#24 バー・トワイライトムーンの監視カメラの映像記録 12/12/2138 14:58:38~15:19:22

*女が店内を掃除している様子が映し出されている*

*入り口のベルが鳴る音*

*金髪の男が店の中に入る様子*

「……あら、いらっしゃい。でも、まだ開店してないの。夜にまた来てね」

「やあ、こんにちは。今日はなんだか寂しくってね……。一杯だけ、一緒に呑んでくれないかな」

「困るわよ、そういうの」

「呑んだら、すぐに帰るから。ねえ、頼むよ」

「しょうがないわね……。一杯だけよ。――ご注文はいつものでいい?」

「ああ、ブラッディマリーで……」


「では、乾杯」

「乾杯……」

*グラスが合わさって微かな音が鳴る*

*レコード・プレイヤーからジャズが静かに流れている*

「ちなみに、あの絵はどこで手に入れたんだい?」

*男が絵画を指さす*

「……ああ。蚤の市よ。きっと子供の落書きだって思ったんでしょうね」

*男が酒をすり替える様子が映し出される*

「ははは、後期だから、無理はないかもしれないね」

「そうね」

*バーテンダーの女が一口、酒を飲む*

「そういえば、あれ、どうなったの? 復讐をしようとしている旦那さんの話」

「ああ、あの人か……」

*男はさわやかな笑顔を向ける*

「実は、また会ったんだ。目の色変えて、犯人を追いかけていたよ。――正直、滑稽だよね」

「? なぜそんなことを……。あら、なんだか急に眠いわ……」

「だってさ、僕の流したデマで警官は躍起になって別の人を探している。それで、その人を殺そうとする人もいる」

*女の体が机に突っ伏す*

「真犯人は悠々と酒を飲んでいるっていうのにね……」

*ドサッ*

*女が床に倒れ込んだ*

「ふふ。君も僕のモノにしてあげるよ……」


*バン!*

*入り口のドアが蹴り飛ばされる音*

*入り口のベルの響きが微かに残される*

*大柄の男が入り込んでくる*

「お前だったんだな、スウィフト。俺の妻を殺したのは……」

「……僕、なにかヘマしたようだね。まあいいさ。君を殺しておけばいいんだからね。とすると、あの指名手配犯と警官も殺しておかなきゃならないな。そうだ、お互いに殺しあったように見せかけて……」

*金髪の男が呟いている*

「御託はいい! 妻に謝罪し、そして死ね!」

*大柄の男が怒鳴り、銃を向ける*

「ふふ。僕を殺すことができるかな……?」

*金髪の男の半身が、肩からボコボコと蠢き、異様な体つきへと変化していく*

*大柄の男はその姿を見、吠え、銃を乱射する*

*パン、パン、パン、パン*

「ふふふ。だから、無理だって……」

*異形の男は巨大な腕で頭を防御している*

*銃弾は弾かれ、酒瓶に跳ね、酒が撒き散らされる*

「なんでこんなことするのかな……。放っておいてくれてもいいのにさあ……」

「そんなわけにはいかない。お前は、俺の妻を、エリーを殺したんだ!!」

「エリーね……。 ああ、僕が最初に殺した人妻か……。いくら僕が誘惑しても袖にされちゃってねえ……」

「聞きたくない!」

「あなた、あの時、僕に反撃してきた旦那さんか……。目が見えるようになったんだね。よかったよかった。――僕は僕になびかない女性をどうしてもモノにしたい質でね、あんまり無視されるもんだから、殺しちゃった。僕のモノにするにはそうするしかないから」

「てめえ!」

*男が銃を構える様子が映し出される*

「声と顔はこんなだったかな? よく覚えているよ。僕の愛した人だからね」

*異形の者の顔が隆起し、女性の顔に変形した様子*

*異形の者から女性の高い声が発せられる*

「ねえ、デイル、もうこんなこと、やめましょう? 私はそんなこと、望んでないわ」

「おい……。おい、やめろ!!」

「一緒にあの世で仲良く暮らしましょう?」

*異形の者が酒ビンを割り、ひたひたと男に近づく*

「あの幸せだったころを思い出して、あっちで一緒に暮らしましょう? 何にも考えることは無い……」

*異形の者がビンを振り上げる*

「おじさん!」

*異形の者に体当たりをする影が映る*

*体勢を崩す異形の者*

「アリエ! 来るなと言っただろう!」

「フフフ……。バカな真似をしたね……」

*異形の者は少女を捕まえ、盾にする*

「ほら、君には、アリエちゃんが撃てるのかい?」

「エリー、アリエ……、お、俺は……」

*徐々に男の持つ銃口が下がり始める*

*うなだれる大柄の男*

「おじさん、私、実はおじさんのかたき討ちに反対だった! 不愛想だけれど、本当は優しいおじさんが、わざわざ人殺しになる必要なんか無いって! だけど……だけど! おじさんの気持ちをないがしろにしてた! 奥さんのために、仇をとるんだって! 誰の為でもない、奥さんが浮かばれるために……そうでしょ!?」

*男が再び銃を構える。ゆっくりと、しかし確実に*

*銃口がぶるぶる震えている。*

「おじさん! もうあなたの奥さんは死んだのよ! その復讐のために旅をしたんでしょ! 撃って! 撃って過去を打ち破りなさい、デイル・マイルズ!!!」

「アリエ……」

*ガシャン!!*

*スタングレネードがガラスを突き破って放り込まれる*

*爆音* *画面は閃光に包まれる*

「グッ! 目が……」

*目を抑え身をよじる異形の者*

*窓から触手が伸びてくる*

*少女を確保する*

「クソッ! てめえ! てめえの仲間か!!」

*男はハンドガンを構える*

*パン*

*異形の者の頬に穴が空いた*

「なんで……。どうやって……! クッソがよおおお!!!」

*異形の者の咆哮*

*異形の者の突進*

*パン、パン、パン*

*異形の者が倒れる*

*異形の者があおむけに倒れ、涙を流している*

「……もともと、俺には視覚は無かったもんでな、音の方向を探るなんて、簡単な事だ」

*倒れた異形の者に男は銃を向けている*

「最期に何か、言うことはあるか?」

*異形の者のうつろな表情*

「……ああ、僕を愛してくれるのかい……? 母さん……」

*パン*

*大柄の男が異形の者の眉間に銃弾を叩き込んだ*


*パトカーのサイレンが鳴っている*

*大勢の警官が突入してくる*

*身柄を確保される大柄の男*

*パトカーのサイレンが鳴っている*

*パトカーのサイレンが鳴っている*

*パトカーのサイレンが鳴っている*

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