「とにかく、力を貸してくれ!私は魔王を倒すためにこの世界にいるんだ!」

勇者が言う。

「魔王って誰だよ?」

山田が聞く。

「保科星乃だ」

「え?」

僕はここで意外な名前が出てきたので聞き返していた。

「誰?」

「保科星乃だ」

「え?」

「今のあいつには魔王の力を完全に取り戻せていない...だから、私が倒す!」

勇者はそう言うと腰の剣を抜いた。

その剣は刃渡り1メートルを超えるほど大きく、柄の部分には宝石のようなものが埋め込まれていた。

その剣は怪しく光を発しながら、僕たちを照らしたのだった。

「...!」

僕たちの視線は剣に向けられていた。

星乃先輩が魔王?は?

「では3人とも!私のパーティーに入ってくれたことに感謝する!」

「入ってねえし!」

神田が突っ込む。

「待って!保科星乃って誰なの?」

山田が聞き返す。

勇者は言い直すと説明を始めたのだった。

「保科星乃は異世界人で魔王なんだ...しかし、今彼女は魔王の力をほとんど失っていて、魔王になるための準備期間をしているらしいんだ...だが、魔王になるためには人間の血を浴びなければならない...彼女は人を殺した時、その血を飲むだろう...そして魔王になるのだ...」

「保科星乃先輩が?」

「そうだ!だから私が止める!」

僕はその言葉の意味が分からなかった。

星乃先輩が人を殺す?

そんな訳ないじゃないか!

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