朝の騒ぎ

僕が教室に入っていくと何やら騒がしかった。

僕は不思議に思いながら自分の席に向かう。

どうやら黒板に何かが書かれてるらしく、同級生の一人が何やら騒いでいて、それを数人が取り巻いているようだった。

「何なんだ?」

僕は独り言のようにつぶやいた。

席に座ると、僕の前の席に座っている神田に声を掛ける。

「どうした?何かあったのか?」

「あぁ、お前も見ろよ」

僕の問いに答えた彼は前を指差す。

その方向を見ると、人並みの中で黒板の文字が見えた。

「...!」

黒板にはこう書かれていた。

「9番目のロッカー、奥には秘密が眠る」

と。

僕はそれが僕のロッカーだと気づいた時、心臓が跳ね上がるのを感じるのだった。

それからしばらく、クラスの連中は僕のロッカーを開けようと躍起になった。

「おい、桜井!開けてみろよ」

「...何でだよ」

「だって、9番はお前のだろ?」

「知らないよ」

クラスメイトは次々とロッカーを開けようとしたが、もちろん鍵がかかっていたので開けることができない。

「開けろって!」

教室のみんなが騒ぎ、視線が僕に注がれる。

「わかったよ...」

僕は仕方なく、自分のロッカーを開ける。

見られてまずいものなんてないんだ。

みんなが固唾を飲んで注目している。

「...」

ロッカーを開けると中身はただの教材やら何やら、みんなと同じものしか入っていない。

しかし。

「あれ?」

僕は思わず呟いた。

ロッカーの奥の隅に何か落ちているのが目に映った。

「...」

僕はそれを見るなり、思わず息を飲んだ。

そこには小さな青い紙が落ちていたからだ。

僕はそれを拾い上げて広げてみる。

すると、そこにはこう書かれていた。

『21時、学校裏の桜の木の所で』

と書かれていた。

「何だこれ?誰かのイタズラか?」

「告白じゃないか?」

「...どうだろうな...」

僕は誰に言うでもなく呟いた。

教室のみんなも、僕自身も困惑していた。

「あんたが自分で仕込んだんじゃないの?」

山田美月(やまだ みつき)が聞いてくる。

教室の中でほぼ唯一、僕が話す女子だ。

「僕は今、来たところだろ...」

山田は肩を竦める。

「いつの21時のことだろな」

神田が髪を覗き込見ながら言う。

「そりゃ、今日じゃねぇ?」

青いメモを見ながらみんながまた騒ぎ出す。

「おい!何騒いでるんだ」

担任の青原陶子(あおはら とうこ)がやってきていた。もうそろそろホームルームの時間だ。

「あ!青原先生、これ見てくださいよ」

「どうしたの?...」

青原が黒板に書かれた文字を見ると、

「...!」

と息を呑む音が聞こえた。

「先生...」

僕が言うと、

「...」

彼は何とも言えない顔で僕を見ている。

「ロッカーの中には何があったの?」

僕は青い紙を見せる。

「告白かしらね?...でも、そんな夜に学校に来ちゃダメよ」

「えぇ...」

青原先生は青い紙をそっと僕の手に乗せてくる。

「...」

僕はそのままポケットに入れたのだった。

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